概説

棘上筋(Supraspinatus muscle)は回旋筋腱板(ローテーターカフ/Rotator Cuff)を構成する筋の1つでローテーターカフの中では上部に位置し、特に外転に貢献します。

SupraspinatusのSupraは「上の」、spinaは「棘(とげ)」、tusは名詞を意味し、棘とは肩甲棘を指します。そのため日本語表記の棘上筋と同義であり、どちらも肩甲棘の上にある筋であることを指しています。略称はSSPと表記されます。
(文献によって略称は異なります)
類似して、棘下筋(Infraspinatus)のInfraは下を意味するため棘下筋となります。

起始
(Origin)

肩甲骨の棘上窩(Supraspinous fossa)内側2/3

棘上筋の起始は肩甲骨の後面にある骨の隆起した部位である肩甲棘(Spine)の上部の凹みに付着します。
この付着部は棘上窩(Supraspinous fossa)と呼ばれています。
肩甲棘の下方にある凹みは棘下窩、肩甲骨前面にある凹みは肩甲下窩と呼ばれます。

停止
(Insertion)

上腕骨の大結節(Greater tubercle)

起始と停止をつなぐことで筋の走行は肩峰下腔内で肩峰下滑液包の下を通過し、主に大結節上面に付着します。
棘下筋腱と棘上筋腱は停止部では結合し境界は不明瞭です。従来は棘上筋が主に大結節上方を覆うとされていましたが、より最近では棘上筋は大結節の前方部に付着し、さらに約21%は小結節に付着すると報告されています。

支配神経
(Innervation)

肩甲上神経(Suprascapular nerve)、C5,C6

作用
(Action)

肩関節外転、上腕骨頭の安定化、(肩関節外旋)

棘上筋は肩関節の外転筋ですが、上腕骨の回旋における役割は、上腕骨の位置に依存しています。
棘上筋は、外転時には外旋筋、屈曲時には内旋筋となります。

栄養血管
(Blood supply)

肩甲上動脈(Suprascapular artery)

棘上筋の隣接構造

棘上筋の表層には僧帽筋中部繊維が覆いかぶさっています。

棘上筋の起始部では僧帽筋が覆い、停止部では三角筋や肩峰が覆っています。

ストレッチ

棘上筋は最大伸展、最大内旋で伸張されます。

肩関節外転筋群

主な肩関節外転筋は三角筋(中部繊維)と棘上筋です。

腱板疎部

棘上筋は前方の腱板疎部の構成要素です。
前方の腱板疎部は烏口突起を頂点と棘上筋を上縁、肩甲下筋を下縁、上腕二頭筋長頭腱(または結節間溝)を底辺として領域を指します。

棘上筋に関する誤解

棘上筋は肩関節の外転における動作を開始する筋であると従来は考えられていましたが、実際は棘上筋のみでなく三角筋も動作開始時には活動します。

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References

・Nishishita S, Hasegawa S, Nakamura M, Umegaki H, Kobayashi T, Ichihashi N. Effective stretching position for the supraspinatus muscle evaluated by shear wave elastography in vivo. J Shoulder Elbow Surg. 2018 Dec;27(12):2242-2248. doi: 10.1016/j.jse.2018.06.003. Epub 2018 Jul 18. PMID: 30030031.
・D'Antoni, A.V. (2016), Gray's Anatomy, the Anatomical Basis of Clinical Practice, Forty-First Edition
Mochizuki T, Sugaya H, Uomizu M, Maeda K, Matsuki K, Sekiya I, Muneta T, Akita K. Humeral insertion of the supraspinatus and infraspinatus. New anatomical findings regarding the footprint of the rotator cuff. J Bone Joint Surg Am. 2008 May;90(5):962-9. doi: 10.2106/JBJS.G.00427. PMID: 18451386.