腰痛患者さんの評価ではまずレッドフラッグが見られるかどうか確認することが推奨されている.
しかし,「レッドフラッグが見られるかどうか」というのは必ずしも,「レッドフラッグが1つあるかどうか」という意味ではないことに注意する必要がある.

レッドフラッグサインはいくつも提案されているが,それぞれの臨床的価値は異なる.
1つのレッドフラッグで,重篤な病理を強く疑わなければならない場合もあれば,もし患者さんに見られても臨床的にほとんど意味のない場合もある.

実際腰痛患者さんにはどれだけ多くレッドフラッグが見つかるかを紹介する.

レッドフラッグが見つかる頻度

1172人の腰痛患者を対象とした研究では,80.4%が少なくとも1つのレッドフラッグが見つかったと報告された[4].しかし,このうち実際に重篤な病態が確認されたのは11例(0.9%)であり,内訳は脊椎骨折8例,炎症性関節疾患2例,馬尾症候群1例であった.

9,940人の腰痛患者を対象にした他の調査では,92.6%の患者が新患受診時に少なくとも1つのレッドフラッグ症状を有しており,夜間痛は58.1%にみられた[6].

救急科を受信した患者では1000人のうち,70%の患者が少なくとも1つのレッドフラッグを持っており,14%は4つ以上のレッドフラッグを持っていたと報告された[7].このコホートにおいて,3.3%が重篤な脊椎疾患,14.6%が重篤な非脊椎疾患と診断された.

このようにレッドフラッグは一般的に見られるため,「レッドフラッグが見られるかどうか」ではなく,「価値のあるレッドフラッグが見られるかどうか」や「複数のレッドフラッグが見られるかどうか」という視点が重要になってくる.
また価値の低いレッドフラッグがある場合は,「より専門的な機関に紹介するかしないか」以外に「注意深く経過を観察する」という判断もできる.

他の問題も合わせると,腰痛のレッドフラッグには5つの問題点がある.これらの問題を認識しないまま使用すると過剰医療につながるリスクがあるため注意しなければならない.
腰痛のレッドフラッグの問題点は「#8 腰痛Red flagsにおける5つの問題点」でまとめている.

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参考文献
[4]Henschke N, Maher CG, Refshauge KM, Herbert RD, Cumming RG, Bleasel J, York J, Das A, McAuley JH. Prevalence of and screening for serious spinal pathology in patients presenting to primary care settings with acute low back pain. Arthritis Rheum. 2009 Oct;60(10):3072-80. doi: 10.1002/art.24853. PMID: 19790051.
[6]Premkumar A, Godfrey W, Gottschalk MB, Boden SD. Red Flags for Low Back Pain Are Not Always Really Red: A Prospective Evaluation of the Clinical Utility of Commonly Used Screening Questions for Low Back Pain. J Bone Joint Surg Am. 2018 Mar 7;100(5):368-374. doi: 10.2106/JBJS.17.00134. PMID: 29509613.
[7]Shaw B, Kinsella R, Henschke N, Walby A, Cowan S. Back pain "red flags": which are most predictive of serious pathology in the Emergency Department? Eur Spine J. 2020 Aug;29(8):1870-1878. doi: 10.1007/s00586-020-06452-1. Epub 2020 Jun 3. PMID: 32495276.

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