先日Twitterでこんな話をしました。

腋窩神経が通る"QLS"
ここを通過する感覚枝に『上外側上腕皮神経』があります。
ここが障害されると上腕外側や後部に症状を訴えることがあります。

※QLS…quadrilateral spaceの略。上腕骨外科頚、上腕三頭筋長頭、大円筋、小円筋との間で囲まれた間隙です。腋窩神経(上外側上腕皮神経)と後上腕回旋動静脈が通過します。

これオモたんが
上外側上腕皮神経の障害は上腕上部に症状が出ますけど、上外側上腕皮神経からの関連痛は上肢下部まで症状出得るんじゃないです?

ちょっとそのへん
詳しく教えて下さい(´・ω・`)
今回はこれを深堀していこうと思います。

神経支配領域に症状の出る神経因性疼痛

Extraterritorial pain※1[1]なのか関連痛(referred pain)なのか、他の感作なのか分かりませんが神経が障害されたからと言って、神経支配領域に常に症状が出るわけではないですよね。

例えば前話したCTS(手根管症候群※2)なんかは典型的でメカニズムははっきりとしてませんがCTSの45%は神経支配領域外に症状が出ますよね[2]。

extraterritorial painなら脊髄分節が同じ領域に症状が出るかもしれないですし→つまりc5,6領域に出るかも知れませんし、上外側上腕皮神経を超えるものの単に腋窩神経支配領域に収まって症状が出るかも知れません。

とにかく言いたい事は神経障害が支配領域以上に出る事はありえて、上外側上腕皮神経の場合なら上肢下部やc5,6領域に出うるかもねってことです。
だから上外側上腕皮神経は基本上腕上部に症状を出しますけど、上腕上部を越えて症状でても除外には至らないのかなと考えています。

※1:Extraterritorial pain:本来解剖学的にあるべき位置を超えて疼痛を引き起こす痛み[1]。和名があるかは分かりません。
※2:CTS:carpal tunnel syndrome:手根管症候群
ということをTwitterでいいました。
上記した様に手根管症候群(CTS)の45%では本来神経解剖学的に妥当な領域を超えて、上肢などに痛みを引き起こします。
※本来手根管症候群で症状が出るであろう領域
つまり、正中神経領域外に症状があるからと言って手根管症候群を除外するには至りません。
これは何らかの末梢神経系または中枢神経系のメカニズムが関与していると考えられていますが、はっきりとは恐らくわかっていません。
話は最初に戻って「上外側上腕皮神経が障害されると上腕外側や後部に症状を訴えることがある」は教科書上の話で実際はもっと複雑です。

これは神経因性疼痛なのか?

神経因性疼痛の定義は以下の通りです。

神経因性疼痛の定義
体性感覚神経系の病変または疾患に起因する疼痛[3]
この時どこまでが体性感覚というのかが疑問になります。(ご存知の方がいたらご教示ください)
例えば、末梢神経病変に中枢感作(中枢で感覚が増幅された状態)が混在して疼痛が出ている場合、それは神経因子疼痛でありながら、中枢感作であり、この2つの混在は矛盾しませんが、その場合、神経解剖学的に(論理的に)妥当性のある領域"外"にある痛み(Extraterritorial pain)は神経因性疼痛と表現するのは適切でしょうか?
※中枢感作(Central sensitization)…疼痛過敏症を誘発する中枢神経系内の神経シグナル伝達の増幅[4]
というのも中枢感作は末梢での侵害刺激がなくても疼痛を引き起こすので、Extraterritorial painが本当に末梢神経由来の刺激を感作して起こしているかがわからなくなってきます。
また末梢神経病変がないにも関わらず神経痛様の痛みが出ている場合はあります。

ちなみにこんな感じでよくある坐骨神経痛を(徒手療法などで)治した!
って経験は実際は神経因性疼痛ではないものを勘違いしている可能性は十分あります。
この鑑別にはある程度、疼痛誘発テストや神経ブロックでできるかも知れません。
そして、恐らくですが、疼痛の質(どんな痛みか)も判断には有効であると思われます。
患者のする疼痛表現は多様で例えば以下の様な表現がされます。
  • Frickering pain(frickeringは「チラつき」という意味があるため、ちくちくや点滅する様な痛み、ちらちらするような痛みに使われる。)
  • Quivering pain(Quiveringは「震える」という意味があるため、ビリビリや振動するような痛みに使われる。)
  • Pulsing pain(Pulsingは「脈拍」という意味があるため、ズキズキやビリビリのように脈打つような痛みに使われる。)
  • Throbbing pain(Throbbingは「鼓動」という意味があるため、ズキズキ、ズキンズキン、ドキドキする様な痛みに使われる。Pulsing painより強調した表現となる。)
  • Beating pain(Beatingは「鼓動」という意味があるため、ズキンズキンやどきんどきんの様な痛みに使われる。Throbbing painよりも1回1回のビートが強調される。)
  • Pounding pain(Poundingは「動悸」を意味するように、ガンガンする様な痛みに使われる。Beating painよりも強い。)
  • jumping pain(jumpingは「ジャンプ」を意味するように飛び上がるようなビクッとする痛みに使われる。)
  • flashing pain(flashingは「点滅」を意味するようにピリっとしたりピカっとしたり、時折ジーンとする時に使われる。歯が染みる時に使われやすい。)
  • shooting pain(shootingは「射撃」を意味するように、撃たれたような、ビーンとくる痛みに使われる。)
  • pricking pain(prickingは「刺す」を意味するように針でちくりと刺すような痛みに使われる。)
  • boring pain(削るような、刺すようなdrilling painよりも大きな穴のニュアンスで使われる。)
  • drilling pain(刺すような、キリでさしこむような痛みに使われる。)
  • stabbing pain(刃物で突き刺される痛み)
  • lancinating pain(槍で刺される様な痛み)
  • sharp pain(鋭い痛み)
    ※以下pain略
  • cutting(切るような、切り裂かれるような痛み)
  • lacerating(cutting painよりも強く切り裂かれるような痛み)
  • pinching(つねられるような痛み)
  • pressing(圧迫されるような痛み)
  • gnawing(かじり続けられるような痛み)
  • cramping(ひきつるような痛み)
  • crushing(押しつぶされるような痛み)
  • tugging(ぐいっと引っ張られるような痛み)pulling(引っ張られるような痛み(tuggingより弱い))
  • wrenching(ねじ切られるような痛み)
  • hot (熱い痛み)
  • burning(灼けるような痛み)
  • scalding(やけどしたような痛み)
  • searing(焦げるような痛み)
  • tingling(ひりひりする痛み)
  • itchy(むず痒い痛み)
  • smarting(ズキっとする痛み)
  • stinging(蜂に刺されたような痛み)
  • dull(鈍い痛み)
  • sore(腫れたような痛み)
  • hurting(傷ついたような痛み)
  • aching(疼くような痛み)
  • heavy(重だるい痛み)
  • tender(触られると痛い)
  • taut(火照るような、つっぱった痛み)
  • rasping(いらいらする痛み)
  • splitting(割れるような痛み)
  • tiring(うんざりした痛み)
  • exhausting(げんなりした痛み)
  • sickening(吐き気のする痛み)
  • suffocating(息苦しい痛み)
  • fearful(怖いような痛みを)
  • frightful(凄まじい痛み)
  • terrifying(ゾッとするような痛み)
  • grueling(過酷な痛み)
  • cruel(残酷な痛み)
  • vicious(残忍な痛み)
  • killing(死ぬほど痛い)
  • wretched(ひどく惨めな痛み)
  • blinding(訳の分からない痛み)
  • annoying(いらいらさせる痛み)
  • troublesome(やっかいな痛み)
  • miserable(情けない痛み)
  • intense(激しい痛みを)
  • unbearable(耐えられない痛み)
  • spreading(幅が広がっていくような痛み)
  • radiating(遠くに広がっていくような痛み)
  • penetrating(貫くような痛み)
  • piercing(突き刺すような痛み)
  • tight(窮屈な痛み)
  • numb(しびれたような痛み)
  • drawing(引き寄せられる痛み、引き締めれる痛み)
  • squeezing(絞られる痛み)
  • tearing(引きちぎられる痛み)
  • cool(ひんやりした痛み)
  • cold(冷たい痛み)
  • freezing(凍るような痛み)
  • nagging(しつこい痛み)
  • nauseating(ムカつくような痛み)
  • agonizing(苦しみ悶えるような痛み)
  • dreadful(ひどく恐ろしい痛み)
  • torturing(拷問されているような痛み)
  • dragging(引きずられるような痛み)
  • fulgurant(電光のような痛み)
  • gripping(しくしくする痛み)
  • intractable(難治性の痛み)
  • irritated(ヒリヒリする痛み)
  • lightning(稲妻のような痛み)
  • pang(さしこむ痛み)
  • pins and needles(ピリピリする痛み)
  • terebrant(ほり抜くような痛み)
  • tickling(むずむずする痛み)
  • tingle(ヒリヒリする痛み)
  • twinge(急激に刺すような痛み)

もちろん、これが全てではありませんが、我々はこれらをヒントに推測する必要があります。

この中でsooting pain(刺す痛み)とpricking pain(ビーンとくる痛み)を神経因性疼痛のヒントとして使われることもあります[5]。

しかし恐らくそれほど単純でもないでしょう。

だから続いてこういいました。

一旦障害部位を決めることには臨床的価値は多分あって、でも鑑別はかなり疑わしいってことを知識としてだけじゃなくて、本当に強く常に持っとくべきで、決めきれない場合は決めきれない要因全てに効果的だと思われるアプローチを選択するのがベターなのかなと思ってます。ここの組織でもここの組織でもある程度は効果を認められるだろうって。

鑑別仕切らないことってのは臨床で必要な手段だと思います。

参考文献

[1]Malan, T. & Ossipov, Michael & Gardell, Luis & Ibrahim, Mohab & Bian, Di & Lai, Josephine & Porreca, Frank. (2000). Extraterritorial neuropathic pain correlates with multisegmental elevation of spinal dynorphin in nerve-injured rats. Pain. 86. 185-94. 10.1016/S0304-3959(00)00243-8.
[2]Zanette G, Marani S, Tamburin S. Proximal pain in patients with carpal tunnel syndrome: a clinical-neurophysiological study. J Peripher Nerv Syst. 2007;12(2):91-97. doi:10.1111/j.1529-8027.2007.00127.x
[3]Amorim, Anita B.a,b,c; Machado, Gustavo C.a,b; Maher, Chris G.a,b Enthusiastic claims for open-label placebo pills ignore the evidence, PAIN: May 2020 - Volume 161 - Issue 5 - p 1124

doi: 10.1097/j.pain.0000000000001803 
[4]Woolf CJ. Central sensitization: implications for the diagnosis and treatment of pain. Pain. 2011;152(3 Suppl):S2‐S15. doi:10.1016/j.pain.2010.09.030
[5]Nijs J, Torres-Cueco R, van Wilgen CP, et al. Applying modern pain neuroscience in clinical practice: criteria for the classification of central sensitization pain. Pain Physician. 2014;17(5):447‐457.

-note記事まとめ-

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