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ストレッチのメカニズム


 

ストレッチは現実問題、よく分からないままされているケースがかなり多い。

ここでは一度ストレッチに関して一通り見直していく。

ストレッチのメカニズム

ストレッチのメカニズム

一度ストレッチについて勉強会を開いた時、ストレッチを行うセラピストにストレッチのメカニズムをどの説でも良いから言える人ははいるか聞いたところ、全然いなかった。

メカニズムを知らないと自分の施術が適切か判断ができないため、知っておいた方が良い。

ここでは過去に提唱された説を紹介していく。

粘弾性変形モデル(Viscoelastic Deformation)

ストレッチ直後にみられる筋の伸張性の増加は粘弾性変形によるものだと示唆されている。

示唆は、示されている訳ではなく可能性がある程度の意味

筋は粘弾性を持つと考えられている。

粘弾性(Viscoelastic)とは、弾性(elasticity)つまり「牽引力を無くすと元に戻る」性質と、粘性(viscously)つまり「牽引力に対する反応は速度と時間に依存する」性質を併せ持つことをいう。

つまり筋はある一定以上の力と持続または頻回の伸張を受けると、粘性流(viscous flow)が促進され、即座に筋長が変化する可能性がある。

ストレッチされる際、粘性だけでは可動域が広がり続けるが、ストレッチの強さと持続時間は筋固有の弾性によって制限される。

これが粘弾性による制限となる。

ストレッチで筋を一定時間ストレッチ位に置き、保持するとストレッチに対する筋の抵抗力が徐々に低下する。

このようなストレッチに対する抵抗性の低下をviscoelastic stress relaxationという。

ヒトに対する研究で粘弾性変形と回復がハムストリングと足関節底屈筋でテストされた。

果たして、筋長と伸張性を持続的に増加させるメカニズムとしての粘弾性変形は否定されている。

ストレッチはリハビリやスポーツで一般的に使われるが、その場合、粘弾性変形の生体力学的効果は非常に小さく、非常に短期間であるため臨床的意義を持たない。

あるハムストリング筋の研究では、45秒の持続的な静的ストレッチは、30秒後に行われたストレッチに有意な効果がなかった。

これは臨床上留意しておかなければならない。

臨床において、45秒以下ストレッチで可動域の変化を観察したとしてもそれは30秒後には元に戻っている。

このようなストレッチの短期的しか変化を示さない研究は多い。

プラスチック(または塑性)変形モデル(Plastic Deformation)

ストレッチ直後における筋の伸張性の増加は、結合組織の「塑性(plastic)」または「永久(permanent)」な変形によるものであるという説もある。

プラスチック変形モデルでは、結合組織を弾性限界を越えて塑性領域に引き込むのに十分な伸張強度を必要とする。

結果、一旦伸張力が取り除かれると、筋は元の長さに戻らず、永久に伸張した状態のままになる。

結合組織の塑性変形、永久変形、持続変形(plastic,permanent,or lasting deformation)の研究では、のいずれも、このプラスチック変形モデルを支持するものではなかった。

「プラスチック変形(plastic deformation)」という用語は、自然界で永久的な変形の同義語であると考えられることが多かった。

連続したサルコメアの増加(Increased Sarcomeres in Series)

動物実験では、筋の連続したサルコメアの数は、極端な姿勢で長時間固定することで変化することが示されている。

筋を完全に伸ばした位置に固定すると、連続したサルコメアの数が増加する。

一連のサルコメア数の増加はサルコメア長の同時減少によって相殺されたため、これらの筋は筋長の全体的な変化を示さなかった。

筋肉を短縮した位置に固定すると、連続したサルコメアの数が減少し、同時に筋肉の長さが減少する。

短縮した筋のサルコメア数と筋肉の長さは、固定から解放した後に正常レベルまで増加する。

これらの動物実験から、筋はサルコメアの数と長さを連続的に変化させることによって新しい機能的長さに適応し、新しい機能的長さでの力の発生を最適化することが示唆される。

筋の固定とストレッチングの間には実質的な違いがあるにもかかわらず、この研究は一般化されている。

短期(3~8週間)のヒトのストレッチは、連続したサルコメアの同様の増加と同時にストレッチした筋肉の長さの増加を引き起こすことが示唆されている。

倫理的理由のため、一連のサルコメアの数が治療介入により変化するかどうかを組織学的レベルで評価したヒトのストレッチ研究はない。

画像技術の発展によってこれはいつか可能になるだろう。

神経筋リラクゼーション(Neuromuscular Relaxation)

不随意収縮が静的ストレッチの筋伸長を制限することが示唆される。

筋の伸張性を高めるためにゆっくり行われる静的ストレッチは、静的ストレッチを受けている筋の弛緩を誘発する神経筋反射を刺激することがしばしば提案される。

神経筋反射が時間の経過とともに反復したストレッチに適応し、ストレッチした筋の弛緩能力を高め、筋肉の伸展性を高めることを示唆している。

実験的証拠はこれらの主張のいずれも支持しない。

伸張反射は、中間位での急速なストレッチ中に活性化され、短時間の筋肉収縮を生じることが示されている。

しかしながら無症状でエンドレンジでパッシブストレッチを受けたほとんどの研究は有意な活性化を示さなかった。

バリスティック(cyclic and high-velocity)ストレッチをシミュレートした研究でさえ、ヒトモデルと動物モデルの両方で、筋の有意な伸張反射活性化の証拠を示さなかった。

contract-relaxストレッチの効果を評価した研究と短期(3週間および6週間)ストレッチ研究では、ストレッチ筋の有意な筋電図活性は認められなかった。

よってエンドレンジの増加は、神経筋リラクゼーションに起因することはできなかった。

ストレッチトレランスモデル(stretch tolerance)

短期および中期的な変化をもたらすメカニズムにストレッチ耐性が挙げられる。

ストレッチの介入が、組織の機械的特性を変化させ、可動域に反映させるよりもストレッチ不快感に耐えるようにすることで可動域が広がるものをストレッチトレランスという。

簡単に言えば、痛みや不快感に対して強くなるから可動域が広がるというものだ。

実際60人の健常者を対象とした研究では静的ストレッチは筋伸展性(extensively)の持続的変化を誘発しなかったことを示している。

むしろ、単にストレッチの不快さに対する耐性を改善しただけであった。

しかし、それだもストレッチ耐性に関与する基礎となる生理学的機構を確認することはできなかった。

着目すべき点はストレッチをしても筋の伸張性が増加しないところだろう。

可動域は増加するが、伸張性は増加しない。

 

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