解剖学

膝関節の機能解剖学(図と構造)


膝関節は、人体で最も大きく複雑な関節です。

膝関節の基礎解剖学

膝関節(ひざかんせつ)を構成する骨には大腿骨、脛骨、膝蓋骨があります。

膝関節は2つの関節で構成されます。

一つは、大腿骨と脛骨で構成される「大腿脛骨関節」ともう一つは大腿骨と膝蓋骨で構成される「膝蓋大腿関節」です。

この2つの関節は常に相互的に働きあうため、解剖学的には独立した関節であっても、機能的には切り離せない関節です。

横方向(水平面)から観察すると分かるように、膝関節の骨の連結はかなり不安定です。

隣接する関節構造である足関節は脛骨と腓骨の間に踵骨がハマることで安定し、股関節は寛骨に大腿骨がハマることで安定していますが、膝関節はただ、乗っかっているだけです。

そのため膝関節の基本的な支持機構は骨ではなく、靭帯や関節包です。そして動的安定化機構として筋も関与します。

膝関節の基本的な動きは矢状面で生じる屈曲・伸展運動です。

古典的な関節の参考可動域は屈曲が130°、伸展がです。

この時の基本軸は大腿骨、移動軸は腓骨です。

膝関節屈曲可動域は、その関節の構造による問題だけでなく、筋や脂肪組織の分厚さによって制限されることもあります。

屈曲以外の動きは関節包や靭帯によって制限されます。

そのため、支持機構である靭帯はしばしば損傷を受け、スポーツでは足関節の次に損傷の多い部位になります。

また荷重によるメカニカルストレスもかかりやすく、変形性膝関節症もよくみられます。

しかしながらレントゲンによる所見からは疼痛が予測できないことに注意が必要です。

しばしばレントゲンによる患者への説明が患者の膝への不安を煽り、運動恐怖症(kinesio phobia)を発症する可能性があります。

膝関節は「らせん関節」です。

つまり膝関節は単純な矢状面上での屈曲伸展運動だけではなく、それに伴った水平面上での回旋運動も生じます。

この屈曲伸展に伴った回旋をスクリューホームムーブメント(SHM)と呼びます。

スクリューホームムーブメント

解剖学の教科書上ではスクリューホームムーブメントは膝関節伸展時に脛骨が外旋する運動と記載されているかもしれませんが、もう少し詳しくみていきます。

まず最初にスクリューホームムーブメントを伸展屈曲時の動作でみていきます。

完全伸展ではほとんどすべての靭帯の張力の結果として回旋運動はほとんど不可能です。そのため膝関節伸展時には膝がロックされていると考えます。ロックされた状態では筋活動をほとんど必要とせず、立位を保つことができます。

いわゆる「膝かっくん」(地域によって呼び方が変わる?)で、姿勢を維持できないのは膝伸展によるロックで筋活動が抑制されていて、急激なロックの解除に筋の発火が遅延するためです。

 

話がそれたので戻ります。

最初の5度の屈曲運動では脛骨が内側に回旋します。

この最初の回旋は前十字靭帯を弛緩させ、この動きは「unlocking the knee」として知られています。

この時回転軸は内顆の中心付近にあり、外顆は転がり運動をし、内顆は平行移動するため屈曲に伴う転がり運動によって前後方向に移動します。

屈曲運動では足を床に固定すると(CKC)、大腿骨は外旋します。

足が床で支えられていない状態(OKC)では、下腿は足と一緒に、つまりつま先の先端が内側を向きます。

回旋範囲は徐々に屈曲するにつれて増大し、主に最初の30度の屈曲時に回旋が起っています。

それ以降の回旋範囲は最小限になります。

最大範囲の回旋運動は、45~90度の屈曲で起こります。

 

脛骨プラトー上の大腿骨顆の転がり運動が、最初の回旋の後に屈曲を可能にします。

これは大腿骨が脛骨と半月板によって形成された表面上を転がるときに、半月大腿関節で生じます。

そして脛骨プラトー上の顆頭の並進運動が屈曲を完了させます。

屈曲の終末期では大腿骨周囲の半月が形を変え、脛骨の後方で顆頭とともに動きます。このように屈曲の終末期は半月脛骨関節の並進運動と関連しています。

次に伸展です。伸展では、上記したプロセス全体が逆になります。

伸展は前方への並進運動から始まります。

関節面上で、大腿骨の転がり運動によって続き、膝関節の「re-locking」を引き起こしながら脛骨の回旋とともに終わります。

膝関節の基礎運動学

膝関節では屈曲の間、横方向への運動の制限は十字靭帯によって可能になります。

膝屈曲の可動域は、120~150度です。

この範囲で大腿と下腿の筋が接触しなければ、最大140度まで能動的屈曲を行うことができます。

残りの10度の屈曲は受動的に、例えばスクワットを行うことができ、その間自身の体重が筋を圧迫して可能になります。

十字靭帯の張力と両半月板の後角の機能は、筋があまり発達していない人においてのみ屈曲を制限します。

 

過伸展は主に靭帯張力によって制限されます。

加えて、制限要素には関節包の背側部分、前十字靭帯、後十字靭帯、大腿骨と半月板前角との強固な連結、膝屈筋の緊張(大腿二頭筋、半膜様筋、腓腹筋)が含まれます。

 

膝蓋骨は屈曲時には遠位に、伸展時には近位に滑走します。

膝関節では関節がun lockedと同時に屈曲したときにのみ、内外への回旋が可能になります。

回旋は主に半月脛骨関節で起こり、同時に半月板が並進します。

並進範囲は外側半月板でより大きいです。

つまり可動性の低い内側半月板は常に損傷を受けやすいです。

内側半月板は損傷の95%を占めます。

 

回旋は主に靭帯と骨構造との関係に依存しています。

回旋運動の範囲は関節面の形状に大きく影響されません。

唯一の例外は脛骨の顆間隆起で、これが回転の中心を部分的に決定します。

 

後十字靭帯は地面に対しほぼ垂直に走行しますが、前十字靭帯あ地面に対し大きな角度を持っています。

これは回旋中に内顆より外顆が大きな自由度を可能にする条件の1つです。

脛骨外旋可動域は主に側副靭帯の張力により決定されます。

脛骨の内旋時では外側の安定化機構の他に、前十字靭帯が重要な役割を果たしています。

前十字靱帯による安定化機能は前額面における傾斜によって決定されます。

内旋は外側側副靭帯、腸脛靭帯、関節包外側、外側半月板によっても制限されます。

膝のノイズ(クリック音など)

膝関節のノイズについては以前こちらで解説しましたが、ここでも大まかに解説します。(詳しく知りたい方はリンクからご覧下さい)

膝関節のノイズには生理学的ノイズと病理学的ノイズがあり、熱感や腫脹がみられれば病理学的ノイズを疑う必要があります。

生理学的ノイズは滑液内の気泡の発生(または破裂)、靭帯のスナップ、半月板、術後の影響などが考えられます。

病理学的ノイズは、骨や半月板などの退行性変性、病理学的な滑膜ひだ、膝蓋大腿不安定症、TKA(人工膝関節形成術)、病理学的ニースナッピング症候群などが考えられます。

膝関節のノイズはポッピング(popping)スナップ(Snapping)キャッチ(Catching)クリック(clicking)クランチ(Crunching)クラッキング(Cracking)クラックリング(crackling)クレーキング(creaking)グライディング(grinding)グレイティング(grating)クランキング(clunking)と言った言葉で表現されます。

膝蓋下脂肪体

膝蓋下脂肪体(IFP)は膝前面にあり、疼痛をよく生じさせます。

膝蓋下脂肪体は膝関節の屈曲に後方移動し、伸展で前方移動します。そのため膝蓋下脂肪体の可動性が臨床において可動性が重要である可能性があります。

 

膝蓋下脂肪体の瘢痕化は膝蓋腱との癒着を引き起こし、膝蓋腱の可動性を減少させる可能性もあります。

膝蓋下脂肪体が炎症を起こした場合、膝蓋下脂肪体は膝蓋腱の両側で膨張し、滑膜が大腿骨に対して圧迫されます。この圧縮により滲出を起こし疼痛を起こす可能性があります。

 

膝蓋下脂肪体は吻合によるネットワークによって豊富に血管新生されます。膝蓋下脂肪体の中心部は血管新生が少ないです。

 

膝蓋下脂肪体は後脛骨神経の支配神経を伴った膝前面の痛みの原因となる可能性があります。また膝のほかの部位の支配神経も膝蓋下脂肪体に分布しています。

その中には外側広筋と内側広筋の神経、閉鎖神経の終末枝、伏在神経、総腓骨神経が含まれます。

 

膝蓋下脂肪体の機能は全て分かっているわけではありません。膝蓋下脂肪体は大腿骨と関節包の滑走を向上させることができます。また修復のための細胞の貯蔵庫であることも示唆されています。

膝蓋下脂肪体が膝蓋腱と癒着することで膝関節の伸展を生み出すためにより大きな大腿四頭筋の出力が必要になります。

膝蓋下脂肪体の癒着で可動性が減少した膝蓋腱は30-60度の膝関節屈曲での脛骨の並進運動を増加させます。

 

膝蓋下脂肪体に障害がある場合、膝関節の屈曲伸展に伴った膝前面の疼痛、しゃがみ動作、階段ののぼり、ジャンプ、ランニングは症状を悪化させる経口にあります。

 

膝蓋下脂肪体の評価方法にはホッファテストがあります。

膝関節の種子骨3種類

ここでは膝に存在する可能性がある3つの種子骨を紹介します。

まず、人体最大の種子骨である膝蓋骨。

腓腹筋外側頭の中に存在することがあるファベラ、そし膝窩筋の中にあるシアメラです。

膝蓋骨は殆どの人にあります(ごく稀にない人もいます)が、ファベラやシアメラは多くの人に存在するわけではありません。

特にシアメラはより稀です。

ファベラは触診することが出来ます。ファベラが存在しない人でも肥厚した関節包(らしきもの)を触知できることがあります。

正確にファベラの存在を見極めるには画像診断が必要です。

ファベラやシアメラは通常、痛みを伴いませんが、しばしば痛みや神経症状を引き起こすことがあります。

ファベラやシアメラの存在意義は膝蓋骨と同じで、筋の力発揮を効率化するためと考えられています。

膝関節痛に対する鎮痛薬

ドクターや薬剤師でなくとも、セラピストやトレーナーとして膝関節痛に携わる場合は、鎮痛薬と接触する機会が必ずあります。

鎮痛薬に関する指導をすることはできませんが、接触する以上、鎮痛薬に関する最低限の知識を有しておくべきです。

膝関節痛、特に変形性膝関節症や半月板損傷ではセレコックス・ロキソニン・カロナール・アルツディスポ関節注・ブプレノルフィンがよくみられます。

この中でセレコックス(セレコクシブ)とロキソニン(ロキソプロフェン)はNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類されます。

因みにNSAIDsはエヌセイド(またはエヌセイズ)と読みます。

NSAIDsCOX(シクロオキシターゼ)阻害薬で、末梢に作用し、炎症がある場合に効果が出やすいです。そのため急性痛に対して用いやすいです。

消化性潰瘍、重篤な腎臓・肝臓・血液疾患、心疾患、アスピリン喘息、妊娠末期は禁忌です。

ロキソニンテープのような外用薬では内臓への副作用が少ない代わりに肌が荒れるリスクもあります。

カロナール(アセトアミノフェン)はオピオイドに分類されます。オピオイドは副作用が強いものが多いですが、アセトアミノフェンは副作用が弱いです。

ブプレノルフィンは疼痛が強い時に用いられることがあるオピオイドです。

腎臓障害に注意が必要です。

アルツディスポ関節注(ヒアルロン酸ナトリウム)は鎮痛薬で効果が乏しい時に使われます。

関節内注射にリドカインやステロイドを混合するかについては副作用の観点から意見が分かれています。

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