変形性膝関節症に対する運動

変形性関節症は40歳以上にみられる一般的な膝の関節疾患で、膝にかかる負荷が膝軟骨に有害であると考えられていることが多いです。しかしこの考えは誤りです。
膝にかかる負荷が膝にとって悪いと考えている場合にはこの誤った考えは運動や活動を制限してしまう因子になります。運動と減量と教育が一般的な膝OAの治療であることを考えるとこの誤った考え方は通常の治療を受ける弊害になり間接的に回復に悪影響を与えることになります。

変形性膝関節症に対するランニング

変形性関節症に対する運動としては水中(プール)でのウォーキングがよく用いられていますが、これは場所が限られていることからウォーキングやランニングなどのどこでもできる運動の方が多くの人に適応できる介入です。
水中でのウォーキングが利用される理由は水中の方が関節にかかる負荷が少ないからですが、より負荷が少ない水中か陸上かではどちらが優れているかは明確ではありません。陸上での運動にデメリットを上回る利点があれば運動を水中に制限する必要はありません。
Loらは、2,637人のランナーと非ランナーを比較して余暇のランニングの履歴と、膝の痛み、X線のOA、症候性OAの関連を評価しました。
結果としてランナーは非ランナーと比較してOAを発症するリスクが高くないことが明らかになりました。またランニングをしている人は非ランナーよりも膝の痛みを経験せず、変形性関節症を発症するリスクを増加させず、BMIが低い人は定期的にランニングをする傾向がありました。
そのためランニングは膝関節に有害ではなく膝OAに対してランニングを制限する必要はありません。
ランニングの利点
Timminsらはランニングと膝OAの発症との関連を明らかにするために、Systematic Review and Meta-analysisを行いました[2]。
彼らの報告ではランナーはそうでない人と比較してOAに関連する膝の手術が54%減少することが示されました。この報告はランニングが侵襲的な治療の必要性を減らすのに有益である可能性があります。
キーポイント
・ランニングはOAのリスクや痛みを増加させるリスクにはなりません。
・ランニングは膝OAの侵襲的な治療を減らすことができます。
これらの結果は膝OAに対してランニングが有害であるどころか有益であることを示唆しています。ただし膝OA患者は高齢であることが多く、ランニングが適応できないこともあります。それでもこれらは負荷が悪いものではなく、むしろ良いことであることを部分的に支持する証拠でもあります。OA患者の中でも比較的若年(60歳前後)の患者ではランニングのような運動をしない理由はさらにありません。患者がランニングによって強い痛みを引き起こしてしまう場合には少なくとも初期の治療では適応されませんが、ランニング後の痛みの改善~軽度の痛みの範囲であればランニングを適応することができます。
このような骨格筋系疾患を持っている患者は運動のし始めに痛みが生じることがありますが、運動を続けることで痛みが消失していく例もあります。医療従事者は患者の短期的な痛みの反応から運動をするしないを決めるべきではなく、長期的に時間をかけて適切な運動量を決めていく必要があります。

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参考文献

[1]Lo, G. H., Driban, J. B., Kriska, A. M., McAlindon, T. E., Souza, R. B., Petersen, N. J., Storti, K. L., Eaton, C. B., Hochberg, M. C., Jackson, R. D., Kent Kwoh, C., Nevitt, M. C., & Suarez-Almazor, M. E. (2017). Is There an Association Between a History of Running and Symptomatic Knee Osteoarthritis? A Cross-Sectional Study From the Osteoarthritis Initiative.
[2]Timmins, K. A., Leech, R. D., Batt, M. E., & Edwards, K. L. (2017). Running and Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis.

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