目次
ベリープレステストとは?
ベリープレステスト(Belly-Press test)またはナポレオンテスト(Napoleon Test)またはAbdominal Compression Testは肩甲下筋断裂の検査法です。
ナポレオンテストはナポレオン肖像画の手をお腹にざした姿勢にちなんで名付けられたと言われています[1]。
<絵画に描かれたナポレオン・ボナパルトの肖像画>
肩甲下筋病変の検査法には以下のものがあります。
・Internal rotation lag sign
・リフトオフテスト
・ベリーオフサイン
・ベリープレステスト
・ベアハグテスト
ベリープレステストの検査目的
ベリープレステストは腱板断裂の中の特に肩甲下筋断裂に特化した検査法です。
他の肩甲下筋断裂の検査法であるリフトオフテストが痛みなどで行えない際の代替案としても用いられます。
ベリープレステストの検査手順
- 患者は肘を90度に曲げ、手を腹部に当てます。
- 上腕を内旋させて手のひらを腹部に押し付けます。
<ベリープレステストの開始位置>
<ベリープレステストの終了位置>
手と腹部の間に張力計を挟む方法や、手と腹部の間に検者の手を挟む方法もあります。
ベリープレステストの陽性所見
患者が手関節を曲げて腹部に手を押し付ける場合、この検査は陽性とみなされます。
また肩の伸展や対側と比べて弱い場合に陽性とされることもあります。
<ベリープレステスト陽性所見:手関節の屈曲>
ベリープレステストの検査精度
Yoonらの報告では肩甲下筋病変に対するベリープレステストの感度は0.28、特異度は0.99、陽性尤度比は28、陰性尤度比は0.73でした[2]。
彼らは手のひらを腹部に押し付ける方法を用い、手関節の屈曲を陽性所見としました。
この調査の被験者は312人の肩関節鏡手術を受ける予定の患者で、参照基準は関節鏡検査による診断でした。
彼らは手のひらを腹部に押し付ける方法を用い、手関節の屈曲を陽性所見としました。
この調査の被験者は312人の肩関節鏡手術を受ける予定の患者で、参照基準は関節鏡検査による診断でした。
ベリープレステストの注意点
文献によって検査手順や陽性所見にばらつきがあるため検査精度を参照する際はこの2つに特に注意する必要があります。
修正ベリープレステスト
手関節の最終的な屈曲角度をゴニオメーターで測定し、測定値が左右で少なくとも10度異なる場合に陽性とみなす場合、修正ベリープレステスト(Modified belly-press test)と呼ばれます。
リフトオフテストとベリープレステストの比較
リフトオフテストとベリープレステストは他のすべての筋より有意に高い肩甲下筋上部・下部の活動が見られます。次に活動的な筋はそれぞれ大円筋と棘上筋ですがこれらの筋は25%MVC未満です。
またベリープレステスト中の肩甲下筋上部のEMG活動はリフトオフテストより高く、リフトオフテスト中の肩甲下筋下部のEMG活動はベリープレステストより高いという報告があります[3]。
そのためリフトオフテストは肩甲下筋下部のテストとして、ベリープレステストは肩甲下筋上部のテストとして活用できる可能性があります。
ただし、実際にこの2つのテストが上部と下部を分けて検査できるかは明らかではありません。
またベリープレステスト中の肩甲下筋上部のEMG活動はリフトオフテストより高く、リフトオフテスト中の肩甲下筋下部のEMG活動はベリープレステストより高いという報告があります[3]。
そのためリフトオフテストは肩甲下筋下部のテストとして、ベリープレステストは肩甲下筋上部のテストとして活用できる可能性があります。
ただし、実際にこの2つのテストが上部と下部を分けて検査できるかは明らかではありません。
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参考文献
[1]Burkhart, S. S., & Tehrany, A. M. (2002). Arthroscopic subscapularis tendon repair: Technique and preliminary results. Arthroscopy : the journal of arthroscopic & related surgery : official publication of the Arthroscopy Association of North America and the International Arthroscopy Association, 18(5), 454–463. https://doi.org/10.1053/jars.2002.30648
[2]Yoon JP, Chung SW, Kim SH, Oh JH. Diagnostic value of four clinical tests for the evaluation of subscapularis integrity. J Shoulder Elbow Surg. 2013 Sep;22(9):1186-92. doi: 10.1016/j.jse.2012.12.002. Epub 2013 Feb 20. PMID: 23434234.
[3]Tokish, J. M., Decker, M. J., Ellis, H. B., Torry, M. R., & Hawkins, R. J. (2003). The belly-press test for the physical examination of the subscapularis muscle: electromyographic validation and comparison to the lift-off test. Journal of shoulder and elbow surgery, 12(5), 427–430. https://doi.org/10.1016/s1058-2746(03)00047-8
[2]Yoon JP, Chung SW, Kim SH, Oh JH. Diagnostic value of four clinical tests for the evaluation of subscapularis integrity. J Shoulder Elbow Surg. 2013 Sep;22(9):1186-92. doi: 10.1016/j.jse.2012.12.002. Epub 2013 Feb 20. PMID: 23434234.
[3]Tokish, J. M., Decker, M. J., Ellis, H. B., Torry, M. R., & Hawkins, R. J. (2003). The belly-press test for the physical examination of the subscapularis muscle: electromyographic validation and comparison to the lift-off test. Journal of shoulder and elbow surgery, 12(5), 427–430. https://doi.org/10.1016/s1058-2746(03)00047-8