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軽度の脚長差は膝の変形のリスクとなるか?


以前、脚長差と腰痛が関連ないであろうことはブログで紹介しましたが、今度は膝の変形と軽度の脚長差が関連するかを見ていきます。

膝の変形と脚長差

今回紹介する論文はこちらです。

Liu RW, Streit JJ, Weinberg DS, Shaw JD, LeeVan E, Cooperman DR. No relationship between mild limb length discrepancy and spine, hip or knee degenerative disease in a large cadaveric collection. Orthop Traumatol Surg Res. 2018;104(5):603–607. doi:10.1016/j.otsr.2017.11.025

625の骨格から、骨折、明らかなリウマチ性疾患、関節面に影響がある感染、大腿骨頭すべり症、ブローント病、不完全な人口統計学的情報 、不完全な骨格を除いた576個の骨格が選ばれました。

平均年齢は56±10歳でした。

これらの骨格に対し、腰椎、股関節、膝関節で関節炎のグレーディングが行われました。

平均脚長差は4.8±4.0 mmで範囲は0.0-30.9 mmでした。10mm以上の不一致を有する56検体がありました。

原文:Mean limb length discrepancy was 4.8 ± 4.0 mm, ranging from 0.0 to 30.9 mm. There were 56 specimens with discrepancy 10 mm or greater.

そして結果として

この研究は、主な仮説を立証しました。軽度の肢長の不一致を伴う脊椎、股関節または膝関節炎の割合の有意な増加を認めませんでした。

原文:This study confirmed the main hypothesis and did not find any significant increase in the rate of spine, hip or knee arthritis with mild limb length discrepancy.

ということで、軽度の脚長差と膝関節の変形は関係なさそうです。

軽度でない脚長差については不明です。

ただしこの研究は、脚長差と関節の変形を調査したものであって、脚長差と関節の痛みを調査したものではありません。

そのためこの研究から単に軽度の脚長差が痛みの原因にならないとは言えないことに注意が必要です。

最近では膝OAと膝の痛みの相関が強いわけではない(無いわけではない)ことが医療従事者の中で強調されつつある様に感じます。

さらに中枢感作と膝OAの関連も指摘されています↓

感作の程度は疼痛と相関しましたが、X線所見とは相関せず、中心感作が膝OA疼痛の重要な寄与因子であるという結論に至りました。

原文:While the degree of sensitization correlated with the pain, it did not correlate with radiological findings, leading to the conclusion that central sensitization is an important contributor to knee OA pain

引用文献: Woolf CJ. Central sensitization: implications for the diagnosis and treatment of pain. Pain. 2011;152(3 Suppl):S2–S15. doi:10.1016/j.pain.2010.09.030

従来の過度なstructure model(構造主義)からはいち早く脱却する必要性も分かりますが、この様な結果をみると構造を軽視してしまう要因になるのではないかというリスクも考えられます。

特にこのような持続性疼痛は多因子性であることを考えると、統計上有意差がでないものであっても、その個人にとっては疼痛の因子となっている可能性も否めません。

どちらにせよ重要なのは、多因子性と考えた場合、より関与が大きな因子からアプローチする必要があり、その関与がわからない場合はより効果が見込めるアプローチからやるべきだということです。

今のところ私の肌感としては平均的に見て徒手療法より運動療法の方が効果を得られた経験も多く、これは現在の膝OAへのエビデンスべースのアプローチと一致します。

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