僧帽筋上部繊維の起始・停止・支配神経・作用

僧帽筋上部繊維の起始・停止・支配神経・作用

僧帽筋は背部上部の最も表層にあり、頭蓋骨から下部胸椎の範囲から起始し、鎖骨と肩甲骨に停止する大きく薄い筋です。
僧帽筋は上部繊維・中部繊維・下部繊維に分けることができます。

<僧帽筋上部繊維の基礎データ>

名称 僧帽筋上部繊維(そうぼうきんじょうぶせんい)
英語表記 Descending part of trapezius muscle
略称 -
起始 上項線の内側3分の1、外後頭隆起、項靱帯
停止 鎖骨外側3分の1
支配神経 脊髄副神経
神経根/分節 -
作用 肩甲胸郭関節:肩甲骨の内転、挙上
頸部:伸展、同側側屈、対側回旋
血液供給 後頭動脈の下行枝、浅頸動脈(頸横動脈)、肩甲背動脈

 

僧帽筋上部繊維の起始

起始 上項線の内側3分の1、外後頭隆起、項靱帯
僧帽筋上部繊維は「上項線(Superior nuchal line)の内側3分の1、外後頭隆起(External occipital protuberance)、項靱帯(Nuchal ligament)」から起始し、外方へ向かって走行します。
項靭帯は僧帽筋、板状筋などの正中線上の筋の付着部でもあり、項靱帯の受動的な張力は、小さいながらも頸椎の伸展をサポートします。

僧帽筋上部繊維の停止

起始 鎖骨外側3分の1

起始から外方へ向かって伸びた僧帽筋上部繊維は「鎖骨(clavicle)外側3分の1」に停止します。
C7レベルより上の繊維は全て鎖骨に付着しており、上項線からの束が最も前方に付着し、次に項靱帯の上半分、下半分が続きます。

僧帽筋上部繊維の支配神経

支配神経 副神経

僧帽筋と胸鎖乳突筋は「副神経(Accessory nerve)」によって支配されています。
この副神経は脊髄から出ていることから脊髄副神経と呼ばれています。

僧帽筋上部繊維の作用

作用 肩甲胸郭関節:肩甲骨の内転、挙上
頸部:伸展、同側側屈、対側回旋

僧帽筋上部繊維は「肩甲胸郭関節を肩甲骨の内転、挙上し、頸部を伸展、同側側屈、対側回旋」します。
僧帽筋上部繊維による肩甲骨の挙上は、鎖骨遠位部が上内方に引かれ、胸鎖関節で回転運動が生じることによって果たされます。

上項線からの繊維は上項線付近だけ見ると上下方向に走行していますが、頸部を回った後、鎖骨にほぼ水平に近づき、わずかに下方に傾きます。C7からの繊維は外向きに走っています。
また上項線からの線維の生理学的断面積はわずか0.3 cm^2しかなく、項靱帯上半分は0.7 cm^2、下半分は2.3 cm^2とC7に近づくほど大きくなります。
上項線の線維のみが鎖骨に垂直方向の力を加える能力を与えられている可能性がありますが、そのサイズが小さいため、この動作における強度は制限されます。
※生理学的断面積が大きいほど発揮される筋力が高い。
さらに停止部に向けてこれらの繊維はほぼ水平になります。その結果、繊維が鎖骨に到達する前に、繊維が持つ上向きの作用が打ち消されることになります。
そのため僧帽筋は鎖骨を上方に直接持ち上げるように配置されていません[6]。
<線でみる僧帽筋上部繊維>

<僧帽筋の生理学的断面積(PCSA)>

平均PCSA(cm^2)
上項線 0.3 (0.2)
後頭骨-C3 0.7 (0.2)
C3-C6 2.3 (0.9)
C7 2.2 (1.0)

頭板状筋の血液供給

血液供給 後頭動脈の下行枝、浅頸動脈(頸横動脈)、肩甲背動脈

頭板状筋は「後頭動脈(Occipital artery)の下行枝、浅頸動脈(Superficial Cervical Artery)または頸横動脈(Transverse cervical artery)、肩甲背動脈(Dorsal scapular artery)」によって栄養されています。

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参考文献
[1]Sinnatamby, C. S. (2011). Last’s anatomy: Regional and Applied. Churchill Livingstone.
[2]Neumann, D. A. (2017). Kinesiology of the musculoskeletal system: Foundations for Rehabilitation. Mosby.
[3]Drake, R., PhD, Vogl, A. W., PhD, & Mitchell, A. W. M. (2022). Gray’s basic anatomy.
[4]Standring, S. (2020). Gray’s anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice. Gray’s Anatomy.
[5]Schünke, M., Schulte, E., & Schumacher, U. (2016). Atlas of Anatomy. Thieme Medical Publishers.
[6]Johnson, G., Bogduk, N., Nowitzke, A., & House, D. (1994). Anatomy and actions of the trapezius muscle. Clinical biomechanics (Bristol, Avon), 9(1), 44–50. https://doi.org/10.1016/0268-0033(94)90057-4

 

 

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