目次
足の構造とオーバーユース
特に衝撃を吸収する役割と、力を効率的に発揮する役割を持つアーチは足の構造の中でも評価対象として頻繁に用いられており、ハイアーチは柔軟性がなく(inflexible)がなく、扁平足は過剰可動性(hypermobile)として結果的にオーバーユースに寄与する因子として考えられています。しかしアーチが与える影響力は過剰に説明されることもあり、足部のみならず膝、股関節、腰、頸部、上肢の疾患にも寄与すると主張する人もいます。
アーチの影響力に関する主張には人によってばらつきがありますが、臨床的に重要なのは、実際にどの疾患にどの程度寄与しているか、そしてそれらに介入することで予後を変更できるかです。

オーバーユースとは?
不適切な休息によって構造的適応が起こらなかった場合に、筋骨格系の最大下負荷が繰り返されることによる損傷のことをOveruse injuryと言います。損傷は急性の臨床的損傷に至らない外傷と定義される反復的な微小損傷(Microtrauma)が生じたり、既に損傷した組織に弱い力を繰り返し加えることによって生じることがあります[3]。
またランニングの文脈では少なくとも1週間、ランニングの速度、距離、時間、頻度が制限される筋骨格系の疾患と定義されることもあります[4]。
代表的なOveruse injuryには疲労骨折、シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)、腸脛靭帯炎(ランナー膝)、膝蓋大腿症候群、アキレス腱障害などがあります。
足の構造と可動域と損傷の関係
Kaufmanらは足の構造と可動域がオーバーユース(アキレス腱付着部症を含まないアキレス腱障害・疲労骨折・膝蓋大腿症候群・腸脛靭帯炎)に関連しているか訓練を開始した軍人の候補者449人を対象にコホート研究を行いました[1]。
評価項目と注意点
<足関節背屈の測定法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
0-20° | 矢状面における腔骨長軸への垂直線 | 足底面 | 膝関節を屈曲位で行う | ![]() |
<足関節底屈の測定法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
0-45° | 矢状面における腔骨長軸への垂直線 | 足底面 | 膝関節を屈曲位で行う | ![]() |
ここで用いられた内がえしと外がえしは本邦の方法と大きく異なります。本邦の内がえし・外がえしは前方から測定するのに対し、ここで用いられた後方から測定する方法はTalocalcaneal (またはsubtalar) inversion/ eversion(後述)と呼ばれ、後足部の動きを主に評価するため通常前方からの測定より測定値は小さくなります。
<本邦で用いられる足関節・足部内がえしの測定法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
0-30° | 前額面における下腿軸への垂直線 | 足底面 | 膝関節を屈曲位、足関節を 0 度で行う | ![]() |
<本邦で用いられる足関節・足部外がえしの測定法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
0-20° | 前額面における下腿軸への垂直線 | 足底面 | 膝関節を屈曲位、足関節を 0 度で行う | ![]() |
<距骨下関節内がえしの測定法>
いわゆるTalocalcaneal (またはsubtalar) inversion/ eversionは内がえし・外がえしで行う方法と回内・回外で行う方法がありますが、ここでは具体的な方法が明記されておらず得られる情報が「ゼロスタートポジションは、踵を脛骨の正中線に合わせ、足関節を緩やかに背屈させた状態(つまり、アキレス腱が張った状態)と定義した。」しかないため正確な方法は不明でした。inversion/ eversionが内がえし・外がえしを指すのか回内・回外を指すのかは著者によって異なります。また能動的か受動的かの記載もありませんでした。
ここではどちらの方法も極力本邦の可動域評価法の記載方法に準じて紹介します。
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
N/A | 内果と外果の中点を通過する下腿後面の正中線 | 踵骨後面の正中線 | 背屈・底屈0° | ![]() |
<距骨下関節外がえしの測定法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
N/A | 内果と外果の中点を通過する下腿後面の正中線 | 踵骨後面の正中線 | 背屈・底屈0° | ![]() |
<距骨下関節回外の測定法>
ここでは回外・回内と表記していますが、正確には回外・回内なのか底屈+内がえし・底屈+外がえしなのか(つまり内転・外転を含むか否か)は明確ではありません。
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
N/A | 内果と外果の中点を通過する下腿後面の正中線 | 踵骨後面の正中線 | 足底位を維持する | ![]() |
<距骨下関節回内の測定法>
参考可動域 | 基本軸 | 移動軸 | 測定肢位および注意点 | 参考図 |
N/A | 内果と外果の中点を通過する下腿後面の正中線 | 踵骨後面の正中線 | 足底位を維持する | ![]() |
<静的なアーチ(Bony arch index)の評価>
足の長さは踵骨後面から中足指節関節までを指します。

動的なアーチの評価は臨床では一般的に用いられないため、ここでは図示しませんが、足底の総接触面積に対する中足部の足底の接触面積の比として計算されます。
足関節可動域の平均
平均(SD) | 最大, 最小 | |
背屈(膝伸展位) n=407 | 13.3(4.5) | -5.5, 29.0 |
背屈(膝屈曲位) n=409 | 20.5(5.5) | -12.5, 34.5 |
内がえし n=423 | 27.9(9.6) | 0.0, 46.5 |
外がえし n=423 | 11.4(5.3) | 0.0, 40.0 |
Bony arch indexの平均
平均(SD) | 最大, 最小 | |
静的な評価 n=423 | 21.52(3.55) | 7.06, 33.04 |
足の構造と可動域、疲労骨折の関係
ハイアーチまたは扁平足の場合、疲労骨折が発症しやすい傾向がありましたが、靴で動的に評価された場合にのみ、扁平足と疲労骨折のリスクに正常と比べた疲労骨折の発生率て有意差がありました(表内の太字参照)。
可動域と疲労骨折の発生率に関連はありませんでした。
<足の構造と可動域に関連した疲労骨折の発生率と相対リスク>
静的な評価 | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>22.8) | 9.9 | 1.71 | 0.74, 3.95 |
正常(20.0–22.8) | 5.8 | 1.00 | - |
扁平足(<20.0) | 10.8 | 1.86 | 0.82, 4.25 |
動的な評価(裸足) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>4.14) | 8.5 | 1.70 | 0.59, 4.89 |
正常(4.14–8.10) | 5.0 | 1.00 | - |
扁平足(<8.10) | 10.9 | 2.18 | 0.80, 5.98 |
動的な評価(靴) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>4.14) | 8.6 1.82 0.63, 5.24 | 1.70 | 0.59, 4.89 |
正常(4.14–8.10) | 4.7 | 1.00 | - |
扁平足(<8.10) | 11.5 | 2.45 | 0.89, 6.70 |
足背屈(膝伸展位) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>11.5°) | 8.7 | 0.91 | 0.42, 1.96 |
正常(11.5-15.0°) | 9.5 | 1.00 | - |
柔軟(<15.0°) | 8.6 | 0.90 | 0.43, 1.91 |
足背屈(膝屈曲位) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>18.5°) | 7.8 | 0.87 | 0.39, 1.95 |
正常(18.5-23.0°) | 8.9 | 1.00 | - |
柔軟(<23.0°) | 10.1 | 1.14 | 0.55, 2.38 |
内がえし | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>26.0°) | 7.9 | 0.95 | 0.43, 2.13 |
正常(26.0-32.5°) | 8.3 | 1.00 | - |
柔軟(<32.5°) | 10.3 | 1.24 | 0.60, 2.56 |
外がえし | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>9.5°) | 9.1 | 1.01 | 0.48, 2.14 |
正常(9.5-13.5°) | 9.0 | 1.00 | - |
柔軟(<13.5°) | 8.5 | 0.95 | 0.45, 2.01 |
足の構造と可動域、アキレス腱障害の関係
アキレス腱障害とアーチはどの評価方法でも関連はありませんでした。
しかし屈曲位での背屈制限(>11.5°)と内がえし可動域の高さ(<32.5°)は高いリスクを有していました(表内の太字参照)。
本邦の一般的な背屈可動域の足底では膝関節屈曲位で足底しますが、この方法での背屈制限はアキレス腱障害と関連していませんでした。
<足の構造と可動域に関連したアキレス腱障害の発生率と相対リスク>
静的な評価 | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>22.8) | 5.7 | 1.60 | 0.54, 4.77 |
正常(20.0–22.8) | 3.6 | 1.00 | - |
扁平足(<20.0) | 5.8 | 1.62 | 0.54, 4.84 |
動的な評価(裸足) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>4.14) | 4.8 | 1.25 | 0.35, 4.52 |
正常(4.14–8.10) | 3.8 | 1.00 | - |
扁平足(<8.10) | 7.4 | 1.93 | 0.60, 6.20 |
動的な評価(靴) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>4.14) | 5.8 | 1.23 | 0.39, 3.92 |
正常(4.14–8.10) | 4.7 | 1.00 | - |
扁平足(<8.10) | 5.7 | 1.20 | 0.38, 3.81 |
足背屈(膝伸展位) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>11.5°) | 7.9 | 3.57 | 1.01, 12.68 |
正常(11.5-15.0°) | 2.2 | 1.00 | - |
柔軟(<15.0°) | 5.7 | 2.57 | 0.70, 9.49 |
足背屈(膝屈曲位) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>18.5°) | 4.7 | 1.08 | 0.36, 3.26 |
正常(18.5-23.0°) | 4.4 | 1.00 | - |
柔軟(<23.0°) | 5.8 | 1.32 | 0.47, 3.71 |
内がえし | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>26.0°) | 4.7 | 1.71 | 0.49, 5.93 |
正常(26.0-32.5°) | 2.7 | 1.00 | - |
柔軟(<32.5°) | 7.6 | 2.79 | 0.91, 8.55 |
外がえし | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>9.5°) | 3.7 | 0.68 | 0.23, 2.02 |
正常(9.5-13.5°) | 5.5 | 1.00 | - |
柔軟(<13.5°) | 5.8 | 1.04 | 0.40, 2.70 |
足の構造と可動域、腸脛靭帯炎の関係
足の構造と可動域はどちらも腸脛靭帯炎と関連していませんでした。
<足の構造と可動域に関連した腸脛靭帯炎の発生率と相対リスク>
静的な評価 | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>22.8) | 9.9 | 1.24 | 0.58, 2.63 |
正常(20.0–22.8) | 58.0 | 1.00 | - |
扁平足(<20.0) | 9.3 | 1.16 | 0.54, 2.49 |
動的な評価(裸足) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>4.14) | 9.5 | 1.21 | 0.50, 2.95 |
正常(4.14–8.10) | 7.8 | 1.00 | - |
扁平足(<8.10) | 10.1 | 1.29 | 0.54, 3.07 |
動的な評価(靴) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>4.14) | 9.5 | 1.46 | 0.58, 3.68 |
正常(4.14–8.10) | 6.5 | 1.00 | - |
扁平足(<8.10) | 11.5 | 1.76 | 0.72, 4.30 |
足背屈(膝伸展位) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>11.5°) | 7.9 | 0.70 | 0.33, 1.51 |
正常(11.5-15.0°) | 11.2 | 1.00 | - |
柔軟(<15.0°) | 7.7 | 0.69 | 0.33, 1.44 |
足背屈(膝屈曲位) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>18.5°) | 10.3 | 1.10 | 0.53, 2.27 |
正常(18.5-23.0°) | 9.4 | 1.00 | - |
柔軟(<23.0°) | 8.0 | 0.85 | 0.39, 1.82 |
内がえし | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>26.0°) | 9.4 | 0.98 | 0.47, 2.05 |
正常(26.0-32.5°) | 9.5 | 1.00 | - |
柔軟(<32.5°) | 8.4 | 0.88 | 0.42, 1.84 |
外がえし | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>9.5°) | 9.0 | 0.90 | 0.43, 1.87 |
正常(9.5-13.5°) | 10.0 | 1.00 | - |
柔軟(<13.5°) | 8.3 | 0.83 | 0.40, 1.74 |
足の構造と可動域、膝蓋大腿症候群の関係
足の構造と可動域はどちらも膝蓋大腿症候群と関連していませんでした。
<足の構造と可動域に関連した膝蓋大腿症候群の発生率と相対リスク>
静的な評価 | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>22.8) | 9.3 1.29 0.59, 2.84 | 1.71 | 0.74, 3.95 |
正常(20.0–22.8) | 7.2 | 1.00 | - |
扁平足(<20.0) | 5.8 0.80 0.33, 1.97 | 1.86 | 0.82, 4.25 |
動的な評価(裸足) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>4.14) | 6.7 0.79 0.31, 2.05 | 1.70 | 0.59, 4.89 |
正常(4.14–8.10) | 8.5 | 1.00 | - |
扁平足(<8.10) | 4.7 0.56 0.19, 1.60 | 2.18 | 0.80, 5.98 |
動的な評価(靴) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
ハイアーチ(>4.14) | 5.7 1.02 0.34, 3.06 | 1.70 | 0.59, 4.89 |
正常(4.14–8.10) | 5.6 | 1.00 | - |
扁平足(<8.10) | 7.8 1.39 0.50, 3.85 | 2.45 | 0.89, 6.70 |
足背屈(膝伸展位) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>11.5°) | 7.0 0.86 0.37, 2.00 | 0.91 | 0.42, 1.96 |
正常(11.5-15.0°) | 8.2 | 1.00 | - |
柔軟(<15.0°) | 6.3 0.77 0.33, 1.79 | 0.90 | 0.43, 1.91 |
足背屈(膝屈曲位) | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>18.5°) | 10.2 2.00 0.83, 4.86 | 0.87 | 0.39, 1.95 |
正常(18.5-23.0°) | 5.1 | 1.00 | - |
柔軟(<23.0°) | 7.2 1.42 0.56, 3.62 | 1.14 | 0.55, 2.38 |
内がえし | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>26.0°) | 7.1 1.03 0.43, 2.45 | 0.95 | 0.43, 2.13 |
正常(26.0-32.5°) | 6.9 | 1.00 | - |
柔軟(<32.5°) | 8.2 1.19 0.53, 2.67 | 1.24 | 0.60, 2.56 |
外がえし | 発生率 | RR | 95%(CI) |
タイト(>9.5°) | 8.9 1.25 0.56, 2.80 | 1.01 | 0.48, 2.14 |
正常(9.5-13.5°) | 7.1 | 1.00 | - |
柔軟(<13.5°) | 6.3 0.89 0.37, 2.13 | 0.95 | 0.45, 2.01 |
臨床的意義
この調査で足の構造がリスク因子だったのは疲労骨折のみ、低い/高い可動域がリスク因子だったのはアキレス腱障害のみでした。
そのため疲労骨折の予防には足のアーチへの介入、アキレス腱障害の予防には可動域への介入が有効な可能性があります。
一方で腸脛靭帯炎や膝蓋大腿症候群に対してここで調査された要素に介入する必要はないかもしれません。
アキレス腱障害とアーチの関係は他の報告とも一致しています。
Milgromらは1405名の新兵を対象にアキレス腱障害のリスク因子を調査しましたが、アーチの高さとアキレス腱障害は関連していませんでした[2]。
一方で季節はアキレス腱障害と関連しており、発生率は夏に3.6%、冬に9.4%でした。
夏 | 冬 | |
非アキレス腱障害 | 774 96.38% |
631 91.54% |
アキレス腱障害 | 29 3.62% |
66 9.46% |
そのため寒い環境下では運動前に温めることもアキレス腱障害を予防できるかもしれません。
アキレス腱症/ アキレス腱障害(Achilles tendinopathy)とは?
アキレス腱症/ アキレス腱障害は足の使い過ぎ(Overuse)による傷害の中でも最も頻度の高いもののひとつであり、痛み、腫れ、パフォーマンスの低下を伴う臨床的な症候群です[5]。
アキレス腱症は、解剖学的部位によって大きく以下の2つに分類されます[5][8][9]。
腱の踵骨後部への骨性付着部に影響を及ぼす疾患で、腱の遠位3分の1から停止部まで及ぶ痛みを経験します。また、朝のこわばりを経験することもあります。

・アキレス腱症(NIT:noninsertional Achilles tendinopathy)
アキレス腱の踵骨への停止部から2~6cm近位に生じます。触診では硬結(nodule)が目立ち、腱は肥大を示すことがあります。
病状がどこにあるかによって最適な治療法が異なる可能性があるため、この区別は臨床的意義があります。
現在では腱障害(Tendinopathy)はさらに「Tendinitis」「Tendinosis」「Tenosynovitis」に分類されています[6]。
・Tendinitis:腱の痛みと炎症を定義する用語
・Tendinosis:観察された退行性変化を表す用語
接尾語「osis」は、炎症性疾患ではなく、変性プロセスを示しています[7]。
・Tenosynovitis:腱を取り囲む滑膜鞘(Synovial Sheath)の炎症であるため、主に腱自体に変性変化が見られる腱障害(Tendinopathy)とはみなされません。
アキレス腱の基本的な解剖学
アキレス腱は捻れた構造をしており、ヒラメ筋部分は内側に、腓腹筋部分は踵骨後外側に停止します。
腓腹筋とヒラメ筋は脛骨神経から神経支配を受けており、アキレス腱は腓骨神経から感覚神経支配を受けています[5]。

腓腹筋(Gastrocnemius muscle)
腓腹筋は下腿後部にある大きな筋で、ヒラメ筋と合わせて下腿三頭筋(triceps surae)を構成しています。
起始 | ・外側頭(Lateral head) 大腿骨の外側上顆(Lateral condyle) ・内側(Medial head) 大腿骨の内側上顆(Medial condyle) |
停止 | 踵骨隆起 |
支配神経 | 脛骨神経; S1,2(Tibial nerve) |
作用 | 足の底屈、膝関節屈曲 |
ヒラメ筋(Soleus muscle)
腓腹筋は下腿後部にある大きな筋で、腓腹筋よりも深部に位置します。ヒラメ筋と合わせて下腿三頭筋(triceps surae)を構成しています。
起始 | 脛骨後面のヒラメ筋線(Soleal line)、腓骨内側縁、腓骨頭、ヒラメ筋腱弓 |
停止 | 踵骨隆起 |
支配神経 | 脛骨神経; S1,2(Tibial nerve) |
作用 | 足の底屈 |
[2]Milgrom, C., Finestone, A., Zin, D., Mandel, D., & Novack, V. (2003). Cold weather training: a risk factor for Achilles paratendinitis among recruits. Foot & ankle international, 24(5), 398–401. https://doi.org/10.1177/107110070302400504
[3]Hainline, B., Derman, W., Vernec, A., Budgett, R., Deie, M., Dvořák, J., Harle, C., Herring, S. A., McNamee, M., Meeuwisse, W., Lorimer Moseley, G., Omololu, B., Orchard, J., Pipe, A., Pluim, B. M., Ræder, J., Siebert, C., Stewart, M., Stuart, M., Turner, J. A., … Engebretsen, L. (2017). International Olympic Committee consensus statement on pain management in elite athletes. British journal of sports medicine, 51(17), 1245–1258. https://doi.org/10.1136/bjsports-2017-097884
[4]Hreljac A. (2004). Impact and overuse injuries in runners. Medicine and science in sports and exercise, 36(5), 845–849. https://doi.org/10.1249/01.mss.0000126803.66636.dd
[5]Li, H. Y., & Hua, Y. H. (2016). Achilles Tendinopathy: Current Concepts about the Basic Science and Clinical Treatments. BioMed research international, 2016, 6492597. https://doi.org/10.1155/2016/6492597
[6]Hopkins C, Fu SC, Chua E, Hu X, Rolf C, Mattila VM, Qin L, Yung PS, Chan KM. Critical review on the socio-economic impact of tendinopathy. Asia Pac J Sports Med Arthrosc Rehabil Technol. 2016 Apr 22;4:9-20. doi: 10.1016/j.asmart.2016.01.002. PMID: 29264258; PMCID: PMC5730665.
[7]Almekinders, L. C., & Temple, J. D. (1998). Etiology, diagnosis, and treatment of tendonitis: an analysis of the literature. Medicine and science in sports and exercise, 30(8), 1183–1190. https://doi.org/10.1097/00005768-199808000-00001
[8]Medina Pabón, M. A., & Naqvi, U. (2023). Achilles Tendinopathy. In StatPearls. StatPearls Publishing.
[9]Vo, T. P., Ho, G. W. K., & Andrea, J. (2021). Achilles Tendinopathy, A Brief Review and Update of Current Literature. Current sports medicine reports, 20(9), 453–461. https://doi.org/10.1249/JSR.0000000000000884
参考文献を除く本文:6481文字
参考文献を含む本文:8416文字
画像:8枚
・最終更新日:2023/10/107
更新情報無し
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