リフトオフテスト(Lift-off testまたはGerber’s test)は肩甲下筋断裂の検査法の1つで、Gerberらによって記述されました[1]。
肩甲下筋病変の検査法には以下のものがあります。
Internal rotation lag sign
リフトオフテスト
ベリーオフサイン
ベリープレステスト
ベアハグテスト

リフトオフテストの検査目的

リフトオフテストは腱板断裂の中の特に肩甲下筋断裂に特化した検査法です。
肩甲下筋断裂は腱板断裂の中では比較的稀な損傷であり、診断が難しい場合があります。
診断が遅れて適切な治療が遅れると、肩の機能が悪影響を受ける可能性があり切な治療を実施できるようにするために、正確な臨床検査を行うことが重要です。

リフトオフテストの検査手順

  1. 立位で患者に腕を背中の後ろに回してもらい、手の甲を腰椎中部の領域に当てます。
  2. 上腕骨を内旋させ、手の甲を腰から浮かせます。この時、肘は一定の屈曲角度に保たれます。

<リフトオフテストの開始位置>

<リフトオフテストの終了位置>

リフトオフテストの陽性所見

手の甲を腰から能動的に持ち上げることができれば、リフトオフテストは正常です。
反対に手の甲を腰から離すことができない場合は、リフトオフテストが陽性であり、肩甲下筋断裂を示唆します。

リフトオフテストの検査精度

Bartschらの報告では肩甲下筋病変に対するリフトオフテストの感度は0.40、特異度は0.79、陽性尤度比は1.9、陰性尤度比は0.79でした[3]。
この調査の被験者は関節鏡手術を受ける予定のインピンジメント症候群を有する55人の患者で、参照基準は内視鏡で診断された肩甲下筋断裂でした。


リフトオフテストの注意点

このテストを行うには、患者は完全な受動的内旋ができていなければならず、腕を目的の位置に置くことが物理的に可能でなければならず、痛みによってテスト開始肢位に持っていけないこともあります。
内視鏡下外科手術を予定された患者50人では痛みや痛みによる可動域制限のため、6例ではリフトオフテストとIRLSを実施できなかった報告があります[3]。
無理に検査を行おうとすることで疼痛や断裂の悪化のリスクがあるため注意が必要です。
このテストでは手の甲を腰椎の中間の高さまで持ち上げる必要があります。臀部まで手の甲を持ち上げた時に比べ、腰部まで持ち上げた時の方が肩甲下筋の活動が大きいため、手の甲の位置はテストにおいて重要です[2]。
このテストを行えない場合、より負担の少ない肢位で行うBelly press testを使用することもできます。

リフトオフテストとベリープレステストの比較

リフトオフテストとベリープレステストは他のすべての筋より有意に高い肩甲下筋上部・下部の活動が見られます。次に活動的な筋はそれぞれ大円筋と棘上筋ですがこれらの筋は25%MVC未満です。
またベリープレステスト中の肩甲下筋上部のEMG活動はリフトオフテストより高く、リフトオフテスト中の肩甲下筋下部のEMG活動はベリープレステストより高いという報告があります[3]。
そのためリフトオフテストは肩甲下筋下部のテストとして、ベリープレステストは肩甲下筋上部のテストとして活用できる可能性があります。
ただし、実際にこの2つのテストが上部と下部を分けて検査できるかは明らかではありません。

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参考文献
[1]Gerber, C., & Krushell, R. J. (1991). Isolated rupture of the tendon of the subscapularis muscle. Clinical features in 16 cases. The Journal of bone and joint surgery. British volume, 73(3), 389–394. https://doi.org/10.1302/0301-620X.73B3.1670434
[2]Greis, P. E., Kuhn, J. E., Schultheis, J., Hintermeister, R., & Hawkins, R. (1996). Validation of the lift-off test and analysis of subscapularis activity during maximal internal rotation. The American journal of sports medicine, 24(5), 589–593. https://doi.org/10.1177/036354659602400505
[3]Bartsch, M., Greiner, S., Haas, N. P., & Scheibel, M. (2010). Diagnostic values of clinical tests for subscapularis lesions. Knee surgery, sports traumatology, arthroscopy : official journal of the ESSKA, 18(12), 1712–1717. https://doi.org/10.1007/s00167-010-1109-1

 

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