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トリガーポイント批判|科学のフリしたエセ科学?


トリガーポイントは徒手療法の中でもかなりメジャーなものとなりましたが、批判的な意見をみかけることはほとんどありません。

肯定的な意見は他の書籍やブログに任せるとして、ここではトリガーポイントの批判をまとめていきます。

 

本記事「トリガーポイント批判」はトリガーポイントの臨床での現象を否定するものではありません。

 トリガーポイントとは

トリガーポイントは軟部組織中に存在する過敏な点です。

しばしば筋の中のみに存在すると主張されることがありますが、実際は筋膜などの靭帯や時には骨膜などの中にも形成されるとされます。

トリガーポイントの特徴的な徴候は関連痛(referred pain)です。

痛みの原因(といえるかは微妙なところですが、、、そう主張されています)?で感じられる痛みは「local pain」または「primary pain」と呼ばれています。

痛みの原因から離れた部位で感じられる痛みは「関連痛(referred pain)」と呼ばれます。

関連痛は体のどの部位でも感じることができますが、関連痛領域の大きさはバラバラです。

トリガーポイントによる関連痛の強度と関連痛領域の大きさは中枢神経系の興奮性と正に相関します。

そして関連痛は、交感神経の活動促進と下行性痛覚抑制系機能不全を伴う末梢感作(痛覚閾値の低下および末梢侵害受容器の反応性の増加)により仲介される中枢感作過程であると一般的に考えられています。

トリガーポイントを長期的に保持することで中枢感作に波及する可能性があります。

また侵害刺激は中枢感作までの期間を早めます。

つまりトリガーポイント治療の目的は2つあります。

それは第一に、末梢および中枢神経系の感受性の低下。第二に、下行性痛覚抑制系の活性化です。

そのための手段として、薬理学的、医学的処方、理学療法、認知行動療法や心理療法がアプローチの手段として考えられます。

 

トリガーポイント批判

以前はトリガーポイントは深く批判されることはほとんどありませんでした。

トリガーポイントは妄信的にセラピストに受け入れられてきました。 

2015年にトリガーポイントに批判的な論文が発表されました。

John L. Quintner, Geoffrey M. Bove, Milton L.Cohen, A critical evaluation of the trigger point phenomenon, Rheumatology, Volume 54, Issue 3, March 2015, Pages392–399, https://doi.org/10.1093/rheumatology/keu471

 

この論文はオープンアクセスなので誰でも全文読むことができます。 

ここではアブストラクトの一部を引用します。

トリガーポイントに起因する筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の理論は、局所的な侵害受容の証拠がない場合の筋の痛みと圧痛の現象を説明しようとするものです。

これは外的妥当性を欠くが、多くの臨床家はMPSの診断とその治療システムを無批判に受け入れています。

トリガーポイントと疑わしい組織を調べる実験的アプローチからであっても、予想される病理学に基づいて治療結果を評価する経験的アプローチからであっても、トリガーポイントは科学的根拠のない発明であることがわかります。

したがってトリガーポイントに起因するMPSの理論は否定されています。

 

 

簡単にいえばトリガーポイントとMPSの理論は根拠がないですよということです。

トリガーポイントといえば、トラベルとサイモンズによる書籍“The Trigger Point Manual”が最もメジャーでしょう。

多くの臨床家はこの書籍に書いてあるトリガーポイント、そしてそれに伴った関連痛を参考にしたことでしょう。

しかし多くの人が参照したこの書籍内のトリガーポイントとその対処は科学的ではありません。

これは彼らのひとつの意見です。

彼らの描いた図は時に、根拠なく任意に決定されています。

アナトミートレインも同じように検証されることなく、書籍で意見として発表されています。

科学ではなく、ひとつの意見では信じるに値する情報ではありません。

リウマチ学者のFred Wolfe博士は、トリガーポイントを偽科学の一種と呼び、「偽の証拠に基づいた医療」で、いわゆるエビデンスは「証拠レベルに達することはなく、検証なしに、または適切な科学的根拠なしに、主張、事実、定義、および信念が導き出されます。」であると批判しています

彼はトリガーポイントを偽の証拠に基づく医学や質の低い証拠に基づく医学よりもさらに悪いことだといっています。

トリガーポイントはどこにある?

 

本記事の最初のほうでトリガーポイントが感作である可能性が高いことを述べてしまいましたが、まるでトリガーポイントは筋の中にある構造的な何かのように表現されることが多すぎます。

例えばピンと張ったバンド、筋繊維の収縮など。

しかし筋中に何か構造的問題があるとする根拠はありません。

トリガーポイントを表すためによく使用される、筋繊維が結ばれたような(あるいは短縮したような)画像は誤解を生みます。

実際多くの臨床家が存在しないトリガーポイント、あるいはknotsを解きほぐそうと、あるいはリリースしようと試みています。

これはまるで幽霊に木の棒で立ち向かおうとしているような印象を受けます。

トリガーポイントが解剖学的な実体を持つものという考えは怪しいです。

トリガーポイントを実践する臨床家はトリガーポイントをみつけることができます。彼らがみているものは何でしょうか?

本当にトリガーポイントなのでしょうか?

2009年に行われたトリガーポイント診断の精度を検証するためのシステマティックレビューではトリガーポイントの診断に信頼性がないとしています。

Lucas N, Macaskill P, Irwig L, Moran R, Bogduk N. Reliability of physical examination for diagnosis of myofascial trigger points: a systematic review of the literature. Clin J Pain. 2009;25(1):80–89. doi:10.1097/AJP.0b013e31817e13b6

いくつかのトリガーポイント診断精度を研究は肯定的でいくつかは否定的なのです。

 

トリガーポイントの触診での検査は信頼できないといえます。

 

トリガーポイント実践者はパレイドリアを知る必要があります。

 

Wikipediaによればパレイドリアは

「心理現象の一種。視覚刺激や聴覚刺激を受けとり、普段からよく知ったパターンを本来そこに存在しないにもかかわらず心に思い浮かべる現象を指す。一般的な例として、雲の形から動物、顔、何らかの物体を思い浮かべたり、月の模様から人や兎の姿が見えてきたり、録音した音楽を逆再生したり速く/遅く再生して隠されたメッセージが聞こえてきたり、というものがある」

と説明されます。

パレイドリアによって存在しないトリガーポイントを認識している可能性もあります。

つまりトリガーポイントは常に偽陽性の危険性にさらされているのです。

パレイドリアや偽陽性はトリガーポイントの存在を否定するわけではありません。

ただ信頼性がないだけです。

もっとも衝撃的なトリガーポイントに関する事実は、トリガーポイントマニュアルの著者の一人であるサイモンズがトリガーポイントを実際みつけることができなかったことです。

1992年にサイモンは彼を含む、そしてサイモンが選んだ4人でトリガーポイントの信頼度を調査しました。

検者は必要なだけ検査に時間をかけることができました。

繊維筋痛症、MFP患者、健常者によって盲検化されたこの研究では彼らはトリガーポイントを見つけることができませんでした。

http://www.fmperplex.com/2013/02/14/travell-simons-and-cargo-cult-science/

筋筋膜性疼痛の診断?

いくつかの文献はトリガーポイントの特徴をまとめていますが、一貫性がありません。

Tough EA, White AR, Richards S, Campbell J. Variability of criteria used to diagnose myofascial trigger point pain syndrome–evidence from a review of the literature. Clin J Pain. 2007;23(3):278–286. doi:10.1097/AJP.0b013e31802fda7c

12か国の60人のトリガーポイントの専門家が2018年にトリガーポイントの診断基準のコンセンサスを得るため試みました。

Fernández-de-Las-Peñas C, Dommerholt J. International Consensus on Diagnostic Criteria and Clinical Considerations of Myofascial Trigger Points: A Delphi Study. Pain Med. 2018;19(1):142–150. doi:10.1093/pm/pnx207

コンセンサスは3つの特徴を挙げました。

Taut band in a muscle

タウトバンドのタウトはピンと張った硬さ(stretched tight)を意味します。

そして、

Hypersensitive spot

過敏な点

referred pain

関連痛

この内2つが有ればトリガーポイントと診断できるとしました。

local tendernessはトリガーポイントの診断に必要ありませんでした。

この研究で重要なことは2つあります。

一つ目は、

トリガーポイントの解剖学的位置がTrigger Point Manualに記載されているように、特定の位置と一致するとされませんでした。

Trigger Point Manualに記載されたx印はトリガーポイントを意味していません。

さらに、多くの専門家はトリガーポイントからのの明確な関連痛パターンの考えを支持しませんでした。

重要なことの2つ目は

彼らは筋筋膜性疼痛とトリガーポイントの関連性が疑問視されていること、そして筋筋膜性疼痛はトリガーポイントだけに起因するのか、筋筋膜性疼痛が独立した疼痛状態なのかは現在分からないと認めました。

さて

トリガーポイントの発見が筋筋膜性疼痛に関連しないと考えると、トリガーポイント実践者はどうやって筋筋膜性疼痛の診断を行うことができるでしょうか?

およそ不可能です。

トリガーポイントは蜃気楼の様なものであると分かります。

トリガーポイントに対する適切な対処は?

 

トリガーポイントに対して、あらゆる治療が肯定的に考えられていますが、いくつかの治療は中枢感作を誘発し、疼痛を慢性化するかもしれません。

現在は見ることができませんが、Starlanyl2014年にweb site”http://www.fmcmpd.org/で以下のように述べています。

ほとんどの治療選択肢はより多くのトリガーポイントを活性化し、一時的な疼痛の増加を引き起こす可能性があることを理解した上で、最も侵襲性の低い治療選択肢を用いる。

“Use the least invasive option for therapy, with the understanding that most treatment options may activate more TrPs and cause a temporary increase in pain.”

 

侵害刺激は脊髄後角ニューロンを感作できます。

トリガーポイントに侵害刺激を与えるべきではありません。

そのために、侵襲性の低い薬理学的、医学的処方、理学療法、認知行動療法や心理療法を用いる必要があります。

 

トリガーポイントは必要?

トリガーポイントという不明瞭で非科学的なものは必要でしょうか?

臨床においてトリガーポイントが主張するような現象はみられます。

しかし歴史的にみてトリガーポイントはstructure model(構造主義)の典型です。

実際は神経系(sensitization)の問題であるにもかかわらず、構造に答えを求めようとすることで疼痛治療の妨げになります。

トリガーポイントは疼痛治療を妨げるかもしれません。