【変形性関節症】個別に調整された4回のアドバイスは身体活動レベルを向上させられるか?

タム
今回は2021年4月に「Clinical Rehabilitation」に掲載されたこの研究を見てみましょうか。
このジャーナルのIF(インパクトファクター)は2.599で、ランクはQ1です。
オープンアクセスなので無料で読むことができます。
▶︎インパクトファクター(IF:Impact Factor):特定の期間において、ある雑誌に掲載された論文が平均的にどれくらい頻繁に引用されているかを示す尺度で、雑誌の影響を表す指標の一つ
▶︎ランク(Rank):同じ分野の中で、当該ジャーナルのIFが全体の何%以内に入るかを示しています。
(Q1=上位25%、Q2=上位26-50%、Q3=上位51-75%、Q4=上位76–100%)

4回のアドバイスは身体活動レベルを向上させられるか?

タム
膝OAや股OAでは、中等度の身体活動を週に150分、または活発な身体活動を週に75分行うことが推奨されており、これらの目標を満たしていない人は、運動量を増やすことが有効であると考えられていますが、
この痛みや動作の不安感、患者の個人差のある目標など制限がある中で活動量を増やすことは臨床上の課題です。

変形性関節症の人の身体活動を増やす方法についてのガイダンスはほとんどないって書いてありますね。
患者の行動変容を起こすのは確かに難しい印象です。

そうなんです。
「こうした方が良い」とじゃあ「どうすれば達成できるか」には大きな壁がありますね。
この研究では、144人の変形性膝関節症患者(女性102人、平均年齢60.3±8.3歳)が対象となっています。
除外基準は股関節骨折、人工股関節置換術や人工膝関節置換術の既往歴のある患者、半月板損傷、十字靭帯損傷、下肢の神経病理学的疼痛、関節リウマチ、重度の心血管疾患、癌などです。

白タム(学生)
ふむふむ

タム
この研究はRCTなので2つの群に分けて検証しています。
1つはアドバイス群(n=69)です。身体活動について個別にカスタマイズされた1時間のアドバイスセッションを受けました。
もう一つは処方群(n=72)です。個別にカスタマイズされた身体活動のアドバイスと追加の書面を受け取り、6ヵ月間に4回のフォローアップを受けました(下図参照)。

タム
アドバイス例は、ウォーキングやサイクリングなど、自分の好きな活動を30分以上行う、週3回の有酸素運動、日常生活での筋力強化のための活動、例えば、階段を使うこと、椅子から立ち上がるときに足に力を入れることなどです
※RCT(ランダム化比較試験/Randomized controlled trial):介入・治療などを行うこと以外は公平になるように集団を無作為に複数の群に分け、操作の影響・効果を測定し、明らかにするための比較研究です
[クリエイティブコモンズライセンスに基づいて引用]

白タム(学生)
処方箋グループの方が高い効果が出そうな印象がありますね。
結果はどうだったんでしょうか?

タム
アウトカムには身体活動、フィットネス、6分間の歩行テスト後の痛み、関節関連の症状と生活の質に関する複数の項目がありました。
その中で歩行後の痛みは処方群でVASが31±22から18±23に大幅に減少しました(下図参照)が、群間で他の違いはありませんでした。
[クリエイティブコモンズライセンスに基づいて引用]

白タム(学生)
あまり違いがなかったんですね。

タム
こうなると、「上記の条件」では思われているほど複数のセッションが必要ない可能性が出てきます。(セッションを増やすことが効果ないという意味ではないです)
最近では過剰な治療(Over testing)が問題視されることがありますが、この研究結果は過剰な治療を回避するために活用できる可能性があります。

白タム(学生)
たしかに。

タム
一応注意したいのは、効果がないという研究ではないことです。
差がなかったというだけで、どちらも同様に効果的である可能性があります。
ただし、ここではプラセボの対称群はないので、はっきりと効果があるとは言えませんけどね。

まとめ

【Patient】
144人の変形性膝関節症患者(女性102人、平均年齢60.3±8.3歳)
除外基準:股関節骨折、人工股関節置換術や人工膝関節置換術の既往歴のある患者、半月板損傷、十字靭帯損傷、下肢の神経病理学的疼痛、関節リウマチ、重度の心血管疾患、癌など。
【Intervention】
アドバイス群(n=69)は、身体活動について個別にカスタマイズされた1時間のアドバイスセッションを受けた。
処方群(n=72)は、個別にカスタマイズされた身体活動のアドバイスと追加の書面を受け取り、6ヵ月間に4回のフォローアップを受けた。
【Outcomes】
歩行後の痛みは処方群でVASが31±22から18±23に大幅に減少した。群間で他の違いはなかった。

2つの介入効果にほとんど違いは見られませんでしたが、どちらも効果的である可能性があります。

参考文献

・Bendrik R, Kallings LV, Bröms K, Kunanusornchai W, Emtner M. Physical activity on prescription in patients with hip or knee osteoarthritis: A randomized controlled trial. Clin Rehabil. 2021 Apr 11:2692155211008807. doi: 10.1177/02692155211008807. Epub ahead of print. PMID: 33843297.

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