椎間板変性と腰痛
腰痛と画像所見の関係は従来考えられていたほど強くないため、臨床における画像検査の価値は限られており、しばしば過大評価されています。
BrinjikjiらのMRIを用いた調査では50歳以下の成人において腰痛がないにも関わらず椎間板変性が見られるのは34.4%で、腰痛がある人では57.4%に椎間板変性が見られました[2]。
椎間板変性と腰痛にはある程度の相関関係がありますが、どの椎間板変性が腰痛に寄与しているのか判断することはできないため腰痛患者に画像検査を行って変性が見つかっても因果関係があるかは分かりません。
とはいえ椎間板変性が腰痛に寄与していることを考えると椎間板を健康に保ちたいです。
喫煙と椎間板変性
Jacksonらは喫煙と椎間板変性の関係をまとめています[1]。
椎間板変性の原因として、椎間板への栄養供給不足、異常な機械的負荷、遺伝的要因などが検討されていますが、多くの研究で、現在または過去にタバコを吸っていた人は、椎間板の一般的な変性の徴候が増加する証拠が見つかっているため喫煙は椎間板への栄養供給不足を引き起こす可能性があります。
喫煙による椎間板変性のメカニズムとして最も広く受け入れられている仮説は、一酸化炭素による無酸素状態や喫煙による血管障害が、椎間板の細胞の栄養不良を引き起こすというものです。
これまでの研究でタバコの煙には、血液中の栄養供給を変化させ、椎間板周辺部の栄養を減少させる可能性のある成分が多く含まれていることが明らかになってきました。
例えばタバコの煙に含まれるタールは動脈血の酸素濃度を低下させ、ニコチンは椎体の血流を低下させます。さらに最も重要なこととして喫煙により血中の一酸化炭素濃度が上昇することで酸素濃度の低下をもたらします。
椎間板にはほとんど血管が存在しないため栄養供給の減少による影響が他に組織よりも顕著に現れると考えられます。
このことから椎間板を健康に保つためには禁煙が一つのアプローチとなります。
現在喫煙している人とかつて喫煙していた人の両方が、喫煙したことがない人と比べて腰痛の有病率と発生率が高い報告があることも禁煙の腰痛における意義を強調します。
[2]Brinjikji, W., Diehn, F. E., Jarvik, J. G., Carr, C. M., Kallmes, D. F., Murad, M. H., & Luetmer, P. H. (2015). MRI Findings of Disc Degeneration are More Prevalent in Adults with Low Back Pain than in Asymptomatic Controls: A Systematic Review and Meta-Analysis. AJNR. American journal of neuroradiology, 36(12), 2394–2399. https://doi.org/10.3174/ajnr.A4498