バイアスとは?

タム
今日は"バイアス"の基礎を学びましょうか。

白タム(学生)
よろしくお願いします。

タム
より詳しいことは後から説明するとして、端的に言えばバイアスは「先入観/傾向/偏見」のことを意味していて、情報を処理する上で厄介なものです。

タム
バイアスのイメージは傾きです。
バイアス(Bias)は「切る(cut)」を意味する語から派生した言葉で、切ると傾いたり斜めになったりすることから先入観/傾向/偏見という意味が生まれています。

白タム(学生)
へー

タム
より専門的(疫学的)にみるのならバイアスは「サンプルパラメータ推定値が母集団の値から系統的に逸脱していること」(A systematic deviation of the sample parameter estimate from the population value.)という意味らしいです[Kamper SJ et al.,2018]。

白タム(学生)
????????????

タム
もっと簡単にいうのなら、「目の前の情報が、実際に起こっていることに対して誤った印象を与えること」です。

白タム(学生)
あー、なるほど

タム
臨床や臨床の学習ではバイアスによって、効果を過大評価する傾向があります。
例えば、治療法が実際よりも効果的に見えたり、検査が実際よりも正確に見えたり、予後因子が結果をより強く予測したりします。

白タム(学生)
そうなるとバイアスって臨床にかなり大きな影響を与えているんですね。

タム
そうなんです。だからこんなバイアスがあるってことを知っておくと、自分が現在こんなバイアスにかかっているってことが理解しやすくなるので、知識は重要です。

白タム(学生)
バイアスって具体的にどんなのがあるんですか?

タム
一応種類自体はめちゃくちゃあります(下図参照)。
Kamperらはバイアスの中から4つのバイアスを説明しています[Kamper SJ et al.,2018]。
[188種類の認知バイアス一覧]

4つのバイアス

選択バイアス(Selection Bias)

タム
選択バイアスは研究の対象者を決める時点で生じるバイアスです。
Kamperらは腰痛を例に、「運動介入から最も恩恵を受けると考える患者に対して運動介入を選択することは想像に難くなく、実際にそうなるだろう」と説明しています。これを解決するために、介入を受ける群を分ける際にランダム化(Randomized)が必要です。

白タム(学生)
なるほど

タム
実際は選択バイアスもいくつも種類があります。
他の例を挙げると、より専門的な医療施設で研究が行われた場合は、平均的にその疾患を持つ患者よりも重篤で難治な例が集められることになる可能性があります。
これをReferral Filter Biasと言います。

白タム(学生)
収集方法でも、比較するグループを分けるときでもバイアスが生じ得るんですね。

Performance Bias

タム
Performance Biasは研究者や参加者の介入に関する知識が原因で発生するバイアスです。
Kamperらは「どちらかの治療法が優れているという信念を持っており、そのために研究結果が特定の方向に向かうことを望んでいるのです。」と説明しています。
このような信念によって介入が積極的に行われないかもしれませんし、グループに応じて参加者を異なる方法で扱うかもしれません。
これは盲検化によって解決できますが、盲検化が困難な介入方法では生じてしまうバイアスです。
徒手療法なんかは盲検化できないことがよくあります。
この場合は同様に信頼性があり価値があるように見えるようにすることで低減できます。

白タム(学生)
あー、想像できますね。意図してるかにかかわらず無意識に生じてもおかしくなさそうです。

 

検出バイアス(Detection Bias)

タム
評価者が参加者がどの治療を受けたかを知っている場合や、介入した人が評価している婆、無意識のうちに介入群に有利な方法で結果を解釈または採点する可能性があります。
これを検出バイアスと言います。

白タム(学生)
研究だけじゃなくて、臨床でもしょっちゅう生じてそうなバイアスですね。

タム
それはよく見る気がします。
主観的なアウトカムの評価者が非盲検である場合、平均オッズ比が36%誇張されたという報告があります[Hróbjartsson A et al.,2012]。
これは評価者の盲検化(アウトカム評価者は介入を知らされないようにする)によって防ぐことができます。

白タム(学生)
盲検化の重要さがわかりますね。

減少バイアス(Attrition Bias)

タム
どんな研究であっても様々な理由で参加者が途中で離脱してしまうことがあります。
参加者が途中で離脱することで、必ずしもとは言えませんが、特に大人数が離脱した場合には、その参加者が居たグループの特性を変化させる可能性があります。

白タム(学生)
確かに

タム
参加をやめた人と続けた人の違いも臨床的に考慮すべきことが含まれている可能性もあります。

白タム(学生)
悪化して離脱する人が多いとかは臨床的にもちょっとってなりますね。

タム
離脱によってデータが欠損した場合の処理はいくつか方法があります。
例えば、残った参加者で分析する、最後の観測結果を繰り越す、ベースラインを繰り越す、最悪のシナリオで想定する、最良のシナリオで分析するなど...

参考文献

・Kamper SJ. Bias: Linking Evidence With Practice. J Orthop Sports Phys Ther. 2018 Aug;48(8):667-668. doi: 10.2519/jospt.2018.0703. PMID: 30064332.
・Hróbjartsson A, Thomsen AS, Emanuelsson F, Tendal B, Hilden J, Boutron I, Ravaud P, Brorson S. Observer bias in randomised clinical trials with binary outcomes: systematic review of trials with both blinded and non-blinded outcome assessors. BMJ. 2012 Feb 27;344:e1119. doi: 10.1136/bmj.e1119. PMID: 22371859.

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