棘下筋の外転作用[1-15]

ローテーターカフ(Rotator Cuff)は棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋の4つの筋肉構成されており、上腕骨を名前の通り袖口(cuff)のように取り囲んでいます(図1)。ローテーターカフ全体としての作用は上腕骨頭を関節窩に引き当て維持し肩関節に安定性を与えています。

[図1:上腕骨を取り囲む棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋]

ローテーターカフは安定化作用以外にも、個別に上腕骨に対する作用を持っています。
教科書的には棘上筋は上腕骨の外転・(外旋)、棘下筋と小円筋は上腕骨の外旋・水平伸展、肩甲下筋は上腕骨の内旋・水平屈曲内転と表記されています。

最近ではより詳細な解剖学的研究が増えてきており、新たな役割や従来の考えからの変化が見られます。例えば棘上筋が従来思われていたよりも小さく(内側から外側へ平均6.9mm、前方から後方へ平均12.6mm)、より前方に停止する(図2)という報告があります(解剖方法の違いに由来すると思われる)[1]。

[図2:一般的な教科書に記載されている停止部と最近の研究に基づく停止部]

この報告は従来腱板断裂が棘上筋に生じやすいという報告に疑問を生じさせ従来の報告以上に棘下筋腱断裂の割合が多い可能性を示唆しています。
また従来の棘上筋が大結節上面全体に付着する解剖学書のイメージから想定されるよりも棘上筋は前方にあることから、しばしば記載されている棘上筋の外旋作用は中間位ではほとんどなく、また稀に記載される棘上筋の内旋作用も場合によって(特に上腕骨内旋位)はあることが考えられます。

さらに棘上筋は前部繊維(Anterior part)と後部繊維(Posterior part)に分けられ(図3)それぞれ作用が異なります。

[図3:棘上筋の前部繊維(Anterior part)と後部繊維(Posterior part)]

棘上筋の収縮力の大部分を担うのは、筋サイズが大きく、紡錘状の構造を持ち、筋内に腱を持つ前部繊維であると考えられ、外転と上腕骨頭の上方移動制動作用を担っています。後部繊維は筋内に腱を持たない小さな半羽状筋(unipennate muscle)で、その構造は大きな収縮荷重の発生には適していないと思われます[2]。
この解釈は腱板断裂が存在しても、肩が外転できる症例を説明できるかもしれません。

このような研究は棘上筋だけでなく、他のローテーターカフを構成される筋についても進んでいます。
今回は棘下筋について紹介します。

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