ハムストリングスの伸張性と骨盤の傾き

いくつかの研究はハムストリングスの伸張性(SLR・AKE)は立位の骨盤の傾きと相関しないことを報告しています[3][4]。またShamsiらはハムストリングスのストレッチやストレングスエクササイズが立位の骨盤の角度を変更しなかったと報告しました[5]。

しかしこれだけの情報からハムストリングスのストレッチが骨盤の角度を変えることはないというには不十分です。ということで他の研究も見ていきます。

ストレッチは骨盤の傾きを変化させるのか?

López-Miñarroらはハムストリングのストレッチによる脊柱と骨盤の角度の急性効果を調査しました[1]。
被験者は警察職員55 名、平均29.24歳でした。

ストレッチプロトコールは4種類のハムストリングスのストレッチで構成されており、ストレッチの強度は「大腿後面に軽い伸張感が感じられるまで」と設定されました。各エクササイズ20秒×3セットで構成されました。

その結果、シットアンドリーチテストでは、ストレッチ後に脊柱の角度と骨盤傾きが変化しました。
骨盤前傾と腰椎屈曲が増加し(p<0.001)、胸椎後弯は減少しました。

立位とマクレー&ライトテストでは、ストレッチ前とストレッチ後の測定値の間に有意差は認められませんでした。

立位 ストレッチ前 ストレッチ後
胸椎 43.92±10.49° 42.45±11.04°
腰椎 −24.71±6.75° −24.69±9.28°
骨盤の傾き 11.29±4.88° 11.76±6.43°
シットアンドリーチテスト ストレッチ前 ストレッチ後
胸椎 70.00±11.39° 63.55±11.45°
腰椎 25.51±7.38° 27.37±7.80°
骨盤の傾き −13.31±11.94° −8.37±12.09°
マクレー&ライトテスト ストレッチ前 ストレッチ後
胸椎 71.71±8.47° 71.63±10.15°
腰椎 29.51±8.64° 29.39±8.63°
骨盤の傾き 46.04±10.27° 46.80±13.40°

Bormanらは2種類の異なる静的ストレッチが立位の腰椎の弯曲に与える影響を調査しました[2]。

ストレッチプロトコルはシッティングストレッチ、スタンディングストレッチ、コントロールに割り当てられました。ストレッチの強度は「強いが我慢できる程度の筋肉のつっぱり感」と設定され、30秒間×2回、週4回、4週間行われました。

結果としてストレッチによって腰椎の弯曲は有意に変化しませんでした。

腰椎の弯曲 ストレッチ前 ストレッチ後
座位ストレッチ 66(16) 81(15)
立位ストレッチ 60(21) 68(19)
対照 58(17) 66(18)

臨床的意義

これらの結果は他の研究とも一致しています。
ハムストリングスのストレッチは立位における骨盤の角度や腰椎の弯曲を変化させることはできませんでした。

そのため姿勢を変化させるためにハムストリングスのストレッチを行うのは妥当ではない可能性があり、またハムストリングスが骨盤を後継させる説は誤りだと考えられます。

 

参考文献
[1]López-Miñarro, P. A., Muyor, J. M., Belmonte, F., & Alacid, F. (2012). Acute effects of hamstring stretching on sagittal spinal curvatures and pelvic tilt. Journal of human kinetics31, 69–78. https://doi.org/10.2478/v10078-012-0007-7
[2]Borman, N. P., Trudelle-Jackson, E., & Smith, S. S. (2011). Effect of stretch positions on hamstring muscle length, lumbar flexion range of motion, and lumbar curvature in healthy adults. Physiotherapy theory and practice27(2), 146–154. https://doi.org/10.3109/09593981003703030
[3]Muyor, J. M., Alacid, F., & López-Miñarro, P. A. (2011). Influence of hamstring muscles extensibility on spinal curvatures and pelvic tilt in highly trained cyclists. Journal of human kinetics, 29, 15–23. https://doi.org/10.2478/v10078-011-0035-8
[4]Norris, Christopher & Matthews, Martyn. (2006). Correlation between hamstring muscle length and pelvic tilt range during forward bending in healthy individuals: An initial evaluation. Journal of Bodywork and Movement Therapies. 10. 10.1016/j.jbmt.2005.06.001.
[5]Shamsi, M., Shahsavari, S., Safari, A., & Mirzaei, M. (2020). A randomized clinical trial for the effect of static stretching and strengthening exercise on pelvic tilt angle in LBP patients. Journal of bodywork and movement therapies, 24(3), 15–20. https://doi.org/10.1016/j.jbmt.2020.02.001

 

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