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なぜ接骨院は効果がない骨盤矯正を売るのか?


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これを疑問に思った真面目なセラピストはそこそこいると思います。何故そんな性格の悪いことが平然とできるのかと。

科学的に意味がないといえる骨盤矯正がなぜ未だに行われ、接骨院では悪気もなく売られ続けているのか。

骨盤矯正を売る接骨院の先生は悪い人だからですか?人を騙すことを何とも思ってないからですか?

実はこれどちらも違うかもしれません。

骨盤矯正が効果ないことを知らないからですか?

これは1部あるかもしれません。勉強不足で知らないだけかも知れません。

しかし恐らく半数はそうではありません。知識としては知っていても、売っています。

しかも悪意はなく、善意によって売られています。

なぜそんなことが起こるのか話していきます。

何故嘘をつくのか

罪悪感に耐えられる人間はそう多くはいません。

しかし彼らは多くの人を騙しお金を巻き上げます。

体が歪んでいるから体が痛むと平気で嘘をつきます。

本来精神的に健全な成人はある程度の良心に従います。これは集団の生存のため必要なことです。

しかしある条件下ではその機能が上手く働かないことがあります。簡単にいえば患者を騙しても罪悪感が生まれない仕組みがあるのです。

私は4人の先生に尋ねました。

「どんな気持ちで意味の無いものを売ってるんですか?」

3人は答えませんでした。そして1人は仕事だからといいました。

私はここでナチス・ドイツのことを思い出しました。

アイヒマン裁判です。あるいはアウシュヴィッツ強制収容所というとご存知の方も多いかと思います。

大まかに内容を言っておくと、アウシュヴィッツ強制収容所というところで大量虐殺があったのですが、その時、アウシュヴィッツ強制収容所の管轄はアイヒマンという人でした。

彼は仕事を淡々とこなす仕事人でした。

仕事で人を淡々と殺しました。

彼は自分が悪いことをしたという自覚がありませんでした。

通常人を殺す時は罪悪感が生まれます。

しかし仕事という名分があれば、あるいは命令という名分があればそれを躊躇わない人がいます。

彼らには悪意はありません。

アイヒマンは処刑されたその日もなぜ自分が処刑されなければならないか理解出来ていなかったでしょう。

この様に一線を越えた人は罪悪感を感じることはできません。

アイヒマンの様に無意識であっても上司に責任転嫁することを「投影」といいます。

問題はこの責任転嫁を行う理由です。

彼らは自分が悪い人間だと思っていません。

全ての考えの根底に、それがあります。

そのため思考の前提に自分は善人であると条件付けられています。

自分で行っていること(骨盤矯正)と真実(骨盤矯正に意味はない)の矛盾が起きると自分ではなく真実を否定します。

例えば、「エビデンスなんて当てにならない」とか、「患者は骨盤矯正を自ら買っているのだから良いことをしている」と思い込むのです。

彼らの特徴のひとつとして、自分の善人像が否定されそうな時、何よりも善人像を壊されることを避け、時に真実の破壊行動を行います。

彼らは常に善人でありたいがために、「患者のため」とよく言います。

これは自己の正当化を繰り返し行っているのです。

彼らは罪の意識に目を向けなければ一生自分の間違いを正すことはできません。

彼らは自分が悪いことをしている自覚はなく、むしろ良いことをしていると思い込んでいるため自身の間違いに気付くことはできません。

彼らは患者に嘘をつきますが、根底にあるのは自身への嘘です。

彼らは自身を善人であるように思考しますが、それは自身の悪を必死で隠そうとする行為です。

そのため彼らの世間体は良いことが大いにあります。

これは一種の自己愛(ナルシシズム)です。

悪性のナルシシズムと呼ばれます。

悪性のナルシシズムは屈服がしない強い意志があります。

彼らを根拠で説得することはできません。

彼らは常に自身の罪悪感が表に出ないように行動します。

彼らのこの罪悪感回避行動は顕著です。

骨盤矯正の良いところばかり調べます。

悪いところは調べません。

これは確証バイアスと呼ばれます。

骨盤矯正の効果があると思い込んだ上で効果判定をします。

彼らには効果がないという概念がなく、効果があるか、今回は偶然なかったという判定しかありません。

症例報告は成功例しかあげません。

失敗例など存在しません。

因果関係がどれだけ薄かろうと効果が出たのは骨盤矯正のおかげと考えます。

悪性のナルシシズムは一般用語では自惚れといいます。

服従を拒否し、我を通します。

自惚れでありこれは彼らの誇りです。

人間の不完全性を非現実的に否定し、誇りを持ちます。

この場合の誇りは傲慢なプライドです。

彼らは最初からこの傲慢なプライドを持ち合わせていたわけではありません。

これまでの人生の選択と意思決定を繰り返すことで徐々に形成されています。

彼らの邪悪さは今も発展中ともいえます。

彼らの罪に限度はありません。

彼らの邪悪さは別の言い方をすれば

「悪の陳腐さ」といいます。

世界最大の悪はこのように考えないことによって生まれる大変「陳腐な悪」なのです。

最初の4人の話に戻ります。

彼らの内3人は沈黙しました。

彼らは何を考えていたのでしょうか?内心反論していたのかもしれません。

それは分かりませんが、

彼らは果たして骨盤矯正について深く考えたことがあったのでしょうか。

以下追記

私は基本的に間違っていることには間違っていると言わなければ気が済まないタイプではあるので、骨盤矯正をしている人には「なぜ」かを直接聞いてしまいます。

最近また何回か骨盤矯正を平気で売る人と話す機会がありました。

長い時では4時間ほど話したこともあります。

結論からいえば以前、「なぜ接骨院は効果のない骨盤矯正を売るのか?」で書いた様に、基本的に自分が悪いと思っている人はいないように感じます。

そもそも人は他人に嘘をつくことに抵抗は基本的にありません。

これは今では少し有名な話かも知れませんが、人は10分間に3回嘘をつきます。

Robert S. Feldman, James A. Forrest & Benjamin R. Happ (2002) Self-Presentation and Verbal Deception: Do Self-Presenters Lie More?, Basic and Applied Social Psychology, 24:2, 163-170, DOI: 10.1207/S15324834BASP2402_8

細かいことでこれは同論文からの引用になりますが、

特に男性は計画や成果について、より自己中心的な嘘をつきました。好かれやすい人はよりあからさまな嘘や誇張、感情についてより多くの嘘を言う傾向がありました。

(原文:Specifically, people (especially men) in the com- petence condition told more self-oriented lies and lies about plans and achievements. People in the likable condition tended to tell more outright lies and exaggerations, and more lies about feelings.)

嘘をつく上で罪悪感を感じずに済むメカニズムは恐らく様々ありますが、それは彼らの骨盤矯正に対する言葉から察するしかありません。

それでは彼らの主張をみていきます。

議題1「エビデンスを無視してまで骨盤矯正をやることに正当性はありますか?」

現在はさまざまな怪我や痛みに対して何が効果的で何が効果的でないかが少しずつ分かって来ています。

それはガイドラインとして発表されています。

それでもガイドラインは完全ではないのですが、ガイドラインから逸脱してまで骨盤矯正をやるメリットがあるのか?これはエビデンスに基づかないことを否定しているのではありません。

むしろエビデンスで否定されつつある骨盤矯正(骨盤の角度の左右差は腰痛と関連しないなど)をガイドラインを無視してまで使う正当性があるのかを聞きました。

  • 返答1「完璧な答えなんかない」
  • 返答2「患者が求めている」
  • 返答3「エビデンスでは測れない」
  • 返答4「一つ一つの椎骨まで考えてやっている」
  • 返答5「極論言えば筋のバランスが均等になれば症状は一切なくなるという考えでやっている」
  • 返答6「経営を成り立たせないといけないから」
  • 返答7「エビデンスは不正があるから当てにならない」
  • 返答8「悪く言えば詐欺だけど、患者が喜べばいいのでは?」

因みにこの返答1「完璧な答えなんかない」はほとんど先生が言いました。

正解はないのだから個人が正しいと思っている手段で良いと言っているのでしょう。

しかしこれは、骨盤矯正を正当化しているわけではありません。

確実性で言えば効果性が疑わしい骨盤矯正よりエビデンスがあるガイドラインの方が高いのですから、ガイドラインの不確実性を主張されても骨盤矯正を使う理由にはなりません。

返答2「患者が求めている」

そうかも知れません。但し患者は骨盤矯正に効果があることを前提に求めています。

患者は施術者が医療倫理(嘘をついてこない)ことを前提に、自分に合っている治療を選択します。

例えば、電磁波の出る腕時計の様な怪しいグッズを売る人がいて、それを買う人がいますが、売る側は売るために嘘を並べて営業をかけます。買う人は自分が騙されていないことを前提に腕時計の効果を信じて腕時計を買います。

この場合腕時計を買った人は、腕時計を求めて買ったことになるわけですが、買った人は結果として自分が求めている効果を手にしていません。

「患者が求めているから」が正当化されるのは患者が騙されてない時ではないでしょうか?

返答3「エビデンスでは測れない」

もはや詐欺系治療の常套句ですが、確かに徒手療法は科学的に測るのが難しいです。

それはダブルブラインド(例えばマッサージと偽マッサージどちらを受けているか隠すようなこと)が難しいからなのと、個人個人の細かな違いに対する効果の違いを統計で測るには困難だからです。

しかしこれも返答1「完璧な答えなんかない」と同じことです。

だからといって骨盤矯正の優位性が上がるわけではありません。

返答4、返答5に関しては「私はこう信じている」論なのでこの言葉に根拠はありません。

根拠のない主張は根拠なく否定できます。

因みにこのような論理性のない曖昧な発言はセラピスト業界で結構聞きます。例えば「ここが整うと自然に体は良い方に向かう」など

返答6「経営を成り立たせないといけない」

相手を騙さないと成り立たない仕事は、世の中に必要のない仕事ではないでしょうか?

その時点でそもそも仕事の選択を誤っていると私は考えています。

それは世の中に必要のない仕事です。

返答7「エビデンスは不正があるから当てにならない」

1部を否定されても全てのエビデンスが否定されるわけではありません。

むしろエビデンスと比べたら個人の主張の方が信用できません。

返答8「悪く言えば詐欺だけど患者が喜べばいいのでは?」

これは正直驚きました。詐欺という自覚があったんだなと。

その後の、患者が喜べば、患者が満足すれば論は返答2「患者が求めている」と同じです。

患者が騙されてない状態なら良いのですが、患者は騙されているのだから喜びはその時だけのものです。

さて、次にもう少し深く切り込みました。

議題2「骨盤の歪みの説明は患者の状態を悪くしてるかも知れませんよ」

この話の元はに由来しています。

言葉は患者を傷付け、患者を助けるwords matter(言葉は重要) easy to harm hard to heal(傷つけることは容易く、癒すことは難しい) ...

簡単にいえば、言葉は患者を傷つけ慢性的な痛みを誘発するかもしれないということです。

これに対しては2つの返答がありました。

返答1.それはどこのエビデンス?

返答2.…(沈黙、あるいは話題のすり替え)

返答1.「それはどこのエビデンス?」

これは先程エビデンスでは測れないといった方が言ってきたので驚きましたが、この返答は正しいと思います。

会話だったので根拠は提示できませんでしたが、今の痛み科学については説明しました。

「慢性痛は従来の構造に着目したものから、今はBPSモデルと言われるものに変わってきています。その中で患者が骨盤の歪みによって痛めていると信じている場合、新たなBPSのような理論は受け入れてられにくいのだから骨盤矯正などを勧めること自体害になる。そして、体が歪んでいるという説明は患者の痛みの信念を悪化させるかもしれない。心理的要素は慢性疼痛の予後を決める因子と分かってきている」と。

参考文献

Siemonsma PC, Schröder CD, Roorda LD, Lettinga AT. Benefits of treatment theory in the design of explanatory trials: cognitive treatment of illness perception in chronic low back pain rehabilitation as an illustrative example. J Rehabil Med. 2010;42(2):111–116. doi:10.2340/16501977-0492

Stewart M, Loftus S. Sticks and Stones: The Impact of Language in Musculoskeletal Rehabilitation. J Orthop Sports Phys Ther. 2018;48(7):519–522. doi:10.2519/jospt.2018.0610

Darlow B, Dean S, Perry M, Mathieson F, Baxter GD, Dowell A. Easy to Harm, Hard to Heal: Patient Views About the Back. Spine (Phila Pa 1976). 2015;40(11):842–850. doi:10.1097/BRS.0000000000000901

多少は「エビデンス否定しておいて、反論にはエビデンスを要求するのは卑怯ではないか?」とも考えましたが、どちらも根拠を示さなければ答えの出ない議論になるので仕方がないと考えました。

その時は上記論文などは渡せなかったわけですが、結果としては「こういうのは結論を出すことは出来ないし出してはいけないと考えている」と言われ終わりました。

返答2.「…」

実はこの議題を出すと、口ごもられるか、話を逸らされることが多いです。

話上手(論理的ではなく詭弁という意味で)な人ですらそうです。

つまり、骨盤矯正は効果がないというより骨盤矯正は害であると伝えた方が遥かに反論不可能ということです。

骨盤矯正による2種類の損失

私は骨盤矯正によって生まれる損失は2つあると考えています。

まず1つが患者の経済的損失。架空の異常を作られ、意味のない治療を受けさせられることによる経済的損失です。

そしてもう一つが信用の低下です。

骨盤矯正のような効果性もなく、エビデンスもないものが業界の多くを占めるのであれば、もちろんそれは業界自体がそうであるとみられます。

基本的にはドクターからの信頼は今以上に落ちるでしょう。

そしてこれから、一般にどんどん骨盤矯正の不適切さが広まれば世論として怪しい職種となるでしょう。

今は利益になるかも知れませんが、将来を、考えればもっと正当性のあることをやるべきです。

骨盤矯正推奨派と話すときの注意

私はけっこうな数の推奨派と話してきた訳ですが、やはり中々相手を納得させるのは難しいです。

というのも基本的に議論して正しく見えるのは論理的な方ではありません。

詭弁(きべん)を使う方が圧倒的に正しくみえます。

例えば骨盤矯正効果ないと根拠をみせても私がやったら効果あったと言われたら、これを否定するのは難しい訳です。

メジャーな言葉かもしれませんが、

「それあなたの感想ですよね」(根拠ないですよねの意)が通じにくい業界です。

エビデンスを苦手に思う人も多い業界です。

だから本当は関わらない方が良いのかも知れません。

骨盤矯正をやっている人からすれば正しいか正しくないかは関係ないこともあるので論理的に説明することに意味がなかったりもします。

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