Ludwig Wittgenstein
検証せずに確信していることが多くないか?

臨床は不確実性に基づいた介入です。

これまでの骨格筋痛治療は、個人の臨床経験と価値観が優位に介入選択の基準として使われてきており、それらは大抵検証されずに、あるいは大して検証されずに正しいだろうという信念の元、行われてきました。

多くの医療従事者や、骨格筋痛に携わる個人/団体は故人の考えに批判することなく拘泥し、自身の考えを妄信し、都合の良い臨床的解釈の虜となっていました。

検証されていない魅力的な治療の人気は増え続けており、効果が不明な治療(筋膜リリース、姿勢アドバイスなど)を行う理学療法士の中央値は1990~1999年には41%だったにも関わらず、2010~2018年には70%と増加しています[Zadro JR et al.,2020]。

もちろん効果が不明な治療は規制されるべきではないのかも知れません。

効果が不明な治療の蔓延の問題は、似非医学と効果不明な治療の客観的な違いはほとんどなく、見分けがつくにくく、あるいはしばしば似非医学であり、効果的であるはずの治療に出会う患者の機会を損失させ、EBM(Evidence Based Medicine)と矛盾する虚言によって特徴付けられる言説によって誤った信念に犯された患者と対面したEBMを提供する医療従事者が患者にどのように介入すべきか知るのに苦労することになります[Chou WS et al.,2018]。

そこで我々は現在の骨格筋痛に携わる医療従事者に必要な3つのテーマを定めました。

医療従事者の故人への無批判の拘泥は問題です。

一見すると、様々な理論に肯定的であるというのは正しいことのように見えるかも知れません。
しかし時に肯定的であることは害を生み出します。
例えば誤った情報に騙されやすい人の特徴の1つは代替医療に肯定的です[Scherer LD et al.,2021]。
肯定的であるが故に標準医療よりも、一見魅力的な代替医療を実践する人が増えるきっかけになっていると予想されます。

何にでも肯定的であることは自分の信念を肯定してくれて心地良く、批判的であることは自身の信念を時に否定するため不快であるかも知れません。

我々は心地よいだけの臨床から脱却する時期がきています。

また故人の情報は既に古いものかもしれません。
しばしば「教科書は出版された時には時代遅れである」という通説が唱えられますが、情報の陳腐化(Information obsolescence)は実際には、著者が執筆する前に時代遅れになっている可能性があります[Antman EM et al.,1992]。

さらに言えば、平均的な医学的治療の進歩は、最初の発見から臨床試験を経て日常的な臨床診療に至るまで17年かかると推定されています[Balas EA et al.,2000]。

標準治療から離れすぎないように、似非医学を知らない間に行わないように、骨格筋痛の基礎知識の構築は重要です、

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参考文献

・Antman EM, Lau J, Kupelnick B, Mosteller F, Chalmers TC. A comparison of results of meta-analyses of randomized control trials and recommendations of clinical experts. Treatments for myocardial infarction. JAMA. 1992 Jul 8;268(2):240-8. PMID: 1535110.
・Chou WS, Oh A, Klein WMP. Addressing Health-Related Misinformation on Social Media. JAMA. 2018 Dec 18;320(23):2417-2418. doi: 10.1001/jama.2018.16865. PMID: 30428002.
・Zadro JR, Ferreira G. Has physical therapists' management of musculoskeletal conditions improved over time? Braz J Phys Ther. 2020 Sep-Oct;24(5):458-462. doi: 10.1016/j.bjpt.2020.04.002. Epub 2020 May 5. PMID: 32387047; PMCID: PMC7563797.
・Scherer LD, McPhetres J, Pennycook G, Kempe A, Allen LA, Knoepke CE, Tate CE, Matlock DD. Who is susceptible to online health misinformation? A test of four psychosocial hypotheses. Health Psychol. 2021 Mar 1. doi: 10.1037/hea0000978. Epub ahead of print. PMID: 33646806.
・Balas EA, Boren SA. Managing Clinical Knowledge for Health Care Improvement. Yearb Med Inform. 2000;(1):65-70. PMID: 27699347.