腕神経叢や肩関節の感覚神経モデルをこれまで作ってきました。今回はその続きとして腕神経叢から分枝する肩甲上神経の3Dモデルを作っていきます。

といっても肩関節の感覚神経モデルを作った際に構造自体はほとんどできているので、ここでは作ったものをまとめる作業になります。

肩甲上神経の基礎解剖学

運動神経(Motor nerve)と感覚神経(Sensory nerve)のどちらも有する混合神経(mixed nerve)です。
書籍によっては運動神経であると書かれていることもあります。
主に肩関節上後部周囲の筋や感覚を支配しています。

<肩甲上神経の走行>
<肩甲上神経の走行(神経のみ)>

<基礎データ>

名称 肩甲上神経(けんこうじょうしんけい)
英語表記 Suprascapular Nerve
略称 SSN/SScN
運動枝 棘上筋(Supraspinatus muscle)、棘下筋(Infraspinatus muscle)
感覚枝 上方関節包、後方肩関節包、肩鎖関節(AC joint)、烏口鎖骨靱帯(coracoclavicular ligament)、肩峰下滑液包(subacromial bursa)、烏口上腕靭帯(coracohumeral ligament)
神経根 C5、C6、(C4)

肩甲上神経を構成する神経根

肩甲上神経はC5~C6神経根で構成されており、腕神経叢の上神経幹から分枝します。
分枝する場所は斜角筋隙(Interscalene triangle)付近です。

<C5~C6神経根と肩甲上神経>
<斜角筋隙を通過する上神経幹>
<腕神経叢の全体像>
<腕神経叢の全体像>

 

肩甲上神経の走行

肩甲上神経は僧帽筋と肩甲舌骨筋(omohyoid muscle)の深部を走行しています。

 <肩甲舌骨筋と僧帽筋の深部を走行する肩甲上神経>
<肩甲切痕を通過する肩甲上神経>

僧帽筋より下部では鎖骨の後方を通過し、肩甲骨上縁にある肩甲切痕(suprascapular notch)の上を通って棘上窩に出ます。棘上窩上の肩甲上神経は外側に向かって走行し、棘窩切痕(spinoglenoid notch)を回って棘下窩で終わります。

肩甲上神経の関節枝・感覚枝

感覚神経としては烏口鎖骨靭帯、烏口上腕靭帯、上方関節包、後方関節包、肩峰下滑液包、肩鎖関節に末端が到達しています[3]。
Laumonerieらは37点の肩を解剖し感覚枝を調査しました[2]。
感覚枝は
MSAb(medial subacromial branch)、LSAb(lateral subacromial branch)、PGHb(posterior glenohumeral
branch)の3つ認められました。
MSAbは烏口突起基部付近で上方に曲がり、烏口鎖骨靭帯への枝を出し、肩鎖靭帯の鎖骨付着部の内側端に達するまで、肩峰下滑液包の内側縁に向かって走行します。
LSAbは、棘上筋腱の上面を通り、肩峰下外側と肩鎖靭帯の肩峰付着部に感覚枝を出します。
PGHbは棘下切痕遠位では肩関節後方関節包に向かって走行します。

 

参考文献
[1]Rigoard, P. (2018). Atlas of anatomy of the peripheral nerves: The Nerves of the Limbs – Student Edition. Springer.
[2]Laumonerie, P., Blasco, L., Tibbo, M. E., Bonnevialle, N., Labrousse, M., Chaynes, P., & Mansat, P. (2019). Sensory innervation of the subacromial bursa by the distal suprascapular nerve: a new description of its anatomic distribution. Journal of shoulder and elbow surgery, 28(9), 1788–1794. https://doi.org/10.1016/j.jse.2019.02.016
[3]Laumonerie, P., Dalmas, Y., Tibbo, M. E., Robert, S., Faruch, M., Chaynes, P., Bonnevialle, N., & Mansat, P. (2020). Sensory innervation of the human shoulder joint: the three bridges to break. Journal of shoulder and elbow surgery, 29(12), e499–e507. https://doi.org/10.1016/j.jse.2020.07.017

 

 

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