肩甲上神経(Suprascapular nerve)

肩甲上神経はC5,C6神経根で構成される運動繊維(Motor fiber)と感覚繊維(Sensory fiber)の混合神経(Mixed nerve)です。

由来(Origin)

肩甲上神経はC5,C6に由来します。


C5,C6神経根は腕神経叢の構成要素でもあります。
C5,C6の前枝が上神経幹(Superior trunk)を形成し、斜角筋隙で肩甲上神経を出します。

エルブ点(Erb's point)

鎖骨の上方2~3cm上、胸鎖乳突筋の後縁のやや外側、頸動脈結節の高さにある表層の点をエルブ点といいます。


胸鎖乳突筋後縁の中点を神経点(Nerve point)といいますが、医学書でもエルブ点と誤表記されていることがあり注意が必要です。
神経点は頸神経叢の皮枝が出てくる領域を示しています[1]。
日本語ではErbをエルブと読みますが、英語の発音に寄せるとErb's point(アーブスポイント)とNerve point(ナーブポイント)で発音が類似しており、場所も近いことが用語の混合する原因になったと思われます。

走行(Path)

C5,C6が合流した上神経幹は斜角筋隙で肩甲上神経を分枝します。

僧帽筋の深部で鎖骨の後下方に向かって下降し、肩甲舌骨筋の腹側を走行します。

肩甲骨の肩甲切痕(SSN:suprascapular notch)と上肩甲横靭帯(STSL:superior transverse scapular ligament)で構成されるSuprascapular foramenを通過します。


この時、肩甲上動静脈は上肩甲横靭帯の上を通過します[3]。

この時肩甲上神経は棘上窩に向かうMedial trunkと棘下切痕に向かうLateral trunkに分かれます[2]。

Medial trunkは棘上窩に入り棘上筋を支配し、Lateral trunkは肩甲棘外側の棘下切痕(Spinoglenoid notch)を周って棘下窩へ向い、棘下筋を支配する神経を分枝します。

肩関節後面や肩鎖関節へも関節枝を出します。一部の人では皮枝を出すことがあります。

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References
[1]Tubbs RS, Loukas M, Salter EG, Oakes WJ. Wilhelm Erb and Erb's point. Clin Anat. 2007 Jul;20(5):486-8. doi: 10.1002/ca.20385. PMID: 16944503.
[2]Tran J, Peng PWH, Agur AMR. Anatomical study of the innervation of glenohumeral and acromioclavicular joint capsules: implications for image-guided intervention. Reg Anesth Pain Med. 2019 Jan 11:rapm-2018-100152. doi: 10.1136/rapm-2018-100152. Epub ahead of print. PMID: 30635516.
[3]Kostretzis L, Theodoroudis I, Boutsiadis A, Papadakis N, Papadopoulos P. Suprascapular Nerve Pathology: A Review of the Literature. Open Orthop J. 2017 Feb 28;11:140-153. doi: 10.2174/1874325001711010140. PMID: 28400882; PMCID: PMC5366386.