腰椎と骨盤の解剖学的ランドマークの触擦における信頼性の評価

今回はStovall氏とKumar氏による「Anatomical landmark asymmetry assessment in the lumbar spine and pelvis: a review of reliability. 」を紹介します。

目的:骨の触擦って信頼できるの?

ランドマークの位置の非対称性評価は、筋骨格評価の重要な要素としてよく登場しますが、最近までこの方法の信頼性を確立するための研究はほとんど行われていなかったため、腰椎と骨盤の解剖学的ランドマークに信頼性があるかを評価することが研究の主な目的となりました。

用語解説:信頼性(Reliability)

測定値の一貫性や再現性。テストのスコアに測定誤差が含まれていない程度。
信頼性は、測定のあらゆる側面において基本的なものです。正確な測定の核心となる第一の前提条件は、信頼性、つまり繰り返し評価する際に、測定値が一貫して得られる範囲です。
患者の行動が信頼できるものであれば、与えられた条件の下で一貫した反応が期待できます。信頼できる検者とは、患者の変化しない行動に一貫したスコアを割り当てる人のことです。信頼できる機器とは、安定した条件下で予測可能な精度で動作するものです。現実の性質上、測定値が完全に信頼できることはほとんどありません。
十分な信頼性がなければ,収集したデータに自信を持つことができず,パフォーマンスの安定性や変化について合理的な結論を導くことができません。

ランドマーク触擦の信頼性はあまりにも低い

結果は以下のようになりました。
すべての検者間・検者内信頼性は臨床的に信頼できるものではありませんでした。

ランドマーク 検者間信頼性 検者内信頼性
ASIS κ = 0.128 κ = 0.414
PSIS κ = 0.092 κ = 0.371
SS κ = 0.05 κ = 0.261
内果 κ = 0.245 κ = 0.536
L1-5横突起 κ = 0.179 N/A

 

用語解説:カッパ(κ)係数

ある現象を観察者が観察した場合の結果がどの程度一致しているかを表す統計量。値が大きいほど一致度が高いと判断される。右図はカッパ係数の判断基準。
用語解説:検者間信頼性(Inter-rater reliability)
複数の検者によって検査・測定されたデータの信頼性。
用語解説:検者内信頼性(Intra-rater reliability)
1人の検者が検査・測定を複数回繰り返したときの信頼性。

検証内容

腰椎・骨盤の解剖学的ランドマークの触診による骨の位置の非対称性評価を調査した査読付き雑誌に掲載された論文10件のレビュー(要約は原文の表1参照)。

レビューに含まれたランドマークの評価方法

  • PSIS:posterior superior iliac spine
    PSISの下斜面の触診により評価。
  • SS:sacral sulcus
    PSIS の内側の深さを評価することによって評価される。歴史的に SS は仙骨の位置に関する情報を与えると仮説が立てられていたが現在では主に多裂筋の局所的な軟組織密度のより直接的な評価であると考えられている。
  • ASIS:anterior superior iliac spine
    ASISの下側の傾斜を触診することにより評価。
  • MM:medial malleoli
    内果(MM)の最下部の触診によって評価。機能的な脚長差との関連性が想定されているため、骨盤を評価するときに一般的に組み込まれる。
  • Lumbar transverse processes
    腰椎横突起は、ニュートラルポジションで1対を探し評価した。

臨床的意義

このような研究は徒手療法や徒手検査を用いる臨床家にとっては非常に重要な情報になります。
どうしても歴史的に徒手療法・徒手評価は言った者勝ちというか、できると主張した人がいればできるんだろうなと話が進んでそれが一般的な評価として用いられる側面があります。

触擦できるか判断が難しい大腰筋や上腕二頭筋長頭、それってどうなの?と思ってしまうような子宮や肺の水平裂の触擦などまで様々あります。
中でも骨盤の触擦はカイロプラクターやオステオパスの中で頻繁に使用される技術であり、臨床で用いている人も少なくないはずです。

しかしこれらの触擦は民間医療の中で発達し、検証があまりされていない部分があるのも確かです。
そのため現状用いられる頻度の高い技術の信頼性や妥当性の検証は徒手療法家にとって自身の臨床を見直すきっかけになります。

今回の調査ではほとんどのランドマークの触擦の信頼性が低いと報告されました。
この低い信頼性は骨盤を触れて左右差を確認したり、ビフォーアフターで変化をみるといった行為が適切に評価できていないことを示唆します。

臨床家の中には触擦が上手いと言われている人もいるので、そういう人でどこまで信頼性が変化するかは興味があります。

今回の文献を通して次に目を通したい文献は?

Discussionから

  • 触診評価方法の文脈で骨の解剖学的ランドマークの位置の非対称性を議論するとき、一部の著者 [18,38] は、おそらく非対称性がないところに非対称性の認識があるのではないかと示唆しています。
  • Lewit と Liebenson [18] によって最初に議論された触覚の錯覚は、組織の密度、収縮性、質感の変化が骨の位置の非対称として知覚される可能性について言及しています。
[18]Kmita, Adrian & Lucas, Nicholas. (2008). Reliability of physical examination to assess asymmetry of anatomical landmarks indicative of pelvic somatic dysfunction in subjects with and without low back pain. International Journal of Osteopathic Medicine - INT J OSTEOPATH MED. 11. 16-25. 10.1016/j.ijosm.2008.01.003.
[38]Fryer G, Morris T, Gibbons P. Paraspinal muscles and intervertebral dysfunction: part two. J Manipulative Physiol Ther. 2004 Jun;27(5):348-57. doi: 10.1016/j.jmpt.2004.04.008. PMID: 15195042.

 

参考文献
[1]Stovall, B. A., & Kumar, S. (2010). Anatomical landmark asymmetry assessment in the lumbar spine and pelvis: a review of reliability. PM & R : the journal of injury, function, and rehabilitation, 2(1), 48–56. https://doi.org/10.1016/j.pmrj.2009.11.001

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