長胸神経の解剖学(ちょっと深堀りしてみた)

白タム(学生)
よろしくお願いします。
(え、だっ、誰...?)

前回の復習

 

ゆーさく
まずは、前回の基礎的な部分の復習からしましょう。
長胸神経の英語名を覚えていますか?

白タム(学生)
英語名は"Long Thoracic Nerve"で
LTNって呼ばれることが多いんですよね。

ゆーさく
そうですね。
他にも"External Respiratory Nerve of Bell"や"Posterior Thoracic Nerve"と呼ばれることもあります。
では、何番目の神経根に由来するかも覚えていますか?

白タム(学生)
C5、C6、C7でしたよね。

ゆーさく
そのとおりです!
今日は、少しだけ個体差と走行の話を追加でしようかなと思います。

白タム(学生)
わかりました。

長胸神経の個体差

白タム(学生)
ところで、個体差ってなんです?

ゆーさく
今、この会話の中で扱う個体差というのは「統計的な意味で正常からずれている状態」です。
解剖学用語では、破格anomaly や 変異variation と呼ばれます。
この記事内でも、次からは "variation" と呼ぶことにします。

白タム(学生)
なるほど。
では、多くの解剖学書に記載されているのが「統計的な意味で正常」なものですか?

ゆーさく
そうなりますね。
最も多いものが「統計的な意味で正常」と理解してもらうと分かりやすいと思います。

白タム(学生)
ふむふむ。

ゆーさく
では本題に入りますが、長胸神経にもvariationは報告されています。
通常、C5、C6、C7の神経根から形成される長胸神経ですが人口の約10%では『C8』からも発生するとされています。

白タム(学生)
そんなこともあるんですね。

そうなんです。
他にも、長胸神経は主にC6・C7で構成されておりC5からの枝が明確に存在しない場合もあります[Shilal P. 2015]。

少し詳しい走行

 

ゆーさく
次は、少しだけ詳しく走行の話をしましょうか。
前回も走行の勉強をしたと思いますが覚えてますか?

白タム(学生)
はい。
神経幹を形成する前に神経根の後ろを下っていくんですよね。
この時に、中斜角筋を貫通することもあるとか。

ゆーさく
そうですね。
では、具体的にどこを下っていくのでしょうか?

白タム(学生)
え、えっと...わかりませんね。

ゆーさく
ですよね。
まず、椎間孔から出た長胸神経は"Cervicoaxillary canal"と呼ばれる、前方を鎖骨、後方を肩甲骨、内側を第1肋骨に囲まれた空間を通過して下行します。

白タム(学生)
ふむふむ。

ゆーさく
その後は、前鋸筋に沿って胸郭を約22〜24cmほど下行します。
結構長いって話は前にしましたよね。

白タム(学生)
その長さも関係して障害されやすいんですよね。

ゆーさく
ですです。
ついでに言っておくと、胸郭を下行する際に長胸神経は中腋窩線と後腋窩線の間を走行すると言われています[Bertelli JA. 2005]。

白タム(学生)
なるほど。
勉強になりました。
まとめ

・C5、C6、C7だけでなくC8からも供給されている場合がある

 

・C5からの供給が認められない場合もある

・Cervicoaxillary canalを通る

・中腋窩線と後腋窩線の中央を約22〜24cm下行する

参考文献

 

Shilal P, Sarda RK, Chhetri K, Lama P, Tamang BK. Aberrant Dual Origin of the Dorsal Scapular Nerve and Its Communication with Long Thoracic Nerve: An Unusual Variation of the Brachial Plexus. J Clin Diagn Res. 2015;9(6):AD01-AD2. doi:10.7860/JCDR/2015/13620.6027

Bertelli JA, Ghizoni MF. Long thoracic nerve: anatomy and functional assessment. J Bone Joint Surg Am. 2005 May;87(5):993-8. doi: 10.2106/JBJS.D.02383. PMID: 15866961.

Twitterでフォローしよう