こんな考えしてないですか?

「痛みの原因を○○と考えて介入したら痛みが軽減したので、この痛みの原因は○○だ」

医療従事者となると、臨床推論というプロセスが必要になってきます。臨床は常に正解が分からない不確実性が前提となる行為なので、この臨床推論のスキルが臨床をより良いものにするために必要です。

あるいはより悪いものにしないために必要です。

臨床で、なんとなく理屈はあるだろうけど、それってどうなの?という介入を見ることってありませんか?

実際客観的に見れば全ての人がそのような介入をしているでしょうし、なんなら客観的に見ている人がおかしな見方をしている可能性もあります。

完璧な答えが見つかってないので当たり前と言えば当たり前の話です。でも、明らかにおかしいだろうってものもありますよね。でも本人はそのおかしさに気づかないのです。気付くためには批判的スキルや論理的スキルが必要になってきます。

今回は論理的思考に関する1歩目として「因果関係が成立するための3条件」です。

因果関係が成立するための3条件

以前Twitterでこのようなツイートを見かけました。

「痛みの原因を○○と考えて介入したら痛みが軽減したので、この痛みの原因は○○だ」まずはこの思考過程を変えることからスタート。

まさに。

▶︎第3の因子の関与を否定できない
▶︎目的に介入できたか分からない

言われてみれば当たり前のことだけど、言われないと気付きにくいことですで、

これを理解するために「因果関係が成立するための3条件」が利用できます。

因果関係が成立するために3条件
①原因と結果が共変関係にある
②時間的先行する
③第3の因子が存在しない
臨床でもよくみかける具体例をみてみましょう。
①姿勢が悪い+腰痛持ちの人がいた
②姿勢にアプローチ
③腰痛が改善した
因果関係の3条件に当てはめてみます。
❶原因(と考えたもの)[姿勢]と結果[腰痛]は、姿勢にアプローチして変わったから共変関係にある
❷姿勢にアプローチした後に腰痛が改善したから時間的先行する(結果より先に原因が変わる)
そして厄介なのが
❸時間経過やプラセボ、生物学的治癒能力、姿勢へのアプローチ手段が姿勢とか関係なく鎮痛効果を持つなど第3の因子が排除できてない
よって因果関係は成立しません。そのため
問:姿勢は腰痛の原因が
答:分からない
となります。

上記の例では他の要素が関与していることが十分考えられるため、「分からない」となります。
だからこそ統計的な手法が重宝されますし、経験則ばかりの臨床は誤った認識を増やしてしまうことになります。
しかし第三の因子の排除は完全にはできないので、こう考えてしまうと、極論全ての現象の答えは正確には「分からない」となってしまいます。だから科学では「確からしい」という言葉を使ったりますよね。
「確か」まではいかないけれど、「確からしい」と。
つまり、程度の問題です。経験的に臨床で見られた現象よりも、極力他の因子を避けた状態での厳密性の高い研究の方が「確からしい」よねと。
ただ、研究を嫌悪する人がいるのも事実でその気持ちも分かります。なぜなら科学は真理を見つけるための物ではなくて、再現性(同一条件のもとでは同一の結果が得られること)を見つけるものだからです。
多くの人が当てはまることを科学は確からしい物とし、反対に言えばかなり確率の低い現象、一回性(ある事柄が一回しか起こらず、再現できないこと)については検証できないからです。
あるいは、具体化できないこと、実証性(問題に対する仮説が観察・実験等により検討できること)がないことに関しても同様に科学の苦手とする分野で、特に意識に関することなんてのは難儀する問題です。
つまり臨床でおきた現象が、科学的には再現できないと言ってもその現象は否定される訳ではありません。
しかし問題なのは、その1回性というのは1回性を起こした本人でさえ、反復して同じ現象を起こせるとは限らないので、その現象が実際に起きていたとして、臨床で反復してその行為をする正当性というのは弱くなります。
もちろん、科学的に得られた再現性のある手法というのにも、弱みがあって、実証されたのと同じ条件下でしか効果性が担保されてないので、少し状況が変われば介入の効果性が変わる可能性があります。
ということで、何が臨床で使えるか?というのは状況によりかなり変動性の高いもので、これが臨床の難しさの要因となっていることが考えられますが、とりあえずまず第一歩としては最初に挙げたように「痛みの原因を○○と考えて介入したら痛みが軽減したので、この痛みの原因は○○だ」という結論の導き方は論理的ではない可能性がありますよってことですね。
実際過去の多くの理論(カイロ、オステなどなど)が、経験的には効果あるように見えても研究されると明らかな効果性が見つからなかったりするのは、経験から「痛みの原因を○○と考えて介入したら痛みが軽減したので、この痛みの原因は○○だ」と導いてしまうからというのがあり得るように思います。

Twitterでフォローしよう