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体幹トレーニングに大した効果はない(the myth of core stability)


以前PSB modelと呼ばれる、姿勢や構造、バイオメカニクスに基づいた骨格筋痛に対するアプローチから脱却しようという記事を書きました。

この元となった論文を書いたのはlederman氏ですが、このlederman氏が書いた他の論文に「the myth of core stability(体幹の安定性神話)」があります。

今回はそれを紹介します。

オープンアクセスの論文です。

Lederman E. The myth of core stability. J Bodyw Mov Ther. 2010;14(1):84–98. doi:10.1016/j.jbmt.2009.08.001

体幹トレーニングの前提

まず体幹の安定性に基づいたトレーニングは以下の仮定が前提にあります。

  • 特定の筋(特に腹横筋)が脊椎の安定化により重要である。
  • その筋が弱いことが背中の痛みにつながる。
  • 腹筋や体幹の筋肉を強化することで腰痛を軽減できる。
  • 体幹は他の筋とは独立して働く「コア(core)」と呼ばれる独特なグループがある。
  • 強いコアは怪我を防ぐ。
  • 安定性と腰痛の間に関係がある。

しかしこれらは全て仮定です。

体幹の安定性に正当性を持たせるのであればこれらを示さなければなりません。

体幹筋、特に腹横筋

脊椎は不安定な構造です。

脊椎は体幹筋の同時収縮によってさらなる安定化されます。

これらの筋は、解剖学的に、あるいは機能的に特別なグループと仮定し、しばしばcore muscleと呼ばれます。

その中でも腹横筋は特に注目されます。

腹横筋は体幹安定化の主要な要素だと広く信じられています。

腹横筋は直立姿勢においていくつかの機能を持ちます。

その中に安定化はあります。しかしこの機能は他の多くの筋と相乗的に働きます。

さらに腹横筋は発声、呼吸、排便、嘔吐などのために腹腔内の圧力を調節する働きがあります。

脊柱の安定化のために腹横筋はどの程度必須でしょうか?

妊娠中、腹壁の筋は伸張され、力が失われ、骨盤を安定させることができなくなります。

実際、妊婦は腹筋運動を行う能力を失います。

妊婦の16.6%は腹筋運動ができません。

しかし、妊婦の腹筋の強さは腰痛と関連しません。

それにもかかわらず体幹トレーニングはしばしば腹筋を訓練する方法として、最終的には妊娠中の腰痛の治療として使われます。

脊椎の安定性を含む局所的な筋骨格系の問題が妊娠中の腰痛の発症に関与するという証拠はほとんどありません。

さらに出産後、腹直筋の再短縮には分娩後約4週間、骨盤の安定が正常化するまで約8週間かかります。

しかし腰痛は出産後1週間以内に自力で回復します。

これは、腹筋が妊娠前の長さと筋力に戻る前です。

重度の腹筋不全の時期に、背中と骨盤の痛みが改善しているのはなぜでしょうか?

腹筋と脊椎の安定性の関係が強調されすぎていませんか?

また乳房切除後の乳房再建では、乳房再建に腹直筋の片側を用います。

結果として患者は腹筋の筋力低下を起こしますが腰痛とは関係ありません。

鼠径ヘルニア修復術と腰痛の関連を示す文献も存在しません。

以上から腹筋の損傷が正常な運動を障害したり腰痛の一因となったりすることはありません。

収縮のタイミング

慢性腰痛患者の腹横筋は、腕や脚が急速に動いている間、無症状の患者と比較して発症時期が遅いことが示されています。

この筋が弱くなったりコントロールできなくなったりすると、背中に問題が生じると仮定されています。

健康な人では、腹横筋が他の筋より先に収縮するからといって、それが何らかの意味でより重要であるということにはなりません。

これは単に、一連の動作の最初であることを意味します。

腰痛患者の発症タイミングの遅延が機能不全の活性化パターンよりもむしろ腰部に対する保護戦略であると仮定することも妥当です。

さらに、腕の速い動きの間に、腹横筋の遅延活性化を含む反射性疼痛回避行動を行うがこれは安定化とは無関係な行動である可能性があります。

例えば、熱いものに触れた時、素早く手を動かすのは肩の損傷を受けた患者が、正常な人とは異なる腕の離脱パターンを用いると予想できます。

さらに腰痛持ちとそうでない人の腹横筋の収縮の時間差は約20msです。

これらは強さではなく、タイミングの違いであることに注意すべきです。

このようなタイミングは、患者の意識的コントロールや、検査やを行うセラピストの臨床的能力をはるかに超えています。

また体幹トレーニングでは低速度運動が行われます。

この種のトレーニングは、時差のリセットにはあまり役に立ちません。

ゆっくりと腕立て伏せをしたりして、より速くピアノを弾きたいというようなものです。

組織損傷後の運動戦略の1つは筋の同時収縮です。

この損傷反応は慢性腰痛患者にも生じます。

体幹屈筋と伸筋を同時に収縮させる傾向があります。

この戦略は不随意で、非常に複雑です。

患者の体幹コントロールの再学習は複雑です。

特定の動作で腹部のどの部分が収縮するかは検査できますか?

協調運動を切り替えるべきかをどのようにして知る手段はありますか?

腰痛患者が既に同時収縮戦略を使っているのに、なぜそれを増加させるのですか?

体幹の強さ

体幹の強さと腰痛の患者には問題があります。

脊柱を安定させるために、体幹の筋肉はどのくらいの力のレベルで収縮する必要があるでしょうか?

実はほとんど必要ありません。

立位や歩行中、体幹筋の活動は最小限です。

さらに立位では腰筋と腰方形筋はほとんど収縮していません。

歩行中の腹直筋の平均活動は、最大随意収縮が2%(MVC)、外腹斜筋が5%です。

立位時、体幹屈筋と伸筋の共収縮の非常に低いレベル(1% MVC未満)と推定され、32kgの重量を体幹に加えると3% MVCまで上昇します。

腰部損傷では、わずか2.5% MVC上昇させ、約15kgの重さを持ち上げる時の同時収縮は、たった1.5% MVC増加するだけです。

これを踏まえても筋トレは必要ですか?

コアマッスルは存在する?

損傷後に1つのグループまたは単一の筋肉のみが影響を受けるかどうかは疑わしいのです。

慢性腰痛では、損傷に応じた複雑で広範囲な運動制御の再編成が見られます。

また単一の筋肉や特定のグループを収縮させることがほとんど不可能であることです。

腹横筋が特異的に活性化されることを支持する研究はありません。

トレーニング初心者では広範囲の腹筋群を収縮します。

ではなぜ腹横筋や他の特定の筋や筋群に注目するのでしょうか?

体幹トレーニングはこの様に仮定から崩れた理論です。

体幹トレーニングと他のトレーニングの差

さらに決め手として

体幹トレーニングはほかのトレーニングと比べ腰痛に対する効果性に違いがありません。