腰痛の評価は点ではなく線でしたい

腰痛評価はより良くできるかも知れない

医療面接では、主に現時点の腰痛について聞かれます(現病歴)。もちろん過去に腰痛があったか聞く人も沢山います。腰痛のエピソード回数は腰痛の予後因子であるため、治りやすいか治りにくいかの判断材料になります[1]。

このような聴取は患者の腰痛を点で探っているように見えます。
どういうことか理解するために腰痛の一種の特徴を紹介します。
腰痛の経過は2-12のパターンが特定されています[2]。その中の11-34%は変動パターン(fluctuating patterns)と呼ばれ、疼痛強度が上下に変化するか痛みのない期間を伴う腰痛を指します(下図のような1年を通して変化をする腰痛)。

医療者が聴取しているのは以下のような点です。

そしてこのような痛みの経過を有する患者の過去の痛みについて聞く際には以下のように1つの腰痛を別の腰痛として認識していることがあります。

このような痛みは急性腰痛ですか?慢性腰痛ですか?
患者が別の腰痛と認識してそれを医療者に伝える場合は現在の腰痛(9月)と5ヶ月前(4月)の定義上慢性腰痛ではない、亜急性/急性腰痛と判断してしまいます。

腰痛を過度に単純化しないためには腰痛の経過を点ではなく、線で理解する方法が取れます。

評価方法は?

現在このために使える評価は限られています。

神経障害性疼痛の評価で用いられるPainDETECTを利用すれば4つの腰痛経過を評価できるかもしれません[3]。

ただしこのパターンがどのように導出されたかに関する情報は報告されておらず、腰痛で特定された経過パターンを表していないため、腰痛患者に対する有用性は不明です。

痛みの経過を特定するための評価法であるVTQ-Pain(Visual Trajectories Questionnaire-Pain)を使うこともできます[2]。

このような評価は歴史的にあまり使用されてきておらず、臨床的な価値はまだ限られています。
ただ問診票に組み込むことを検討しても良いと思います。

参考文献

[1]Hancock, M. J., Maher, C. M., Petocz, P., Lin, C. W., Steffens, D., Luque-Suarez, A., & Magnussen, J. S. (2015). Risk factors for a recurrence of low back pain. The spine journal : official journal of the North American Spine Society, 15(11), 2360–2368. https://doi.org/10.1016/j.spinee.2015.07.007
[2]Dunn, K. M., Campbell, P., & Jordan, K. P. (2017). Validity of the Visual Trajectories Questionnaire for Pain. The journal of pain, 18(12), 1451–1458. https://doi.org/10.1016/j.jpain.2017.07.011
[3]Freynhagen, R., Baron, R., Gockel, U., & Tölle, T. R. (2006). painDETECT: a new screening questionnaire to identify neuropathic components in patients with back pain. Current medical research and opinion, 22(10), 1911–1920. https://doi.org/10.1185/030079906X132488

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