烏口腕筋のイメージ
烏口腕筋は上腕の前方コンパートメントに位置しています。
教科書的には烏口突起の先端から上腕骨体の内側まで伸びる筋であると説明されますが、深部に位置する構造であるため烏口腕筋の形態をイメージするのは簡単ではありません。
そのためここでは解剖学研究で報告されているデータを参照して3Dモデルを作成していきます。
<烏口腕筋の基礎データ>
名称 | 烏口腕筋(うこうわんきん) |
英語表記 | Coracobrachialis muscle |
略称 | CB/ CRM |
起始 | 烏口突起(coracoid process)の先端 |
停止 | 上腕骨体の内側 |
支配神経 | 筋皮神経(Musculocutaneous nerve) |
神経根/分節 | C5-C7 |
作用 | 肩関節屈曲・内転 |
血液供給 | 上腕動脈(Brachial artery) |
筋皮神経と烏口腕筋の関係
筋皮神経が烏口腕筋を貫通しているため筋皮神経絞扼性神経障害の原因として説明されることがあります。
しかし実際どのように貫通しているのか、例外はどれくらいの割合いるのかは一般的な教科書には書かれていません。
Ilayperumaらは312点の上肢の解剖を行い烏口腕筋の形状を調査しました[2]。
筋皮神経が烏口腕筋を貫通する位置は烏口突起から平均して約5cmのところでした。上腕(烏口突起から内側上顆)は平均して29cmでした(図参照)。
筋皮神経の33%は烏口腕筋の上部1/3、50%は中央、0%は下部を貫通しました。
全ての筋皮神経が烏口腕筋を貫通しているわけではなく、83%の上肢で貫通し、17%)では貫通していません。

Szewczykらは101点の上肢を解剖しました[1]。
彼らは烏口腕筋を貫通しなかったタイプを報告しませんでしたが、筋腹を貫通するType I(49.5%)と烏口腕筋の2頭間を通過するType II(50.5%)にタイプ分けしました。


烏口腕筋起始部・停止部
Ilayperumaらは烏口腕筋が肩甲骨烏口突起の先端と上腕二頭筋短頭の外側(83%)、後方(83%)、内側(100%)で起始していると報告しました[2]。
Szewczykらは烏口腕筋の起始部をType I・Type IIa・Type IIb・Type IIIの4つに分けました[1]。
・Type I(49.5%):上腕二頭筋短頭の後内方烏口突起から起始します。
・Type II(42.6%)a:1つの頭が烏口突起の上腕二頭筋腱後方から起始し、もう片方の頭は上腕二頭筋短頭から起始します。
・Type IIb:両頭が烏口突起から起始していますが、表層の頭部は上腕二頭筋短頭と結合しており、深層の頭部は直接烏口突起から起始しています。
・Type III(7.9%):3つの頭があり、2つは烏口突起から、1つは上腕二頭筋短頭から起始します。
停止部はType I・Type IIの2つに分けられました。
・Type I(60.4%):上腕骨遠位1/3のところに停止します。
・Type II(39.6%):一方は上腕骨遠位 1/3のところ停止し、もう一方は上腕三頭筋内側頭と結合します。
これらは3D上ではほとんど見た目が変わらないため作成しませんでした。
烏口腕筋モデル
これらは今後の画像や動画作成にしようしていきます。
※右クリックからループ再生できます。
[2]Ilayperuma, I., Nanayakkara, B. G., Hasan, R., Uluwitiya, S. M., & Palahepitiya, K. N. (2016). Coracobrachialis muscle: morphology, morphometry and gender differences. Surgical and radiologic anatomy : SRA, 38(3), 335–340. https://doi.org/10.1007/s00276-015-1564-y
- 公開日:2023/10/14
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画像・動画:3枚・2本 - 最終更新日:2023/10/14
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