慢性疼痛の部位別有病率
年齢と有病率の関係は疾患や部位によってことなります。
痛みは加齢により有病率が増加すると信じられていることもありますが、実際そのような関係にある痛みが存在するかは不明です。
そこで部位別に有病率を調査した研究をみていきます。
Anderssonらは3か月以上続く痛みの有病率を調査しました[1]。
年齢別の有病率は、男性の55-59歳まで増加し、その後わずかに減少しました。女性では約5年前にピークに達しました。各部位の疼痛強度は5段階の疼痛スケールで4~5は高強度に分類されました。
男性と比較して、女性の慢性疼痛の有病率は、頸部・肩・前腕・股関節・手で高くなりました。
男性(n=799) | 女性(n=810) | |
頭部・顔 | 6.2% | 7.7% |
頸部・後頭部 | 14.5% | 19.1% |
肩・上肢 | 17.7% | 22.3% |
肘・前腕 | 8.3% | 11.9% |
手 | 8.6% | 16.8% |
胸部・上背部 | 5.8% | 7.1% |
腹部 | 4.4% | 4.5% |
腰 | 23.8% | 22.8% |
股関節・大腿 | 9.8% | 14.3% |
膝 | 4.2% | 12.7% |
下腿・足 | 9.6% | 11.9% |
その他 | 2.0% | 2.2% |
頭部・腹部・胸部に限局した慢性疼痛の有病率は年齢にほとんど依存しませんでした。
<年齢・部位別の慢性疼痛の有病率>
下肢に限局した慢性疼痛は55~59歳まで有病率が増加し、その後はほぼ一定でした。
<年齢・部位別の慢性疼痛の有病率>
頸部・肩・腰・上肢に限局した慢性疼痛は45-54歳と55-64歳で最大になり、その後年齢の増加と共に減少しました。
<年齢・部位別の慢性疼痛の有病率>
<年齢・部位別の慢性疼痛の有病率まとめ>
職種別でみるとブルーカラーはホワイトカラーよりも高い有病率を有していました。
<慢性疼痛の有病率と社会経済レベルおよび年齢との関係>
25-39歳 | 40-59歳 | 60-74歳 | |
ブルーカラー | 48.5 (n = 249) | 71.7%(n = 336) | 65.6% (n = 160) |
大学教育を受けていないホワイトカラー | 26.5% (n = 49) | 51.1% (n = 88) | 57.4% (n = 54) |
大卒のホワイトカラー | 33.8%(n=71) | 42.2% (n=109) | 34.2% (n = 38) |
農業従事者 | 18.1%(n=11) | 54.5% (n = 33) | 61.5% (n = 26) |
雇い主 | 40.5% (n = 37) | 48.0% (n = 75) | 63.8% (n = 47) |
複数の痛みは年齢とともに増加しました。
35歳以上の女性は、同年齢の男性よりも複数の部位の痛みを感じることが多く、慢性疼痛を訴える人の平均疼痛部位数は、女性が2.75であったのに対し、男性は2.28でした。
別の研究では34.4%が過去1年以内に頸部痛を経験し、13.8%が 6か月以上の頸部痛を報告しました[2]。
<一般集団(N = 7648)、男性(N = 3914)と女性(N = 3734)別の頚部痛の頻度と期間>
全て | 男性 | 女性 | |
<1ヶ月 | 9 | 10 | 9 |
1-3ヶ月 | 8 | 6 | 9 |
3-6ヶ月 | 4 | 3 | 5 |
>6ヶ月 | 14 | 10 | 17 |
合計 | 34 | 29 | 40 |
<6ヵ月以上持続する慢性頸部痛>
これらの結果を考慮すると加齢によって単純に有病率が増加する部位はありませんでした。
50-60代でピークに来る部位が多く、これは退職の時期と重なっています。
[2]Bovim, G., Schrader, H., & Sand, T. (1994). Neck pain in the general population. Spine, 19(12), 1307–1309. https://doi.org/10.1097/00007632-199406000-00001