今回は疼痛誘発テストを考えていきます。

いわゆる骨格筋痛をみる時に疼痛誘発テストを行うことは多いと思います。

毎日の様に行っています。

今回考えていきたいのは疼痛誘発テストであまり考慮されない「0」についてです。

疼痛誘発テストの「0」

何らかの疼痛誘発テストを行うときはNRS(Numerical Rating Scale)※1の様な疼痛強度の指標が用いられることが多いです。
※1…NRSは感じている痛みの強さを0から10の11段階で評価します。

0はもちろん「痛みなし」ですね。
<では、実験してみましょう。>

軽く腕を摘みますね。(かなり弱く)
これはNRSで幾つですか?

「0」です。

もう少し強くしますね。(少し強くする)
これはどうですか?

これも「0」ですね。

もう少し強くしますね。(少し強くする)
これはどうですか?

ん〜。これは「1」かなー。

最後、もう少しだけ強くしますね。(少し強くする)
これはどうでしょう?

これは「2」ですね。
NRSは疼痛強度の相対的評価に向いています。
この様に痛みが変化した時にはNRSのポイントを上げることで変化を相手に伝えることができます。
NRS「0」は必ずしもそうとは言えません。
※これは「0」に限った話ではありませんが、臨床的には「0」に価値があるかも知れません。
「不快な、でも痛みはない」と「痛みなし」を区別することはできません。
より伝えようとする患者では「違和感がある」「動かしにくい」という風に伝えるかも知れませんが、患者が言われているのは「疼痛強度を伝えてください」ということであり、不快感あるいは苦痛を伝える様には言われていません。
この小さな不快感・苦痛は多くの場合臨床で必要のない小さなことかも知れませんが、時に必要な情報であるかも知れません
例えば腱板断裂を疑いスペシャルテストをしたとして、痛みがあるものは陽性、ないものは陰性とされますが、これが不快感の場合はどうでしょう?
「痛みなし」と患者は表現したらスルーされます。
複雑なのがこの患者の感覚がスペシャルテストの精度にどれだけ影響するかわからない点です。

だからテスト前には「痛みはなくても不快感などあったら教えてください」と伝えるのが良いのだと思います。

患者の痛みの実感を0-100(ゼロヒャク)で考えた場合、先ほどの「腱板断裂」で言えば、スペシャルテストで「痛みがある」「痛みがない」に分けた時、この「痛みはないけど違和感がある」「痛みはないけど苦痛」を含めることで精度が変わるかも知れません(恐らく偽陽性が増え、見逃しは減る)。

腰痛と椎間板ヘルニアは"必ずしも"関連しない[1]ことは有名ですが、動作時(例えば立位保持や屈曲時)に感じる痛みではない違和感を調査すればもっと結果は変わるかも知れません(もう調査されてるかも知れませんが)。

もちろん注目しすぎもよくない

イギリスでは腰痛の有病率が10年で12.7%増加しました。
これは恐らく実際に腰痛に変化があったわけではなく、文化の変化により軽微は腰痛を報告しようという意識が高まった(つまり世界に対する反応の一部として腰痛を経験する様になった)からという解釈があります[2]。

この解釈が適切かは明らかではありませんが、施術者があまりにも患者のちょっとした変化(異常)に着目することで患者はその着目が必要だと解釈し、自身の体の(本来は気にしなくていい様な)異常に固執する様になる可能性があります。

特に最近は接骨院では痛みではない患者のちょっとした違和感まで特定し、問題視させる手段がよくありますからね。
二宮尊徳(金次郎)は「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」と言いましたが、本来何でもないはずのものを異常として伝え、通わせるのはどうかなと思う今日この頃です。

参考文献

[1]Brinjikji W, Diehn FE, Jarvik JG, et al. MRI Findings of Disc Degeneration are More Prevalent in Adults with Low Back Pain than in Asymptomatic Controls: A Systematic Review and Meta-Analysis. AJNR Am J Neuroradiol. 2015;36(12):2394‐2399. doi:10.3174/ajnr.A4498
[2]Palmer KT, Walsh K, Bendall H, Cooper C, Coggon D. Back pain in Britain: comparison of two prevalence surveys at an interval of 10 years. BMJ. 2000;320(7249):1577-1578. doi:10.1136/bmj.320.7249.1577

-note記事まとめ-

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