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現在の慢性疼痛治療の問題


今回はエビデンスベースの話というより、最近よんでいた論文で、現在の慢性疼痛治療に対する「苦言」が面白かったものを紹介しようと思います。

なので紹介する文言は紹介する論文の主旨とは異なります。

まず最初はこの論文からです。割と最近のやつです。

参考文献:Mardian AS, Hanson ER, Villarroel L, et al. Flipping the Pain Care Model: A Sociopsychobiological Approach to High-Value Chronic Pain Care. Pain Med. 2020;21(6):1168-1180. doi:10.1093/pm/pnz336

「現在のエビデンスと矛盾するまでに発展したりすると、価値の低いケアが当たり前になってしまう」

これはアメリカの話でしたが、日本もそうですよね。医療従事者がエビデンス(ガイドラインなど)を知らないっていう問題と今の医療体制として、あるいは社会的価値観的にエビデンスと矛盾するケアが当たり前になっているようにみえます。

特に、慢性疼痛は明確に大きな効果がある治療法が現在存在しないという背景はあるものの、個人的な感覚とか経験に基づいたアプローチがあまりにも神格化されていたり、あとは流行りの治療もですよね。

トリガーポイントとか体幹トレーニングとか、筋膜リリースとか

→この辺に関する批判的意見は「トリガーポイント・触診・サブラクセーション・アナトミートレインに気を付けて!」をご覧ください。

流行りものがわるいわけではないですけそ、それによる悪影響がどこまで理解されているのかなという疑問がでてきます。

例えば治療法が多いことで患者が多様な治療が選べるという主張があるわけですけれど、その分より効果のでやすい治療が受けにくくなる要因にもなります。より根拠のあるアプローチを見つけられなくなります。

典型的には、慢性疼痛に対する湿布とか、マッサージとか骨盤矯正とかガイドラインで推奨されていないものが一般的なケアとなっています。

「エビデンスに基づいた」を根付かせるには長期間と根気がいる訳ですが、(そうでない人がいることで阻害されているので余計)徐々にやっていかないとどうしようもないことなので、やっていきましょーって推奨してます。

これに関連して次の言葉

「ケアモデルを構成する暗黙の前提や見解を無意識のうちに持っていることが多い」

このウェブサイトでも「検証されずに確信されていることが多くないか?」というのを柱として運営している訳ですが、

慢性疼痛治療に関してはそれがより顕著というはほとんどそうですよね。

暗黙の前提が多すぎます。例えばマッサージは血流促進させたり、筋を弛緩させることを目的とされていることがありますが、疼痛は軽度の血流障害や筋緊張で生じますか?そんな根拠はないはずです。

にもかかわらず何年もその考えが進行されています。

我々は前提を見直す必要があります。ある理論が提唱されたら「本当にそうかな?」と考える必要があります。Twitterをみていると「批判はよくない!」って意見をみますが、批判しないからそうなっているんです( ゚Д゚)ってことが理解されると良いですね。

「BMモデルは、痛みの原因と考えられる組織を麻痺させたり、破壊したり、除去しようとする治療法につながっている」

痛みの原因を構造にみる時代は終わった」で解説していますが、昔はBM model(生物医学モデル)という考え方で疼痛を考えていましたが、現在はBPS modelで考えることが増えてきてます(日本ではあまり普及してないかもしれませんが)。

それで従来の考え方であるBMモデルでは、痛みの原因はこう!、そして原因をつぶせば疼痛がなくなるって考えている人が異常に多いんです。

これは2つの問題を抱えています。

  • 痛みの原因は見つけることができますか?
  • 原因をつぶしたら痛みはなくなりますか?

従来の考え方はあまりにも還元主義なんですけど、脳の中に刷り込まれてるのでなかなか脱却できない問題です。

次はこの論文からです・

参考文献:Moseley GL. Whole of community pain education for back pain. Why does first-line care get almost no attention and what exactly are we waiting for?. Br J Sports Med. 2019;53(10):588-589. doi:10.1136/bjsports-2018-099567

「無用な治療を提供する理学療法士や医師へのいつもの憤り」

医療に携わっていてよく思うのは「その治療いる?」というので、この背景にあるのは「よりアプローチすることがより患者のためである」という、恐らく一部の人が考えていることです。
というか、多分その一部の人は本当にそう思っていない人もいます。経営のためにいろんな治療を売った方がお金になるからじゃあ「よりアプローチすることがより患者のためである」という価値観を社内に巡らせれば良いよねってのが根底にある場合もあるんだと思います。
これに似たようなものでいえば
「その評価いる?」ってのがあります。
おれも「より評価することがより患者のためである」ってのがもとになっている気がします。
そして同様に経営のために根拠のない治療も売った方がお金になるからじゃあ「よりアプローチすることがより患者のためである」として、痛みに関係ないようなものを評価してそれを改善すれば痛みが取れますよっていう説明に都合が良いから「その評価いる?」ってものが正当化されていることがあります。

「教育は、急性でしつこい腰痛の第一選択治療として普遍的に推奨されていますが、ほとんど注目されていません」

なぜか痛み教育って教育されないですよね。

そして着目されないですよね。私は痛み教育に関する記事って割と大きめのウェイトをかけて書いてるんですけど、やっぱりストレッチとかそういうののほうが需要はあります。

もう少し痛み教育に着目されても良いんじゃないかなとは思っています。

また、この文言で気にすべきはやっぱり推奨されることがほとんど注目されてないってことだと思います。

推奨ってのは大抵推奨される根拠があるものです。

推奨されない治療ってのは大腿推奨されない根拠があるものです。

編集後記

そういえば最近Amazonが本読み放題のサービスを始めたみたいですね( ゚Д゚)昔からオーディオブック聞いてた私としてはありがたい… オーディオブックって歩きながらでも勉強できるし、目が疲れないからつよいですよね。 1冊無料で聞けるので是非 ↓Amazon オーディブル

-最新note情報-

Pain magazineではここまで従来の治療をいくつか批判的に観てきました。 構造主義的な観点、触診・アナトミートレイン・トリガーポイント・サブラクセーション そして今回は「バイオメカニクス」です。 (一応joint by jointとか筋膜とか心因性とかその辺も書こうと思ってます) 私の勝手なイメージですけど、バイオメカニクスを深く勉強している人ってのは勉強熱心なイメージがあります。 また、ある会社で技術と知識レベルの高い先生に「(骨格筋痛に携わる)医療従事者がとりあえず勉強すべきことってなんだと思いますか?」って聞いた時には「バイオメカニクス」と答えていました。 当時は私も同じ考えでした。 バイオメカニクスの知識が高ければ、多くの臨床で高い効果を得られるんじゃないかって思っていたからです。 それは疼痛の知識がなかったからですけれど…つまり「疼痛リテラシー」が欠如していたわけです。 これは疼痛の観点から、バイオメカニクスでは足りないってことに気づいたわけですけれど、他にもバイオメカニクス視点からバイオメカニクスはどうか?って視点も必要になってきます。 ということで今回の主題はバイオメカニクス批判です。 バイオメカニクスってとりあえず勉強しとけば治療の役に立つって考えられていますよね? でもこれって事実か事実じゃないかに限らず思考停止的な考えだと思います。 明確な根拠があるわけじゃなくて「なんとなく正しいだろう」ですよね。 「なんとなく」正しい気がして 「なんとなく」勉強することで疼痛治療に詳しくなった気がして 「なんとなく」それが治療に影響する気がして 「なんとなく」意味があるように感じるんですよね。 なぜなら、バイオメカニクスの理屈って一見論理的だからです。 一見論理的だから正しく見えます。 私が普段よく言っているヴィトゲンシュタインの言葉を借りるのなら「検証されずに確信されていることが多くないか?」に当てはまります。 特にこのバイオメカニクスへの強いフォーカスを促しているのはその”難解さ”だと思います。 解剖学はどちらかというと考えるより覚えるようなものですが、バイオメカニクスは考えなければ理解できません。 人って難解なものを学ぶとそれが正しいと思いがちです。 しかしそれは難解さにゆえ、それの価値を正しく判断することがバイオメカニクスを学ぶ以上に難解になります。 ここでは「慢性腰痛とバイオメカニクス」という観点から批判していきます。 ここでの扱うテーマは慢性腰痛治療において ●バイオメカニクスを勉強することで治療成績は上がるか? ●バイオメカニクスを治療に取り入れる意味はあるのか? です。

-note記事まとめ-

当サイトでは疼痛治療をより良いものにアップデートするためのツールをいくつか提供しています。 疼痛治療では「痛みとは何か」を理解する必要があります。 その理由は単純で疼痛治療の目的に「疼痛」が含まれるからです。 何をするか、どのようにするかは常に目的ではありません。 目的である疼痛が何かを理解しなければ治療は目的に向かうことが難しくなります。 もしかしたら、治療がうまくいかない時は目的を見失っているのかも知れません。 疼痛リテラシーアップデートは現在の疼痛科学に基づいた疼痛を解説します。 疼痛科学に基づいた運動療法は、理論ではなく実技中心です。 従来の運動療法は機能やバイオメカニクスに基づいたものが多く、しかし統計的にみてそれらの運動療法は大きな成果を挙げられませんでした。 疼痛科学に基づいた運動療法は、科学に基づいた運動療法です。 機能やバイオメカニクスという狭い視点から脱却し、運動療法をより良いものに変えたい方にお勧めです。 痛み情報を発信するマガジンです。月額制ではありません。
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