半月板の基礎解剖

膝関節の半月板は脛骨からの延長であり、脛骨プラトーの関節面を深くし、大腿骨を適応を助けます。
半月板の主な作用は①大腿骨顆と脛骨プラトーの適応②膝関節を滑らかに動かす③固有感覚④荷重の分散・吸収⑤関節の安定化⑥栄養の拡散です。
半月板は内側半月板(MM:medial meniscus)と外側半月板(LM:lateral meniscus)に分けられます。

内側半月板

 

上図をみてわかる様に内側半月板は前方より後方の方が広い面積を持ちます。

半月板は前角(Anterior horn)、前節(Anterior segment、 中節(Middle segment)、 後節(Posterior segment)、後角(Posterior horn)に分けられます。

内側半月板の前角は、前十字靭帯 (ACL:Anterior Cruciate Ligament) の前方にある前顆間窩(Anterior intercondylar fossa)の領域(Anterior intercondylar area)で、脛骨プラトーに付着しています。

また、内側半月板前角の後部線維は外側半月板の前角と膝横靭帯(Transverse ligament of knee)を介して連結します。

内側半月後角は外側半月と後十字靭帯 (PCL:Posterior cruciate ligament) の間で後顆間窩(posterior intercondylar fossa)に付着しています。
そして内側半月板の周縁部全長は関節包に付着しています。
半月板下縁で脛骨に連結する組織は冠状靭帯(coronary ligament of the knee)と呼ばれます。

外側半月板

下図をみると外側半月板は内側半月板よりも円形だと分かります。

脛骨プラトー関節面の大部分をこの外側半月板が占めます。
外側半月板の前角は内側半月板やACL付着部よりも後方にあり、顆間隆起の前方で脛骨に付着します。
部分的にはACLとも融合しています。外側半月板の後角は、内側半月板の後角の前方で脛骨の顆間隆起の後方に付着しています。

前半月大腿靭帯 (Humphrey靭帯※1)と後半月大腿靱帯(Wrisberg靭帯※2)は外側半月板の後角から大腿骨内川顆へ走行し、PCLの前方または後方を通ります。
※1…aMFL:anterior meniscofemoral ligament (ligament of Humphrey)
※2…pMFL:posterior meniscofemoral ligament (ligament of Wrisberg)

半月板の検査

圧痛

外側半月板は外側脛骨高原(Tibial plateau)の上端で触ることができます。
外側側副靭帯(LCL:Lateral collateral ligament)は関節間隙外側に沿って触診(触擦)すると圧痛がある場合は、外側半月板断裂、LCL損傷、外側コンパートメントの変形性関節症の可能性があります。

しかし厄介なことに大腿二頭筋や腸脛靭帯が、膝関節を横切ってそれぞれ膝関節外側を走行しているため腸脛靭帯炎症(ITBFS:Iliotibial band friction syndrome)などでも圧痛を感じることがあり触診(触擦)の際は区別するように注意する必要があります。

内側/外側半月板上の局所的な圧痛は、半月板断裂のある人によく見られ、半月板病変を検出する感度が55%~85%、特異度が29.4%~67%であると報告されています[10][11][12]。

補足

・感度:疾患を持った人のうち、その所見がある人の割合
感度が高いと偽陰性が少なく、陰性の時に除外診断に有用です。
・特異度:疾患を持たない人でその所見がない人の割合
特異度が高いと偽陽性が少なく、陽性の時に確定診断に有用です。

マックマレーテスト(McMurray test)

患者は仰臥位になります。検者はまず、片手で患者の足を掴み、もう片方の手で膝を安定させながら、膝を完全に屈曲させる。次に脛骨を内旋させながら伸展します。膝を再度屈曲し脛骨を外旋させながら伸展します
痛みの再現とクリック感で陽性となります。内旋時の痛みやクリック感は外側半月板の損傷を示唆し、外旋時の痛みやクリック感は内側半月板の損傷を示唆しています。
このテストの感度は16~58%、特異度は77~98%と報告されています[10][11][12][13]。

アプレーテスト(Apley grind test)

患者は伏臥位になります。膝を90度屈曲させた状態で下腿を上方に牽引し外旋/内旋します。
牽引でより痛みが出ると、半月板への圧縮負荷が減少するため、半月板が膝の痛みの原因である可能性が低くなります。
次に膝を90°屈曲させた状態で外旋しながら膝に下方の力を加えます。
これで痛みが増すと陽性となり、内側半月板の損傷が疑われます。
この一連の誘発操作を内旋で繰り返し、陽性となり外側半月板の損傷が疑われます。
感度は13~16%、特異度は80~90%と報告されています[10][11]。

バウンスホームテスト(Bounce home test)

患者は仰臥位になり、検者は患側の足を持ち上げ、膝を受動的に完全に伸展させます。
通常は完全伸展時に「跳ね返る」はずです。

伸展ができなかったり抵抗がある場合は陽性となり、半月板断裂または伸展を機械的に阻害するその他の関節内病変を疑う必要があります。

Finochietto test/Jump sign

Finochietto test/Jump signは半月板後角断裂の検査法です。
患者は仰臥位で膝を130~140度屈曲させ、前方引き出しテストやラックマンテストと同様に、脛骨近位部に前方への並進力を加えます。
断裂した半月板後角が変位したときに、検者が「ジャンプ」を感じれば陽性となります。

Boehler test

検者は膝を完全伸展した状態で、内側半月板を圧迫するための外反、外側半月板を圧迫するための内反します。
圧迫された側に痛みが生じた場合に陽性となり、特に半月板の前方から中央部にかけての半月板損傷が示唆されます。

テッサリーテスト(Thessaly test)

患者は片脚に全体重をかけて検者の手を支えにして、膝を20度屈曲させ膝と体を3回内旋外旋させます。関節裂隙に痛みがあれば陽性となります。
この検査は患側よりも先に健側の脚で最初に行い患者に検査法を教育する必要があります。

内側半月板で感度89%、特異度97%、外側半月板で感度 92%、特異度96%です[14]。
膝の屈曲を5度にすると感度と特異度が低下します。

 

Childress test/Duck Walk

患者はしゃがみ膝を完全に屈曲したまま前方に移動して「ダックウォーク」を行ってもらいます。関節裂隙に痛みが再現されると陽性となります[15]。

 

触診(触擦)でのポイント

関節間隙外側は脚を「4の字」にすることで裂隙が拡大し容易に触れやすくなります。またこの肢位では腸脛靭帯が弛緩することで外側側副靭帯(LCL:Lateral collateral ligament)が触れやすくなります。

膝蓋骨跳動(Patellar ballottement)

関節裂隙を触診(触擦)する際に膝関節前方の膝蓋靭帯付近のくぼみがない場合は関節水腫の存在することを示唆しています。代表的な関節水腫の検査法は膝蓋骨跳動(Patellar ballottement)で、片方の手で膝蓋上嚢を近位から遠位に搾るように圧迫し、もう片方の手で関節の下面から膝蓋骨の下まで圧迫し、その後、指を使って膝蓋骨を押し下げると、下にある滲出液の上で跳ねているように感じることができます[1]。

 

また別の方法でも関節水腫を示唆する方法はいくつかあります。
膝伸展位で膝蓋骨の内側に沿って手を近位に近づけていくと滲出液が膝蓋上嚢に入っていきます。
反対に膝蓋骨の外側に沿って遠位方向に手をスライドさせると、滲出液が膝蓋上嚢から押し出すことができます。
また膝蓋骨の外側からの圧迫によって、膝蓋骨の内側に膨らみを見ることができます。

可動域検査

膝蓋骨は膝関節の可動域と大きく関連しています。
正常な膝関節伸展可動域は0度~10度で屈曲可動域は130度~150度です。
変形性関節症がある場合には、可動途中でで膝蓋大腿関節部のきしみ感や捻髪音が観察されることが多くあります。。
早期屈伸時に 捻髪音や痛みがある場合にはより遠位の膝蓋骨疾患を示唆します。
能動的可動域と受動的可動域は関節内病変で制限されますが、能動的可動域のみ制限されたり痛みを感じる場合は関節外の軟部組織の障害と関連している可能性があります。

不安定性

膝関節の不安定性に関連して半月板病変と靭帯どちらも評価する必要があります。
膝関節の内反と外反ストレステストは半月板と靭帯どちらも評価する検査法です。
内反または外反した際に圧迫される側の痛みは半月板の損傷を示唆しており、逆に、弛緩する側の痛みは靭帯の病変を示唆しています。
つまり内反ストレスでの膝内側の痛みと外反ストレスでの膝外側の痛みは、半月板断裂を示唆しています。

内側側副靱帯(MCL:Medial collateral ligament)は、患者を仰向けにして、膝を30度屈曲した状態と完全伸展した状態で、外反ストレスをかけます。外側側副靱帯(LCL:Lateral collateral ligament)は同様に内反ストレスをかけます。
30度屈曲位で関節が弛緩した場合にはMCLまたはLCLの単独損傷を示唆し、伸展位で弛緩が認められる場合は、MCLまたはLCLだけでなく片方または両方の十字靭帯が損傷している可能性があります[2]。

Anterior rotation drawer test

半月板や内外側側副靱帯だけでなく、後外側複合体(PLC:posterolateral complex)と後外側複合体(PMC:Posteromedial complex)も安定性に関与します。
後斜走靱帯(POL:Posterior oblique ligament)と後内側複合体の関節包は前内側回旋(大腿骨遠位部に対する内側脛骨高原の前方亜脱臼を伴う外旋)を制動します[3]。
後斜走靱帯の単独傷害はまれで、MCLや半月板、十字靭帯の損傷に併発します。
反対に後外側複合体(PLC:posterolateral complex)は後外側回旋を制動します。

Anterior rotation drawer testでは膝関節を90度屈曲し、ニュートラルポジションの脛骨に前方向の力を加えます。次に脛骨を15度内旋させ、最後に脛骨を30度外旋させます。
ニュートラルポジションで脛骨高原の亜脱臼が増加しそれが外旋でより増加し内旋で減少すると、前内側の不安定性を示します。
ニュートラルポジションでの脛骨高原の前方亜脱臼が増加し、内旋すると増大し、外旋すると減少する場合は後外側の不安定性を示しています。

ダイヤルテスト(Dial test)

ダイヤルテストは、後外側の不安定性を評価する検査法で、仰臥位でも伏臥位でも行うことができます。
検者は片手で患者の両足をつかみ、膝を30度屈曲し状態で同時に下腿を外旋させ、次に膝を90°曲げた状態で、同時に下腿を外旋させます。
患側が健側と比較して15度以上外線すると陽性となります。

 

膝を30度屈曲した状態で妖精の場合はPLC単独損傷が疑われ、膝関節屈曲30度と90度の両方で陽性の場合は、PLCとPCL損傷が疑われます。

前方引き出しテスト(Anterior drawer test)

ACLの代表的な検査法にはラックマンテスト(Lachman test)、前方引き出しテスト(Anterior drawer test)、ピボットシフトテスト(Pivot shift test)があります。
この中で最も感度と特異度が高いのはラックマンテスト(Lachman test)であるため基本的には臨床ではラックマンテスト(Lachman test)を使用することが望ましいです。
ここでは前方引き出しテスト(Anterior drawer test)から紹介します。

前方引き出しテスト(Anterior drawer test)は患者を仰臥位にして、股関節を45度、膝を90度屈曲します。
検者は両手を脛骨近位部に置き、拇指を脛骨前部高原に当て、残りの指は後方に当てます。この時患者の足の上に座ることで下肢を安定させることができます。次に大腿骨に対して近位脛骨部を前方へ引きます。
健側よりも移動量が大きい場合に陽性となります。
感度は22.2%~95.24%、特異度は97%以上と報告されています[4][5][6][7]。
前方引き出しテスト(Anterior drawer test)は特異度は高いですが、感度の報告はばらつきが大きく前方引き出しテスト(Anterior drawer test)が陰性だったとしてもACL断裂を除外することはできません。

 

 

ラックマンテスト(Lachman test)

ラックマンテスト(Lachman test)では患者は仰臥位になり、膝関節を20~30度屈曲します。
片方の手で大腿骨を安定させた状態で、もう片方の手で近位脛骨を前方に引きます。
健側の膝と比較して、エンドフィールの移動量が多い場合は陽性となります。
ラックマンテスト(Lachman test)の感度は80%~99%、特異度は95%です[4][5][6][7]。

ピボットシフトテスト(Pivot shift test)

検者は片手で患者の足首を持ち、膝を完全に伸展させてわずかに内旋させた状態で下肢を持ち上げます。その後、検者は膝を受動的に屈曲させながら、膝関節に外反応力を加えていきます。
屈曲約30度のところで、脛骨高原が正常な位置に戻ります。
このテストの感度は24~98.4%、特異度は98%以上と報告されており、前方引き出しテスト同様に特異度は高いですが、感度の報告にはばらつきがあり、陽性であった場合にはACL損傷の可能性が高いですが、陰性の場合に除外できるわけではありません[4][6][8]。

Posterior sag sign

PCL損傷の代表的な検査法にはPosterior sag sign、後方引き出しテスト(Posterior drawer test)、Quadriceps active test、Dial testがあります。

Posterior sag signでは患者は仰臥位になり、股関節を45度、膝関節を90度屈曲させます。
PCL損傷がない場合は内側脛骨高原がが大腿骨内顆の約1cm前方に位置しますがPCLが断裂している場合は脛骨高原は後方に移動し、段差がなくなります。このテストの
感度は79%、特異度は100%と報告されています[9]。

後方引き出しテスト(Posterior drawer test)

後方引き出しテスト(Posterior drawer test)はPosterior sag signの肢位から連続して行うことができます。
患者は仰臥位になり、股関節を45度、膝関節を90度屈曲させます。
この肢位で脛骨近位部に後方への並進力を加えると後方引き出しテスト(Posterior drawer test)となります。
健側と比較して脛骨の移動量が増加している場合に陽性となります。

Quadriceps active test

患者は仰臥位になり股関節を45度、膝関節を90度屈曲させます。
患者は検者の抵抗に対して膝を伸展します。PCLが断裂している場合、大腿四頭筋の収縮により脛骨高原が2mm以上前方に移動します。
感度は53%、特異度は94%と報告されています[9]。

 

 

 

 

参考文献
[1]Schraeder, T. L., Terek, R. M., & Smith, C. C. (2010). Clinical evaluation of the knee. The New England journal of medicine, 363(4), e5. https://doi.org/10.1056/NEJMvcm0803821
[2]Malanga, G. A., Andrus, S., Nadler, S. F., & McLean, J. (2003). Physical examination of the knee: a review of the original test description and scientific validity of common orthopedic tests. Archives of physical medicine and rehabilitation84(4), 592–603. https://doi.org/10.1053/apmr.2003.50026
[3]D'Ambrosi, R., Corona, K., Guerra, G., Cerciello, S., Ursino, C., Ursino, N., & Hantes, M. (2021). Posterior oblique ligament of the knee: state of the art. EFORT open reviews6(5), 364–371. https://doi.org/10.1302/2058-5241.6.200127
[4]Katz, J. W., & Fingeroth, R. J. (1986). The diagnostic accuracy of ruptures of the anterior cruciate ligament comparing the Lachman test, the anterior drawer sign, and the pivot shift test in acute and chronic knee injuries. The American journal of sports medicine14(1), 88–91. https://doi.org/10.1177/036354658601400115
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[6]Jonsson, T., Althoff, B., Peterson, L., & Renström, P. (1982). Clinical diagnosis of ruptures of the anterior cruciate ligament: a comparative study of the Lachman test and the anterior drawer sign. The American journal of sports medicine10(2), 100–102. https://doi.org/10.1177/036354658201000207
[7]Donaldson, W. F., 3rd, Warren, R. F., & Wickiewicz, T. (1985). A comparison of acute anterior cruciate ligament examinations. Initial versus examination under anesthesia. The American journal of sports medicine13(1), 5–10. https://doi.org/10.1177/036354658501300102
[8]Benjaminse, A., Gokeler, A., & van der Schans, C. P. (2006). Clinical diagnosis of an anterior cruciate ligament rupture: a meta-analysis. The Journal of orthopaedic and sports physical therapy36(5), 267–288. https://doi.org/10.2519/jospt.2006.2011
[9]Rubinstein, R. A., Jr, Shelbourne, K. D., McCarroll, J. R., VanMeter, C. D., & Rettig, A. C. (1994). The accuracy of the clinical examination in the setting of posterior cruciate ligament injuries. The American journal of sports medicine, 22(4), 550–557. https://doi.org/10.1177/036354659402200419
[10]Anderson, A. F., & Lipscomb, A. B. (1986). Clinical diagnosis of meniscal tears. Description of a new manipulative test. The American journal of sports medicine, 14(4), 291–293. https://doi.org/10.1177/036354658601400408
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[12]Kurosaka, M., Yagi, M., Yoshiya, S., Muratsu, H., & Mizuno, K. (1999). Efficacy of the axially loaded pivot shift test for the diagnosis of a meniscal tear. International orthopaedics, 23(5), 271–274. https://doi.org/10.1007/s002640050369
[13]Evans, P. J., Bell, G. D., & Frank, C. (1993). Prospective evaluation of the McMurray test. The American journal of sports medicine21(4), 604–608. https://doi.org/10.1177/036354659302100420
[14]Karachalios, T., Hantes, M., Zibis, A. H., Zachos, V., Karantanas, A. H., & Malizos, K. N. (2005). Diagnostic accuracy of a new clinical test (the Thessaly test) for early detection of meniscal tears. The Journal of bone and joint surgery. American volume87(5), 955–962. https://doi.org/10.2106/JBJS.D.02338
[15]Shrier, I., Boudier-Revéret, M., & Fahmy, K. (2010). Understanding the different physical examination tests for suspected meniscal tears. Current sports medicine reports9(5), 284–289. https://doi.org/10.1249/JSR.0b013e3181f2727e

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