腱板疎部は肩の疾患(五十肩・腱板断裂・不安症)の文脈で見かけることのある解剖学的構造の名前です。
学校でも習わない?ため腱板疎部を聞いたことがないという方もいると思います。
腱板疎部は単一の構造体で構成されている訳ではないので、少しイメージが難しいです。
そこで今回は腱板疎部のイメージを想像するための情報を共有します。
腱板疎部の定義
腱板疎部は英語ではRotator interval(RI)と表記します。
"疎部"や"Interval(間隔)"という名前から分かるように特定の空間を指します。そして腱板/Rotatorとあるようにローテーターカフに関連することもわかると思います。
ローテーターカフのどこに空間があるか想像してみて下さい。
空間を見つけるために肩甲上腕関節を外側からみてみます。
そうすることで肩甲下筋と棘上筋の間、烏口突起の外側に隙間があることが理解できます。
ちなみに後ろから見て棘上筋と棘下筋の間、肩峰の外側にも隙間があり、これも腱板疎部(Posterior rotator interval)と呼ばれることがあります[1]。この部位は肩甲上神経疾患にも関連してくるので知っておいても良いと思いますが、基本腱板疎部と言えば前方の疎部を指します。
そんな腱板疎部を定義するのは以下の4つです[2]。
上部:棘上筋
下部:肩甲下筋
内側:烏口突起
外側:結節間溝(外側)
分かりやすいように烏口突起を切断してみます。
結節間溝を頂点、烏口突起を底辺とした、横に倒れた形の三角形が腱板疎部(上図の赤い領域)です。
疎部というとここには何もないように捉えてしまいそうになりますが、腱板以外の軟部組織がここを埋めています。
例えば深部には関節包(腱板疎部の関節包はRI capsuleと呼ばれます)があります。
腱板疎部の関節包は薄く、0.06mm程度しかありません[2]。
とは言え関節包の表層には烏口上腕靱帯や上関節上腕靱帯があり、関節包を補強しています。
これらの組織は別々の名前があり、バラバラに描かれることが多いですが、構造的には互いに連結しているため下図のような認識の方が適切だと思われます。
腱板疎部の大きさ
腱板疎部は平均すると(n=21)基部が20.96mm、棘上筋前縁が39.31mm、肩甲下筋上縁が44.72mmで、面積は414.46mm^2でした[2]。
このようなイメージしにくい構造体はこの部分の病理について勉強する際に想像できないと病理の想像も難しくなります。
学校で習う構造体は基本覚えておきたいですが、このような学校では習わないためメジャーとまではいかないような、しかし勉強していると必ず出てくるものに関してはイメージできるまで掘り下げておくと、実際に肩疾患について勉強していくときに理解しやすくなります。
参考文献
[1]Miller SL, Gladstone JN, Cleeman E, Klein MJ, Chiang AS, Flatow EL. Anatomy of the posterior rotator interval: implications for cuff mobilization. Clin Orthop Relat Res. 2003 Mar;(408):152-6. doi: 10.1097/00003086-200303000-00018. PMID: 12616052.[2]Plancher KD, Johnston JC, Peterson RK, Hawkins RJ. The dimensions of the rotator interval. J Shoulder Elbow Surg. 2005 Nov-Dec;14(6):620-5. doi: 10.1016/j.jse.2005.02.022. PMID: 16337530.