Rotator cableとは?
Rotator cableとRotator crescentは肩関節の文献に載っていないことも多いですが、肩の機能と腱板断裂時の症状を理解するには必要な知識です。


BurkhartらはRotator cableが無事であれば腱板断裂時に筋力低下が生じにくいと考えました[1][2]。
Rotator cableが断裂しなければSuspension bridge modelに基づいてローテーターカフの機能が残存する可能性があります。

Rotator cable断裂と肩の障害の関係
腱板断裂で生活の質を低下させるのは自力で肩の高さより高く挙上が困難できない「仮性麻痺(Pseudoparalysis)」の存在です。
Denardら(2012)はRotator cable断裂と仮性麻痺の関係を調査しました[3]。
被験者:5 cm以上の腱板断裂127例
包含基準:Cofield分類で広範囲断裂(≧5cm)に分類される鏡視下腱板修復術。
<腱板断裂のCofield分類>
※この研究では>5cmではなく、≧5cmが基準として用いられました。
小断裂 | <1cm |
中断裂 | 1-3cm |
大断裂 | 3-5cm |
広範囲断裂 | >5cm |
除外基準:再手術と5cm未満の断裂は除外されました。
Anterior rotator cableの完全断裂は肩甲下筋の停止部の50%以上が関与する断裂として定義され、Posterior rotator cableの完全断裂は棘下筋停止部の100%に関わる断裂として定義されました。
Rotator cableと仮性麻痺の関係
仮性麻痺が見られる被験者の中にRotator cableの完全断裂がない人はいませんでした。
この内、45.9%で片方のRotator cableが断裂し、54.2%で両方のRotator cableが断裂していました。
一方仮性麻痺が見られない被験者22.3%のRotator cableが無傷でした。仮性麻痺が見られない被験者の62.1%で片方のRotator cableが断裂し、15.5%で両方のRotator cableが断裂していました。
そのためRotator cableが断裂している場合、特に両方断裂している場合、仮性麻痺を呈する可能性が高くなります。
仮性麻痺は棘下筋完全断裂の症例の30.2%、棘下筋部分断裂または無傷の棘下筋の症例の7.8%、肩甲下筋断裂が50%を超える症例の25.7%、肩甲下筋断裂が50%未満の症例の10.3%、肩甲下筋腱断裂のない症例の10.7%に存在しました。
またPosterior rotator cableとAnterior rotator cableのどちらか片方が断裂している人の14.7%に仮性麻痺が見られ、両方断裂している人の44.8%に仮性麻痺が見られたことからどちらのRotator cableも仮性麻痺に大きく関与していることがわかります。
Rotator cable断裂の検査法
この報告から仮性麻痺があるかどうかは両方のRotator cable断裂があるかどうかの臨床所見となります。
仮性麻痺は受動的挙上は完全にできる上で、90°未満の能動的な屈曲と定義されます。
感度 | 特異度 | 陽性尤度比 | 陰性尤度比 | |
仮性麻痺 | 44.8% | 88.8% | 4.00 | 0.62 |
[2]Burkhart S. S. (1992). Fluoroscopic comparison of kinematic patterns in massive rotator cuff tears. A suspension bridge model. Clinical orthopaedics and related research, (284), 144–152.
[3]Denard, P. J., Koo, S. S., Murena, L., & Burkhart, S. S. (2012). Pseudoparalysis: the importance of rotator cable integrity. Orthopedics, 35(9), e1353–e1357. https://doi.org/10.3928/01477447-20120822-21
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- 公開日:2023/10/08
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画像:3枚 - 最終更新日:2023/10/08
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