目次
僧帽筋のストレッチを検証する
僧帽筋のストレッチの検証はpart.1とpart.2で構成されています。
僧帽筋の基礎解剖学
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僧帽筋は、頭蓋骨・脊柱・肩甲骨・鎖骨と広く付着するため頸部や肩甲帯の多くの動作に関与しています。
また僧帽筋は上部繊維・中部繊維・下部繊維に分けられます。文献によって中部繊維がどの範囲を指すのか異なることがあります。
僧帽筋の前縁は胸鎖乳突筋と鎖骨とともに後頸三角を構成します。

名称 | 僧帽筋(そうぼうきん) ・上部繊維 ・中部繊維 ・下部繊維 |
英語表記 | Trapezius muscle ・Descending part(superior fibers) ・Transverse part(middle fibers) ・Ascending part(inferior fibers): |
略称 | TM/ Trap |
起始 | ・上部繊維:上項線(Superior nuchal line)の内側3分の1、外後頭隆起(External occipital protuberance)、項靱帯(Nuchal ligament) ・中部繊維:T1~T4の棘突起(Spinous process)、棘上靱帯(Supraspinous ligament) ・下部繊維:T4~T12の棘突起(Spinous process)、棘上靱帯(Supraspinous ligament) |
停止 | ・上部繊維:鎖骨(Clavicle)外側3分の1 ・中部繊維:肩峰(Acromion)、肩甲棘(Spine) ・下部繊維:肩甲棘内側 |
支配神経 | 脊髄副神経(Accessory nerve) |
神経根/分節 | N/A |
作用 | ・上部繊維 肩甲胸郭関節:肩甲骨挙上 頸椎:同側側屈、伸展、対側回旋 ・中部繊維 肩甲胸郭関節:肩甲骨内転 ・下部繊維: 肩甲胸郭関節:肩甲骨を下内側に引く |
血液供給 | 後頭動脈(Occipital artery)、頸横動脈(Transverse cervical artery)、肩甲背動脈(Dorsal scapular artery) |
僧帽筋の長さの測定
考えうる全ての伸張位置を計測するには時間がかかるため、最初に対側側屈・同側回旋・伸展・屈曲時に僧帽筋上部繊維前縁がどれだけ伸張するか計測し、それらの数値を元に最も伸張すると予想される肢位パターンの組み合わせを検証することにします。
僧帽筋の長さはメジャーを前縁に当てることで測定しました。

頸椎対側側屈による僧帽筋の伸張/短縮

<頸椎側屈可動域検査法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
0-50° | 第7頚椎棘突起と第1仙椎の棘突起を結ぶ線 | 頭頂と第7頚椎棘突起を結ぶ線 | 体幹の背面で行う 腰かけ座位とする |
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<僧帽筋の長さの変化>
ニュートラル(A) | 側屈(B) | B-A | |
僧帽筋上部繊維前縁の長さ | 22.5 cm | 26.0 cm | 3.5 cm |
頸椎同側回旋による僧帽筋のストレッチ

<頸椎回旋可動域検査法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
0-60° | 両側の肩峰を結ぶ線への垂直線 | 鼻梁と後頭結節を結ぶ線 | 腰かけ座位で行う | ![]() |
<僧帽筋の長さの変化>
ニュートラル(A) | 回旋(B) | B-A | |
僧帽筋上部繊維前縁の長さ | 22.5 cm | 25.0 cm | 2.5 cm |
頸椎伸展による僧帽筋のストレッチ

<頸椎伸展可動域検査法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
0-50° | 肩峰を通る床への垂直線 | 外耳孔と頸頂を結ぶ線 | 頭部体幹の側面で行う 原則として腰かけ座位と する |
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<僧帽筋の長さの変化>
ニュートラル(A) | 伸展(B) | B-A | |
僧帽筋上部繊維前縁の長さ | 22.5 cm | 19.5 cm | -3.0 cm |
頸椎屈曲による僧帽筋のストレッチ
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
0-60° | 肩峰を通る床への垂直線 | 外耳孔と頸頂を結ぶ線 | 頭部体幹の側面で行う 原則として腰かけ座位と する |
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<僧帽筋の長さの変化>
ニュートラル(A) | 伸展(B) | B-A | |
僧帽筋上部繊維前縁の長さ | 22.5 cm | 22.0 cm | -0.5 cm |
最も僧帽筋を伸張するストレッチ肢位は?
側屈が最も僧帽筋上部繊維前縁を伸張しました。回旋と側屈の伸張は1cm異なりました。
伸展は3cm僧帽筋を短縮させ、屈曲は0.5cm僧帽筋を短縮させました。
この計測方法の妥当性は不明ですが、経験則的に1cm誤差が生じると仮定すると回旋と側屈は僧帽筋を伸張させますが、どちらがより長く伸張させるかは分かりませんでした。また屈曲は僧帽筋を短縮させるか伸張させるか判断できませんでした。
このことから動作の組み合わせで僧帽筋を伸張するには側屈と対側側屈と同側回線の組み合わせが最も適切な可能性があります。ただし必ずしも最も伸張する2つの肢位の組み合わせが実際に僧帽筋を伸張するとはいえないため検証する必要があります。
ということで次の僧帽筋のストレッチに関する記事では「対側側屈+同側回旋」の組み合わせと、「同側回旋+対側側屈」の組み合わせの僧帽筋の伸張性を測定し、対側側屈と同側回旋単独と比較していこうと思います。
- 公開日:2023/10/10
参考文献を除く本文:2330文字
参考文献を含む本文:2330文字
画像・動画:11枚・2本 - 最終更新日:2023/10/10
更新情報無し
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本記事は一介の臨床家が趣味でまとめたものです。そのため専門的な文献に比べ、厳密さや正確性は不十分なものとなっています。引用文献を参照の元、最終的な情報の取り扱いは個人にお任せします。誤りや不適切な表現を見つけた際、誤字を修正した場合、追記した時には「記事情報」に記述します。