坐骨神経痛
坐骨神経痛は一般に脚、通常は膝下に広がる痛みとして定義されますが、研究によってばらつきがあります。
坐骨神経痛の有病率の研究では「膝を越えたL5またはS1分布の痛み」「脚に放散する腰痛」「膝下まで放散する腰痛」の他、「片脚または両脚に放散する痛みがあり、咳やくしゃみ、深呼吸で痛みが悪化する」とかなり限定的な定義が用いられることもあります。
定義に関わらず生涯有病率は12.2%~43%と報告されています[1]。
生涯有病率(Lifetime prevalence) | 12.2%~43% |
期間有病率(Period Prevalence) 年間有病率(annual prevalence) |
2.2%~34% |
点有病率(Point Prevalence) | 1.6%~13.4% |
定義と診断基準については統一された見解がなく、最近ではこの診断ラベルは推奨されず代わりに「Spine-related leg pain(直訳:脊柱に関連する下肢痛)」が提案されています[3]。
坐骨神経痛に対する理学療法介入は一般的によく行われています。
理学療法が広く行われているということは、効果がある根拠があるか、効果がある経験則があるか、効果があると根拠はないけど信じているのだと思われます。
臨床家としては客観的な証拠によって効果があることが示されているのが理想的です。
坐骨神経痛に対する理学療法の効果
Doveらは坐骨神経痛に対する理学療法介入の有効性に関するシステマティックレビューとメタアナリシスを行いました[1]。
この研究では理学療法と最小限の介入(対照)、理学療法とsubstantial interventionが比較されています。
理学療法群は運動療法やアドバイス、教育、徒手療法またはマニピュレーションなどが用いられ、対照群としての最小限の介入は活動的でいるようにという助言、Back Bookの提供 、安静または通常の活動を続けるようにという助言、偽電気神経刺激、偽レーザー療法、GPケア 、偽マニピュレーションが含まれました。substantial interventionの多くは手術を伴うものでした。
疼痛に関しては短期・中期では群間差はみられず、長期では、理学療法介入による疼痛軽減にわずかな効果がみられました。
障害に関しては短期・中期・長期で群間差は観察されませんでした。
臨床的意義
この結果は長期での痛みの軽減において、理学療法介入は最小限の介入よりもわずかに優れているだけであることを示唆しています。理学療法が実際に坐骨神経痛患者に臨床的に意味があるほど効果がない可能性があります。
ただし盲検化が困難なことや坐骨神経痛という広い意味を持った症状を対象としている制限があり、より具体的な疾患でサブグループ化できれば結果は変わる可能性もあります。
[2]Konstantinou, K., & Dunn, K. M. (2008). Sciatica: review of epidemiological studies and prevalence estimates. Spine, 33(22), 2464–2472. https://doi.org/10.1097/BRS.0b013e318183a4a2
[3]chmid, A. B., Tampin, B., Baron, R., Finnerup, N. B., Hansson, P., Hietaharju, A., Konstantinou, K., Lin, C. C., Markman, J., Price, C., Smith, B. H., & Slater, H. (2023). Recommendations for terminology and the identification of neuropathic pain in people with spine-related leg pain. Outcomes from the NeuPSIG working group. Pain, 164(8), 1693–1704. https://doi.org/10.1097/j.pain.0000000000002919