肩関節と肩複合体の概説

タム
今回は肩関節の概説、全体像を掴む基本的な話をしましょうか。

白タム(学生)
よろしくお願いします。

肩複合体/肩関節複合体

[前方から見た図]


[外方から見た図]


[後方から見た図]

[上方から見た図]

タム
まず、肩関節というと狭義の意味で「肩甲上腕関節(GHjt:Glenohumeral joint)」を指すこともありますし、広義の意味で肩複合体/肩関節複合体(shoulder complex)を指すこともあります。

白タム(学生)
学校で習った記憶があります。

タム
これらの骨は3つあるいは5つあるいは6つの関節を形成します。

白タム(学生)
「あるいは」が多い

タム
これは機能的関節を含めるかどうがが関係していますね。
滑膜や関節包が存在する解剖学的関節だけなら3つ
滑膜が存在しない機能的関節を含めるなら5つないしは6つです。
6つ目に関してはあまり言及されません。

白タム(学生)
6つ目は聞いたことないですね。

タム
正解です。
機能的な関節は?

白タム(学生)
えー、っと
肩甲胸郭関節と、、、確か第2肩関節です。

タム
いいですね。
第2肩関節は肩峰下関節とも呼ばれますね。
以上を合わせて肩複合体を構成する5つの関節になります。
機能的関節は肩複合体の全体的な動きを構成する要素に含まれます。
肩関節複合体を構成する5つの関節
・肩甲上腕関節(GHjt:Glenohumeral joint)
・胸鎖関節(SCjt:Sternoclavicular Joint )
・肩鎖関節(ACjt:Acromioclavicular Joint)
・肩甲胸郭関節(STjt:Scapulothoracic joint)
・第2肩関節/肩峰下関節(subacromial joint/suprahumeral joint/ subacromial space)

白タム(学生)
6つ目の関節はなんですか?

タム
6つ目は烏口突起と鎖骨で構成される烏口鎖骨複合体ですね。
あるいはC-C mechanism(Coracoclavicular mechanism)と呼ばれることもあります。

白タム(学生)
へー初めて聞きました。
肩関節を構成する6つの関節
・肩甲上腕関節(GHjt:Glenohumeral joint)
・胸鎖関節(SCjt:Sternoclavicular Joint )
・肩鎖関節(ACjt:Acromioclavicular Joint)
・肩甲胸郭関節(STjt:Scapulothoracic joint)
・第2肩関節/肩峰下関節(subacromial joint/suprahumeral joint/ subacromial space)

タム
それでこの肩関節は日常生活を振り返ったり可動域を見れば分かりますが、大きな可動性(mobility)を持っている関節です。
しかし上肢という重い構造体の負荷から脱臼や他の怪我をしないように安定性(stability)も同時に持ち合わせる必要があります。

白タム(学生)
可動性と安定性の相反する要求に対する両立が必要なんですね。

タム
可動性を保ったまま安定させるために静的安定化機構だけでなく、動的安定性(Dynamic stability)が必要になってきます。

白タム(学生)
そうなると機能障害や不安定性の影響をもろに受けやすいイメージがつきますね。

肩甲帯(shoulder girdle)

タム
また肩複合体に似た言葉に「肩甲帯(shoulder girdle)」があります。
肩甲帯は上肢を脊柱につなげているリングのことです。

白タム(学生)
となると、鎖骨、肩甲骨あたりが肩甲帯に含まれるんですか?

タム
その通りです。上腕骨上部が含まれることもありますが、鎖骨と肩甲骨、そして関節で言えば肩鎖関節、胸鎖関節、肩甲上腕関節が含まれます。

肩甲上腕筋

タム
肩甲骨から起始して、上腕骨に停止する筋(Scapulohumeral muscles)は6つあります。
6つ挙げられますか?

白タム(学生)
ローテーターカフを構成する棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋と、
えーっと三角筋、大円筋です。
肩甲上腕筋(Scapulohumeral muscles)
【棘上筋(SSP:Supraspinatus muscle)】
起始:肩甲骨棘上窩(Supraspinous fossa)
停止:上腕骨大結節(Greater tubercle)
支配神経:肩甲上神経(Suprascapular nerve)
作用:肩関節外転(Abduction)【棘下筋(ISP:infraspinatus muscle)】
起始:肩甲骨棘下窩(Infraspinous fossa)
停止:上腕骨大結節(Greater tubercle)
支配神経:肩甲上神経(Suprascapular nerve)
作用:肩関節外旋(External rotation)
【小円筋(tm:teres minor muscle)】
起始:肩甲骨後面外側縁
停止:上腕骨大結節(Greater tubercle)
支配神経:腋窩神経(Axillary nerve)
作用:肩関節外旋(External rotation)、内転(Adduction)【肩甲下筋(SSC:subscapularis muscle)】
起始:肩甲骨肩甲下窩(Subscapular fossa)
停止:上腕骨小結節(Lesser tubercle)
支配神経:上/下肩甲下神経(Upper / lower subscapular nerves)
作用:肩関節内旋(Internal rotation)、内転(Adduction)【三角筋(Deltoid muscle)】
起始:鎖骨(Clavicle)、肩峰(Acromion)、肩甲棘(Spine of the scapula)
停止:上腕骨三角筋粗面(Deltoid tuberosity)
支配神経:腋窩神経(Axillary nerve)
作用:
・鎖骨部(Clavicular part):屈曲、内旋、内転
・肩峰部(Acromial part):外転
・肩甲棘部(Spinal part):伸展、外旋、内転【大円筋(TM:Teres major muscle)】
起始:肩甲骨下角の後面
停止:結節間溝(Intertubercular sulcus)
支配神経:下肩甲下神経(Lower subscapular nerve)
作用:肩関節内旋(Internal rotation)、内転(Adduction)
肩甲下筋の上腕骨への付着は男性の方が大きく(Ref)、棘上筋の停止部の平均最大幅は、女性よりも男性の方が14.9mm対13.5mmと大きいと報告されています(Ref)。

解剖学的関節

肩関節は複雑な生体力学的構造です。

肩複合体は上腕骨、肩甲骨、鎖骨で構成され、さまざまな動きで肩を非常に大きく動かすために、関節、腱、靭帯、動的な筋による複雑な関係によって調節がされています(Ref)(Ref)。

肩関節は上肢の外転、内転、内外旋、伸展、屈曲とこれらの複合運動など無数の動きが可能であり、幅広い活動を行うことができます。しかしながら、広すぎる関節可動域は不安定性につながり、肩の損傷のリスクを高めます(Ref)。さらに、肩関節には強い靭帯がなく安定性は筋に大きく依存しています(Ref)。

肩甲上腕関節

肩甲上腕関節(Glenohumeral joint)は、上腕骨頭と肩甲骨関節窩の間に形成される肩の主要な関節です。
肩甲上腕関節上腕骨頭が大きく、関節窩が小さいため、広範囲の可動性が可能であり(Ref)、関節のどの位置でも、上腕骨頭の25〜30%のみが関節窩と関節運動することができます(Ref)。

しかし、それでも正常の肩は、運動中に関節窩の中心の1mmから2mmの間で上腕骨頭を安定させます(Ref)。

肩鎖関節

肩鎖関節(Acromioclavicular joint)は、鎖骨の外側の端と肩峰の内側の端の間の関節です。

成人の肩鎖関節の平均サイズは約9mm〜19 mmです(Ref)。
肩鎖関節は、鎖骨と肩峰の間で力を伝達するのに役立つだけでなく、腕全体の動きにも寄与するため、肩の安定性にとって重要です(Ref)

肩鎖関節の動きは、腕が約90°外転したときに顕著になり、垂直軸を中心に約6°の内旋、前後軸に沿って約15°の挙上をします(Ref)。

胸鎖関節

胸鎖関節(Sternoclavicular joint)は、胸骨と鎖骨内側端をつなぐ鞍関節です。厚い関節包を持っており、関節円板によって2つに分離されています。
胸鎖関節は球関節の関節に類似しています(Ref)。

胸鎖関節の静的安定化機構には、関節包と靭帯(肋鎖関節、鎖骨間靭帯、前胸鎖関節、後胸鎖関節)が含まれます。
しかし、胸骨の小さな関節面と鎖骨間のサイズの大きな不一致のために、関節の安定性は主に周囲の靭帯構造に起因します(Ref)

胸鎖関節により肩に前に突き出す動作が達成できます。

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