変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症は(Knee OA:Osteoarthritis)は、膝の退行性関節疾患(DJD:degenerative joint disease)としても知られ、一般的に関節軟骨の磨耗と損傷、進行性の喪失の結果で高齢者に多く見られます。
変形性膝関節症は一次性(Primary osteoarthritis)と二次性(Secondary osteoarthritis)の2種類に分けられます。
一次性変形性膝関節症は、明らかな基礎疾患のない関節の変性で、二次性変形性膝関節症は、外傷後のように関節に異常な力が集中したり、関節リウマチのように関節軟骨に異常が生じたりした結果起こるものです。
一般的な臨床症状としては、徐々に発症し活動時に悪化する膝の痛み、膝のこわばりや腫れ、長時間座ったり休んだりした後の痛み、時間の経過とともに悪化する痛みなどがあります。変形性膝関節症の治療は保存的治療から始まり、保存的治療がうまくいかない場合は外科的治療へと進みます。
変形性膝関節症を有している患者さんは歩行やランニングをすることでより悪化すると考え活動を制限してしまうことがあります。
一方で変形性膝関節症に対するダイエットや運動はガイドラインでも推奨される基本的な介入のひとつで、このような場合、患者さんの好みと医療者の勧めたい介入が相反することにもなります。
ランニングは変形性膝関節症を悪化させるか?
Loら(2018)は少なくとも片方の膝に変形性関節症のある50歳以上の患者を対象に変形性膝関節症患者にとってランニングが有害かどうかを評価しました[1]。
これらの参加者のうち1808人がOA膝関節症で、205人がランナー(最も頻繁に行う上位3つの身体活動とし20分以上のランニングまたはジョギングを選んだ)、1603人が非ランナーでした。
結果として48ヶ月間で、非ランナーに比べ、ランナーはKL分類の悪化、Medial JSNの悪化(どちらも構造上の変形に関する指標)、新たな膝痛のオッズを増加させませんでした。
一方、ベースライン時の頻繁(1ヶ月の半分以上の日)な膝の痛みから、頻繁な膝の痛みがない状態への移行と定義される「頻繁な膝の痛みの改善」の調整オッズ比は1.7(1.0~2.8)でした。
KL分類の悪化 | 転帰の有病率 | 調整オッズ比 |
非ランナー | 307/1603 (19.2%) | Ref |
ランナー | 32/205 (15.6%) | 0.9 (0.6 – 1.3) |
Medial JSNの悪化 | 転帰の有病率 | 調整オッズ比 |
非ランナー | 378/1603 (23.6%) | Ref |
ランナー | 40/205(19.5%) | 0.8 (0.5 – 1.2) |
新しい頻繁な膝の痛み | 転帰の有病率 | 調整オッズ比 |
非ランナー | 293/1009 (29.0%) | Ref |
ランナー | 33/123 (26.8%) | 0.9 (0.6 – 1.6) |
頻繁な膝の痛みの改善 | 転帰の有病率 | 調整オッズ比 |
非ランナー | 232/594 (39.1%) | Ref |
ランナー | 41/82 (50.0%) | 1.7 (1.0 – 2.8) |
頻繁な膝の痛みが改善した人は、そうでない人と比較して、ベースライン時と追跡調査時とのBMIの変化に統計学的有意差はなかったためBMIはランニングの潜在的な利点を決定する重要な要素ではない可能性があります。
臨床的意義
50歳以上の変形性膝関節症患者において、ランニングは膝関節痛の長期的な悪化やX線検査による構造的な進行とは関連しておらず、頻繁な膝の痛みの改善もみられたことから、変形性膝関節症患者において、ランニングに有益性が示唆されました。
この報告で重要なことは、ランニングが義務付けられたからではなく自発的に走ったという点です。
そのため医療者が走るように指示した場合、同じような結果が得られない可能性があります。
それでもランニングが構造的な悪化を促進するだけでなく、頻繁な痛みが消失する効果があることは医療者にとっても動くことを恐怖している患者さんにとっても有益な情報となります。
このような安心感を与える情報は医療面接の患者教育に組み込むことで恐怖回避信念を軽減させることが期待できます。
[2]Hsu, H., & Siwiec, R. M. (2023). Knee Osteoarthritis. In StatPearls. StatPearls Publishing.
記事情報
- 公開日:2023/09/13
参考文献を除く本文:1684文字
参考文献を含む本文:2152文字
画像:1枚 - 最終更新日:2023/09/13
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