板状筋 | 頭板状筋と頸板状筋の起始・停止・支配神経・作用

板状筋(とうばんじょうきん)とは?

板状筋(Splenius muscle)は、細長い一対の筋で、ギリシャ語のsplenion(包帯)に似ていることから名付けられました。
この筋全体は、首の後部にある深部伸筋を押さえる包帯のようなものです。

僧帽筋と胸鎖乳突筋の下には板状筋があり、板状筋の下には頭最長筋(longissimus capitis muscle)と頭半棘筋(semispinalis capitis muscle)があります。
項靭帯(ligamentum nuchae)は僧帽筋、板状筋などの正中線上の筋の付着部でもあり、項靱帯の受動的な張力は、小さいながらも頸椎の伸展をサポートします。また棘突起を触診するのをしばしば困難にする一因です。
頭頸部領域(Craniocervical region)の筋は前外側と後部の筋に分けることができます。後部の筋はさらに表層と深部の筋群に分けられます。
表層筋は頸板状筋(Splenius cervicis muscle)頭板状筋(Splenius capitis muscle)で構成され、深部の筋群は後頭下筋群と呼ばれています。

 

頭板状筋の起始・停止・支配神経・作用

頭板状筋はC7-T4の棘突起と項靱帯から後頭骨の上項線外側1/3と側頭骨の乳突突起まで走行しています。
頭板状筋と頸板状筋の走行は類似していますが、頸板状筋は胸椎から頸椎まで走行するのに対し、頭板状筋は頸・胸椎から頭蓋骨に直接付着するため頭部の伸展・回旋・側屈筋です。

名称 頭板状筋(とうばんじょうきん)
英語表記 Splenius capitis muscle
略称 SpC
起始 C7-T4の棘突起、項靱帯
停止 後頭骨の上項線外側、側頭骨の乳様突起
支配神経 頸神経後枝外側枝
神経根/分節 C2-3
作用 両側性収縮:頭部と頸部の伸展
片側性収縮:頭部の側屈、同側回旋
血液供給 後頭動脈

頸板状筋の起始・停止・支配神経・作用

頸板状筋はT3-T6の棘突起からC1-C3の横突起まで走行しています。
頭板状筋と頸板状筋の走行は類似していますが、頭板状筋は頸・胸椎から頭蓋骨に付着するのに対し、頸板状筋は胸椎から頸椎まで走行しているため頸椎の伸展・回旋・側屈筋です。

 

名称 頸板状筋(けいばんじょうきん)
英語表記 Splenius cervicis muscle
略称 -
起始 T3-T6の棘突起
停止 C1-C3の横突起
支配神経 下部頸神経後枝外側枝(Lateral branche)
神経根/分節 -
作用 両側性収縮:頭部と頸部の伸展
片側性収縮:頭部の側屈、同側
血液供給 後頭動脈(occipital artery)、椎骨動脈(Vertebral artery)、Superior intercostal artery、深頸動脈(Deep cervical artery)、頸横動脈(Transverse cervical artery)

 

頭板状筋と頸板状筋の英語表記

板状筋(Splenius muscle)という名前はギリシャ語のsplenion(包帯)に似ていることに由来しています。
頭板状筋(Splenius capitis muscle)と頸板状筋(Splenius cervicis muscle)を分けるのはラテン語で「頭の」を意味するcapitisと「首の」を意味するcervicisです。

同様に解剖学用語ではcapitisが頭を指し、cervicisが首を指すために使われることはよくあります。
例えば頭最長筋はLongissimus "capitis" muscle、前頭直筋はRectus "capitis" anterior muscle、頭半棘筋はSemispinalis "capitis" muscleと言います。
また頸腸肋筋はIliocostalis "cervicis" muscle、頚半棘筋はSemispinalis "cervicis" muscleと言います。

そのため「板状(Splenius)」と「頭の(Capitis)」、「首の(Cervicis)」を覚えることでいくつかの筋の英語表記を同時に覚える役に立ちます。

後頸三角との関係

後頸三角(Posterior triangle of the neck)は僧帽筋前縁、胸鎖乳突筋後縁、鎖骨で構成されており、外頸静脈、頚横動脈、頚神経叢、腕神経叢、頚リンパ節、副神経、胸管が通過します。副神経の位置は、頸部手術における医原性損傷に対して脆弱です。
後頸三角の頂点は胸鎖乳突筋と僧帽筋の後頭部への付着部の間にあり、しばしばこの三角形は四角形になります。
後頸三角の屋根は、深頸筋膜(deep cervical fascia)のInvesting layerによって形成されます。
後頸三角の床は、頭板状筋、肩甲挙筋、斜角筋を覆う椎前筋膜(prevertebral fascia)によって形成されます。

鎖骨の上約2.5cmのところには、後頭三角(occipital triangle)と鎖骨上三角(supraclavicular triangle)に分ける肩甲舌骨筋が横切っています。

後頭三角との関係

後頭三角(Occipital triangle)は後頸三角(後頭三角と肩甲鎖骨三角)の上部です。
後頭三角の床は上から順に、頭板状筋、肩甲挙筋、中斜角筋、後斜角筋で形成されており、頭半棘筋が現れることもあります。
この三角形は皮膚、浅筋膜(superficial fascia)、深筋膜(deep fascia)に覆われ、下方は広頸筋に覆われています。
副神経は胸鎖乳突筋を貫通し、肩甲挙筋を斜め下後方に横切り、僧帽筋深部に達します。

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参考文献
[1]Sinnatamby, C. S. (2011). Last’s anatomy: Regional and Applied. Churchill Livingstone.
[2]Neumann, D. A. (2017). Kinesiology of the musculoskeletal system: Foundations for Rehabilitation. Mosby.
[3]Drake, R., PhD, Vogl, A. W., PhD, & Mitchell, A. W. M. (2022). Gray’s basic anatomy.
[4]Standring, S. (2020). Gray’s anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. Gray’s Anatomy.
[5]Schünke, M., Schulte, E., & Schumacher, U. (2016). Atlas of Anatomy. Thieme Medical Publishers.

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