痛みの原因にならない画像所見 - Issue #2

画像所見と症状

画像所見上の異常と骨格筋痛は関連が強い場合もあれば、関連がかなり小さい可能性もあります。臨床では症状の原因が明らかにならない時には画像所見上の異常は症状の原因とみなされることがあります。画像所見は客観的な説得力が直感的に高く見え、患者は医療従事者はその結果に基づいて症状を理解するようになってしまいます。
典型的には腰痛患者はゴミ箱診断として「ヘルニアだから腰に痛みがある」と言われるケースがあります。
※ゴミ箱診断(Wastebascket diagnosis): 患者が明らかに医学的問題を抱えているが特定できない場合、医師が不安な患者を安心させたい場合や保険適用を容易にしたい場合などにつける曖昧な診断のこと
このような説明は患者を安心させるよりもむしろ不安にさせたり、無力感を引き起こすため医療の本来の役割に反しています。医療従事者は(画像所見についてドクターでない医療従事者はほとんど患者に説明してなならないため主語は主にドクターになります)より正確な根拠ある説明をするために何が症状と強く関連していて、何がほとんど関連していないかを知っておくと安心させる役に立ちます。
ということでいくつか画像所見と症状の関連を紹介します。

腰痛と画像所見

Brinjikjiらは無症候と画像所見の関係を調査するためにSystematic reviewを行いました。無症候性画像所見に関する33の研究(合計3110人)が含まれました[1]。
その結果年齢別の無症候性患者における変性脊椎画像所見は以下の割合で見られることがわかりました。
30代であっても無症候性の変性所見は約半数にみられ、80代になると9割異常が何らかの所見が無症候性のなんからの所見が見つかることがわかります。これらの所見は変性か老化か見分けることは困難です。

肩と画像所見

Girishらはエコーを用いて51人の肩の症状を持たない被験者の画像所見を調査しました。平均年齢は56歳(40~70歳)でした[2]。
結果として無症状のローテーターカフ(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の異常は75%(38/51人)にみられの肩に認められ全層断裂は10%(5/51人)でした。無症状の上腕二頭筋長頭腱の腱障害(Tendinosis)は4%(2/51)にみられ、腱の完全断裂は2%(1/51)に見られました。無症状の肩峰下滑液包の肥厚が78%(40/51)でみられ、肩峰下インピンジメントは6%(3/51)の被験者に見られました。無症状の肩鎖関節変性は65%(33/51)にみられ、後方関節唇の異常は14%(7/51)の被験者に見られました。
Schwartzbergらの報告では肩の痛みのない53人の被験者(45〜60歳)に対するMRIでは72%がSLAP lesionを持っていました[3]。

膝と画像所見

Guermaziらは710人(29%が痛み有り)の被験者62.3(51-89)にMRIを用いて[4]
全体として、631人(89%)の膝に少なくとも1つのタイプの異常があり、痛みのない88%になんらかの異常所見がみつかりました。特に骨棘は痛みのない人の72%にみられ、軟骨損傷は痛みのない人の68%に見られました。

臨床との関連

画像検査は本来、治療やさらなる検査の選択を変化させなければ意味がなく、あるいはより正確に言えば予後を変化させることに寄与しない画像検査には価値がありません。そのため画像所見と症状の因果関係が臨床現場で判断が難しいことを意味するこれらの報告は画像検査が普段使われているよりも必要ない可能性を示唆します。

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参考文献

[1]Brinjikji, W., Luetmer, P. H., Comstock, B., Bresnahan, B. W., Chen, L. E., Deyo, R. A., Halabi, S., Turner, J. A., Avins, A. L., James, K., Wald, J. T., Kallmes, D. F., & Jarvik, J. G. (2015). Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. AJNR. American journal of neuroradiology36(4), 811–816. https://doi.org/10.3174/ajnr.A4173
[2]Girish, G., Lobo, L. G., Jacobson, J. A., Morag, Y., Miller, B., & Jamadar, D. A. (2011). Ultrasound of the shoulder: asymptomatic findings in men. AJR. American journal of roentgenology197(4), W713–W719. https://doi.org/10.2214/AJR.11.6971
[3]Schwartzberg R, Reuss BL, Burkhart BG, Butterfield M, Wu JY, McLean KW. High Prevalence of Superior Labral Tears Diagnosed by MRI in Middle-Aged Patients With Asymptomatic Shoulders. Orthop J Sports Med. 2016;4(1):2325967115623212. Published 2016 Jan 5. doi:10.1177/2325967115623212
[4]Guermazi, Ali & Niu, Jingbo & Hayashi, Daichi & Roemer, Frank & Englund, Martin & Neogi, Tuhina & Aliabadi, Piran & McLennan, Christine & Felson, David. (2012). Prevalence of abnormalities in knees detected by MRI in adults without knee osteoarthritis: Population based observational study (Framingham Osteoarthritis Study). BMJ (Clinical research ed.). 345. e5339. 10.1136/bmj.e5339.

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