外側上顆炎(Lateral epicondylitis)はテニス肘(Tennis elbow)とも呼ばれ、肘の外側の痛みを特徴とする一般的な痛みを伴う症状であり、物を握ったり絞ったりするときに痛みが増します。

外上顆炎患者の管理には、その臨床経過と転帰の予後指標に関する知識が必要です。

臨床経過と自然経過の知識は治療の計画や患者さんにより正確な情報を伝えたり安心感を与える上で必要な情報です。
また自然経過を知らない場合、自身の治療効果を過大評価したり過小評価してしまうこともあります。

外側上顆炎の臨床経過と自然経過は?

Smidtら(2006)は349人の外側上顆炎患者の経過を12ヶ月間追跡しました[1]。
図は、外側上顆炎患者の日中の疼痛強度の臨床経過を介入ごとに示しています。 12か月の追跡調査後、治療に関係なく、ほぼすべての患者(89%)で日中の痛みの減少が見られました。

コルチコステロイド注射を行った患者(n=115)では、1ヵ月後に疼痛が大幅に減少しましたが、6ヵ月後および12ヵ月後の追跡調査では再発が多くみられました。

著者らはこれを「外側上顆炎は自然に治まる症状として説明されることがよくありますが、この結果はこの説を支持します。」と解釈しましたが、12ヶ月後の症状の残存があることからそうとは言い切れないようにも思えます。
またこの研究では1年間の追跡調査での外側上顆炎の予後は、肘の訴えの期間、付随する首の痛み、発症日の疼痛強度によって強く影響されることもわかりました。

また別のRCTにおける1年間の追跡調査では以下のような経過を報告しています[2]。

この報告でもコルチコステロイド注射は短期的には疼痛を軽減し、6ヶ月後と12ヶ月後は他の治療法とほとんど差がありませんでした。

臨床的意義

治療の種類に関わらず1年で約9割が自然に疼痛強度が減少する情報は将来を不安視する患者さんにとって安心感の材料になります。
1ヶ月後に限定すればコルチコステロイド注射が最も痛みを緩和していますが1年後ではどの治療法にも大した差はないようにも見えます。
しかし疼痛強度が減少するといっても1年後でも症状が残存していることもここからわかります。
理学療法などの治療の価値があるかどうかは判断できませんが、1年後に疼痛強度が回復しているかどうかという点だけでみると有効性は限られています。
ということで「今回の文献を通して次に目を通したい文献は?」に保存療法の有効性を調査した研究を含めます。

今回の文献を通して次に目を通したい文献は?

・Mobilisation with movement and exercise, corticosteroid injection, or wait and see for tennis elbow: randomised trial.
・ Long-term follow-up of conservatively treated chronic tennis elbow patients. A prospective and retrospective analysis.
・Corticosteroid injections, physiotherapy, or a wait-and-see policy for lateral epicondylitis: a randomised controlled trial.
・Long-term follow-up of conservatively treated chronic tennis elbow patients. A prospective and retrospective analysis.
・Is eccentric exercise an effective treatment for lateral epicondylitis? A systematic review.
・A new integrative model of lateral epicondylalgia.

 

参考文献
[1]Smidt, Nynke & Lewis, Martyn & van der Windt, Danielle & Hay, Elaine & Bouter, Lex & Croft, Peter. (2006). Lateral epicondylitis in general practice: Course and prognostic indicators of outcome. The Journal of rheumatology. 33. 2053-59.
[2]Smidt N, van der Windt DA. Tennis elbow in primary care. BMJ. 2006 Nov 4;333(7575):927-8. doi: 10.1136/bmj.39017.396389.BE. PMID: 17082522; PMCID: PMC1633781.

 

記事情報

  • 公開日:2023/09/16
    参考文献を除く本文:1869文字
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  • 最終更新日:2023/09/16
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【注意事項】
本記事は一介の臨床家が趣味でまとめたものです。そのため専門的な文献に比べ、厳密さや正確性は不十分なものとなっています。引用文献を参照の元、最終的な情報の取り扱いは個人にお任せします。

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