肩関節インピンジメント症候群を軽減するためのキネシオテーピング

タム
今回は2021年4月に「Clinical Rehabilitation」で公開された肩関節インピンジメント症候群 (SIS:Shoulder impingement syndrome)に対するキネシオテーピングの効果を検証した研究を見ていきましょうか。
このジャーナルのIFは2.599でランクはQ1です。
▶︎インパクトファクター(IF:Impact Factor):特定の期間において、ある雑誌に掲載された論文が平均的にどれくらい頻繁に引用されているかを示す尺度で、雑誌の影響を表す指標の一つ
▶︎ランク(Rank):同じ分野の中で、当該ジャーナルのIFが全体の何%以内に入るかを示しています。
(Q1=上位25%、Q2=上位26-50%、Q3=上位51-75%、Q4=上位76–100%)

肩関節インピンジメント症候群に対するキネシオテーピング

タム
肩関節インピンジメント症候群のような肩の痛み、では痛みの改善のためや機能改善のためにキネシオテーピングが臨床で用いられることは少なくありません。

白タム(学生)
臨床経験としてはテーピングで改善がみられることはありますけど、実際のところ効果があるのかは気になりますね。

タム
この研究では肩関節インピンジメント症候群患者120名平均年齢(SD):37.8歳(5.4歳)を対象に行われました。

白タム(学生)
今回「肩関節インピンジメント症候群」とされた条件はどのようなものだったんですか?

タム
痛みが6週間以上続いており、屈曲と外転の運動中にペインフルアークを有し、NeerまたはHawkins-Kenney testが陽性で、外旋・外転の抵抗で痛みを伴う、またはJobe testで痛みを伴うことの"すべてを満たす"ことが条件です。
また除外基準としては、(1)手術歴、骨折、外傷性発症、腱板の大きな断裂の存在、二頭筋腱長頭腱断裂、肩関節複合体の退行性関節障害、(2)妊娠している、(3)試験前の6カ月間にステロイド注射を受けていることです。
なのでこの研究結果を臨床に当てはめたい場合は同様の条件に限定されます。

白タム(学生)
なんとなくで、「インピンジメント」って言われてることが多い印象なのでこの条件は大切ですね。

タム
今回は対照を3つに分けたRCTです。
①8週間(週3日1時間)の運動療法のみ
②キネシオテープを使用した運動療法
③対照群(1日3回約20分間のアイシング か鎮痛薬の服用)
アウトカムは疼痛、障害、肩甲骨の運動が測定されています。
細かな介入方法はこちらから見ることができます。
※RCT(ランダム化比較試験/Randomized controlled trial):介入・治療などを行うこと以外は公平になるように集団を無作為に複数の群に分け、操作の影響・効果を測定し、明らかにするための比較研究です

白タム(学生)
ちなみにこのテーピングは何が目的なんでしょうか?

タム
"エクササイズ中"に肩と肩甲骨の生体力学を改善することですね。
だから臨床でみかける「施術の終わりにテーピングして終わり」ではなく、エクササイズをより良くするためのものです。

白タム(学生)
なるほど

タム
患者は介入前 1 週間以内 (ベースライン) と 8 週間の介入後 (介入後) に評価されました。
果たして測定されたすべてのアウトカムで、運動のみの効果とキネシオテープを使用した運動の両方の効果は、対照群よりも有意に優れていました。
肩甲骨の内旋については差がありませんでしたが、肩甲骨上方回旋においてはキネシオテープを用いた運動が運動のみと比較して、矢状面、スキャプラプレーン上で有意な効果を示しました。
また肩甲骨の傾斜(Scapular tilt)についてもキネシオテープを併用した運動の方は矢状面、スキャプラプレーン上で運動のみの群に比べて有意な効果を示しました。

白タム(学生)
おお、ってことは肩関節インピンジメント症候群の患者では、肩甲骨の内旋が大きく、上肢挙上時の肩甲骨の上方回旋と後傾が少ないから運動の手助けになるイメージがつきます。

タム
この時のメカニズムははっきりとしませんが、効果があることから臨床家は臨床の中でキネシオテーピングを使用することは妥当ですね。
より長期的な転機も気になるところです。

まとめ

【Patient】
肩関節インピンジメント症候群患者120名平均年齢(SD):37.8歳(5.4歳)
(1)痛みが6週間以上続いている
(2)屈曲と外転の運動中にペインフルアークを有す
(3)NeerまたはHawkins-Kenney testが陽性
(4)外旋・外転の抵抗で痛みを伴う、またはJobe testで痛みを伴う
以上"すべてを満たす"
除外基準としては、
(1)手術歴、骨折、外傷性発症、腱板の大きな断裂の存在、二頭筋腱長頭腱断裂、肩関節複合体の退行性関節障害、
(2)妊娠している
(3)試験前の6カ月間にステロイド注射を受けている

【Intervention】
①8週間(週3日1時間)の運動療法のみ
②キネシオテープを使用した運動療法
③対照群(1日3回約20分間のアイシング か鎮痛薬の服用)

【Outcomes】
果たして測定されたすべてのアウトカムで、運動のみの効果とキネシオテープを使用した運動の両方の効果は、対照群よりも有意に優れていた。
肩甲骨上方回旋、肩甲骨の傾斜(Scapular tilt)においてはキネシオテープを用いた運動が運動のみと比較して、矢状面、スキャプラプレーン上で有意な効果を示した。

タム
肩関節インピンジメント症候群の患者では、運動をしない場合と比較して運動によって痛みや障害が軽減されます。さらに運動療法プログラムにキネシオテープを追加すると有益な効果が増加します。

参考文献

Letafatkar A, Rabiei P, Kazempour S, Alaei-Parapari S. Comparing the effects of no intervention with therapeutic exercise, and exercise with additional Kinesio tape in patients with shoulder impingement syndrome. A three-arm randomized controlled trial. Clin Rehabil. 2021 Apr;35(4):558-567. doi: 10.1177/0269215520971764. Epub 2020 Nov 6. PMID: 33155484.

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