肩甲上腕関節の構成・動き・可動域

肩甲上腕関節(Glenohumeral joint)は滑膜関節、肩甲骨の関節窩と上腕骨頭で構成される球関節です。

肩関節は以下の解剖学的関節と機能的関節で構成されます。
解剖学的関節
・肩甲上腕関節
・肩鎖関節
・胸鎖関節
機能的関節
・肩甲胸郭関節
・第2肩関節

この関節の支持、安定性、完全性は骨よりもむしろ筋と靭帯に主に依存しています。
したがって、筋と靭帯、関節包の評価は肩関節の評価において重要な役割を果たします。

関節窩は、肩甲骨の上外側にあるくぼみで、関節窩の凹面は上腕骨頭凸面ほどよりも浅いため関節面は完全に一致していません。
この不一致な骨の構造により、肩関節の可動範囲が広くなります。
この一致は関節窩の縁に付着する関節唇によって増加します。
関節唇は線維軟骨の輪であり、肩甲骨の関節窩を約30%-50%取り囲み、深くしています。

関節唇は関節窩の深さを増加させ、並進に運動に抵抗し、上腕骨頭が回旋筋腱板によって関節窩に圧縮されること(Concavity compression)を可能にし、上腕骨頭を関節窩に中心化させ、関節内圧を陰圧に保つのに役立ち、これらすべてが上腕関節の安定化に役立っています。

関節包

肩関節は繊維性の関節包(Joint capsule)で包まれており、上肢の可動性を確保するために緩んでいます。
関節包は、靭帯と筋腱によって補強され、前部は関節上腕靭帯によって肥厚し、ローテーターカフは関節包の外面と結合します。これをRotator capsuleと呼びます。


<肩関節関節包と肥厚した関節上腕靭帯>

<外側から見た肩関節断面図>

このように補強されている関節包の中で、肩甲下筋腱と棘上筋腱の隙間や、肩甲棘外側にある棘上筋棘下筋の隙間は腱板疎部(ローテーターインターバル)と呼ばれ、一般的に腱板疎部という場合は前者を指します。
この2つの腱板疎部を区別する場合、後者をPosterior rotator intervalと呼びます。

滑液包

肩峰下滑液包(SAB:Subacromial bursa)または肩峰下-三角筋下滑液包(SASD:Subacromial-subdeltoid bursa)は三角筋と烏口肩峰アーチの深部にあり、肩鎖関節の内側あたりから肩峰の下4cm辺りまで伸びています。
烏口下滑液包(Subcoracoid bursa)は関節包と肩甲骨烏口突起の間にあります。
肩甲下滑液包(Subscapular bursa)はは関節包と肩甲下筋腱の間にあります。
これらの滑液包により、肩関節の構造が互いに滑ることができます。

肩甲上腕関節の動作と可動域

肩甲上腕関節は体で最も広い可動範を有しています。
球関節であるため、自由度3での動きが可能です。

可動域検査は通常肩甲上腕関節ではなく、肩関節(肩鎖関節・胸鎖関節・肩甲胸郭関節)の動きとして評価されます。
また可動域の評価では水平屈曲(水平内転)、水平伸展(水平外転)が用いられることもあります。

<肩関節の参考可動域>

動作 本邦における参考可動域
屈曲 180°
伸展 50
外転 180°
内転
外旋 60°
内旋 80°
水平屈曲 135°
水平伸展 30°
※内転は上肢が体幹に当たるため0°とされます。
これらの動きを組み合わせることで、ぶん回し運動(Circumduction)ができます。

肩関節に作用する筋

<肩関節の主動筋>

動作 主動筋
屈曲 大胸筋三角筋烏口腕筋、(上腕二頭筋長頭)
伸展 広背筋大円筋大胸筋三角筋、(上腕三頭筋長頭)
外転 棘上筋三角筋
内転 烏口腕筋大胸筋広背筋、(大円筋)
外旋 小円筋棘下筋三角筋
内旋 肩甲下筋大円筋広背筋三角筋、(大胸筋)

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