2つ質問をしてみます。
問1. 以下の[ ? ]に当てはまる足関節の動作の名称は?
問2. 問1の答えは周りの医療従事者と一致しますか?
これまで日本語英語関わらず、足関節の「外がえしと内がえし」「回外と回内」が混同されている問題がありました。
この混同は医療従事者間のコミュニケーションをしばしば混乱させ、文献の読解を難儀させる原因になっていました。
そこでこの問題を解決する「関節可動域表示ならびに測定法改訂」が2022年4月に運用開始されました[1][2]。
主な改訂内容は3つあります。
- 足関節・足部における「外がえしと内がえし」および「回外と回内」の定義
- 足関節・足部に関する矢状面の運動の用語
- 足関節・足部の内転・外転運動の基本軸と移動軸
目次
足関節・足部における「外がえしと内がえし」および「回外と回内」の定義
今回の改訂ではそれぞれ以下のように定められました。
・外がえしと内がえし
足関節・足部に関する前額面の運動で、足底が外方を向く動きが外がえし、足底が内方を向く動きが内がえしである。
・回外と回内
底屈・内転・内がえしからなる複合運動が回外、背屈・外転・外がえしからなる複合運動が回内である。母趾・趾に関しては、前額面における運動で、母趾・趾の軸を中心にして趾腹が内方を向く動きが回外、趾腹が外方を向く動きが回内である。
習った表記方法と違うという方も大勢いると思います。私自身この表記は学校で習ったものと異なります。
どっちが内がえしでどっちが回外なのか忘れそうなので、覚え方もまとめておきます。
回外(Supination)/回内(Pronation)英語表記の覚え方
なぜ底屈・内転・内がえしの複合運動を"回外(Supination)"と表すのか分かれば覚えやすいです。
回外(Supination)は仰臥位(Supine)からの派生で生まれた言葉です。
仰臥位とは"lie on one's back"=お腹を天井に向ける姿勢を指すため回外(Supination)も「お腹を天井に向ける」動作のことを指します。
立位で足の裏(腹)を天井に向けようとして見てください。
この時、足は底屈・内転・内がえしすることになります。そのため足を仰臥位にする動作がSupination=回外と覚えることができます。
回内(Pronation)はこの逆の動作です。
前腕の回外(Supination)/回内(Pronation)も同様に手掌(腹)を天井に向けるのが回外(Supination)です。
内がえし(inversion)/外がえし(eversion)英語表記の覚え方
内がえしは「内」+「かえし」に分けることができるようにInversionも"In"+"vert"+"ion"に分けることができます。"ion"は単語を名詞化する役割なので考えなくても問題ありません。
英単語を見ていると内を表す時に"In"、外を表す時に"Ex"が使われることに気が付きます。
例えば「含む(Include)」は"In+close"で閉じた内側にあることから「含む」となります。
「関与(Involve)」は”In+volvere”、volvereはリボルバーの語源と同じで回転を意味します。
なので「回転の中」=「巻き込む」=「関与」となります。
「出口(Exit)」では"Ex+it"のitは行くを意味するため、外に行くことから意味は「出口」となります。
Excuse meで良く使われる「言い訳(Excuse)」は、Ex+causa(責任)で、「責任の外」から意味は「言い訳」となります。
"vert"は「向く」という意味があり、バトルでよく使われる「Versus(対)=敵の方を向く」と同じ語源です。
以上からIn(内)+vert(向く)で、測定を内側に向ける動作ということで内がえしが"Inversion"、反対に外側(Ex)に向ける動作が外かえしが"Eversion"となります。
足関節・足部に関する矢状面の運動の用語
足の運動でもう一つ紛らわしいのは屈曲・伸展です。多くの場合、基本肢位にある隣接する2つの部位が近づく動きが屈曲、遠ざかる動きが伸展と表記されます(関節可動域ならびに測定法の原則より)。
これにより通常、前方への動きが屈曲、後方への動きが伸展となります。
しかし足関節では背屈を屈曲/伸展どちらにするか混乱があります。
そのため以下のように改訂されました。
・背屈と底屈
足背への動きを背屈、足底への動きを底屈とし、屈曲と伸展は使用しないこととする。
ただし、母趾・趾に関しては、足底への動きが屈曲、足背への動きが伸展である。