ガイドラインの消費期限と腰痛ガイドラインの動向

消費期限の切れたお菓子

自宅のキッチンから少し前に買ったお菓子が出てきました。消費期限が書かれた入れ物はすでに捨てられていて食べられるか分かりません。このお菓子をあなたは食べますか?

ガイドラインには消費期限があります。古いガイドラインを参照すれば現在入手可能な情報と大幅に異なる知識を元に臨床を行なってしまいます。ガイドラインがいつ書かれたかに注意を向けないことは消費期限がわからない古い食べ物を口にするようなものです。

腰痛のガイドラインを例にしても数年後に推奨事項が変わっている可能性は十分あります。
例えばRed flagsや安心感を与える、教育は一般的に多くの腰痛ガイドラインで推奨されていますが、その根拠は強い証拠に基づく訳ではありません。
治療に関しても方法論的な質の低さから推奨されていない治療がいくつかありますが、より質の高い研究が発表されれば推奨度が変わることも考えられます。運動は慢性腰痛で推奨される一般的な治療法ですが、どの運動をどの程度行うのが理想的かは今後明らかになっていくでしょう。

知識の消費期限が切れて老朽化することを解決するにはより新しい情報を入手するしかありません。
ここで問題となるのは「どれくらいの頻度で情報を収集し直す必要があるのか?」です。もし臨床で腰痛のみを扱うのであれば最新の情報を追い続けることはできるかもしれません。しかし頸部・肩・膝・足など多くの疾患も同時に扱うのであれば最新の情報を常に追い続けるのは現実的ではありません。

そこでMartínezら(2014)はガイドラインの推奨事項が古くなるまでにかかる時間を推定しました[2]。
結果として1年後92.0%の推奨がまだ有効であり2年で85.7%、3年後で81.3%、4年後では77.8%が有効でした。そのためガイドラインの推奨の約2​​0%の情報の消費期限は3年以内です。著者らはガイドラインのレビューを3年以上待つのは長すぎると結論づけました。

同様にShekelleら(2001年)は 17の臨床ガイドラインのうち、半分が5.8 年で時代遅れになったと推定しガイドラインは発行後3年ごとに見直されるべきであると結論づけています[3]。

ガイドラインの消費期限は腰痛診療ガイドラインに当てはまるか?

腰痛診療ガイドラインは旧版が2012年、改訂第2版が2019年発行です。最新版から現在(2023/03/31)までにすでに4年目に入っており、推奨事項のいくつかは既に時代遅れとなっている可能性があります。

以下は会員の方のみ閲覧できます。
主な内容は以下のようになっています。
・腰痛ガイドラインの歴史的な推奨事項
・腰痛ガイドラインは時間経過によって変更されているか?
・最近のガイドラインの紹介
・臨床ガイドラインの定義

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