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アイシングの是非が問われるようになったきっかけ


アイシング(icing)が体にとって及ぼす影響についての記事は今更感があるが、先日衝撃を受ける現場に遭遇したので、一度記事として書こうと思う。

その衝撃の現場というのは、I度捻挫をして2ヶ月が経ち、後遺症として軽度の痛みが残っている人がいたのだが、その人に対しアイシングをするよう指導する人がいた。

しかもその人はトレーナーでもある。

この業界は勉強する人としない人に大きな差があるのだからこんなものかもしれない。

アイシング

アイシングの是非が大々的に広まったのは2015年のことだろう。

RICE処置の提唱者であるDr.Mirkinが自身のブログでアイシングの使用に注意喚起した。

その記事はWhy Ice Delays Recovery直訳で「なぜアイシングは回復を遅らせるのか?」となる。

この記事の内容を大まかに要約するとこうなる。

1978年にベストセラーになったスポーツ医学の本を書いたとき、私はスポーツ障害の治療のためにRICE(安静、アイシング、圧縮、挙上)という用語を作り出した。

氷は組織の損傷による痛みを和らげる効果があるため、外傷や筋肉痛の標準的な治療法となっていて、コーチは何十年も私の「RICE処置」ガイドラインを使ってきたが、今ではIアイシングも(完全な)安静も、助けになるのではなく、治癒を遅らせるかもしれないようだ。

22件の科学論文の要約では、アイシングと圧迫が圧迫のみよりも治癒を早めるという証拠はほとんど認められなかった。

それでも氷と運動は足関節捻挫の治癒にわずかに役立つ可能性がある

治療には炎症が必要で、炎症は治癒を促進する。

感染と組織損傷に対する反応は同じである。そのため、腫れを抑えるためアイシングすると体がIGF-1を放出するのを妨げてかえって治りが遅くなる。

損傷した組織へアイシングすると損傷した組織の近くの血管が収縮し、炎症の治癒細胞をもたらす血流が遮断される。

アイシングしてから何時間も血管が拡張しなくなる。

このような血流の減少は、組織を死滅させ、永続的な神経損傷を引き起こすことさえある。

RICE処置は負傷したアスリートが試合に復帰するための短期治療としてよく使われる。

冷却は痛みを軽減するのに役立つことがある。

しかし運動選手の筋力、速さ、持久力、協調運動を妨げる。

医学文献の検索により、アイシングの効果に関する35の研究が見出された。

筆者らは、腫脹を抑えるために冷却を行う場合は、冷却時間を5分未満とし、その後徐々に加温してからプレーに戻ることを推奨している。

これに感化されアイシングを完全否定する人もいるが、鎮痛効果はあるため完全に否定するだけの証拠はない。

血流障害が問題となるのであれば、運動療法しながらアイシングすれば良いとの意見もある。

スポーツ現場でよくあるのは時間を計らずにアイシングするもので、これは回復を遅らせるため、なくさなければならない。

肉離れや捻挫のガイドラインはいくつかあるが最近のものではアイシングの推奨度はかなり低い。

アイシングは必ずしも必要というわけではない。

安静

Dr.Mirkinは深く触れてないが安静(complete rest)についても言及しよう。

安静は回復を遅らせる可能性がある。

細胞分裂の仕組みを考えれば理解できるが、細胞分裂には適切な負荷が必要なのだから安静にして患部を動かしていなければ回復が促進されない。

また、機能面を考慮しても動いていた方が回復が早いのは自明だろう。

そのため、RICE処置の代わりにMICE処置というのもある。

  • Movement
  • icing
  • compression
  • elevation

MICE

POLICE処置もある。

  • protection(保護)
  • optimal  loading(適切な負荷)
  • icing
  • elevation

POLICE

軽度捻挫ならできるだけ早く歩行し始めた方が良いし、肉離れなら極力早く遠心性収縮をできる環境に持ち込んだ方が回復が早い。

編集後記

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Pain magazineではここまで従来の治療をいくつか批判的に観てきました。 構造主義的な観点、触診・アナトミートレイン・トリガーポイント・サブラクセーション そして今回は「バイオメカニクス」です。 (一応joint by jointとか筋膜とか心因性とかその辺も書こうと思ってます) 私の勝手なイメージですけど、バイオメカニクスを深く勉強している人ってのは勉強熱心なイメージがあります。 また、ある会社で技術と知識レベルの高い先生に「(骨格筋痛に携わる)医療従事者がとりあえず勉強すべきことってなんだと思いますか?」って聞いた時には「バイオメカニクス」と答えていました。 当時は私も同じ考えでした。 バイオメカニクスの知識が高ければ、多くの臨床で高い効果を得られるんじゃないかって思っていたからです。 それは疼痛の知識がなかったからですけれど…つまり「疼痛リテラシー」が欠如していたわけです。 これは疼痛の観点から、バイオメカニクスでは足りないってことに気づいたわけですけれど、他にもバイオメカニクス視点からバイオメカニクスはどうか?って視点も必要になってきます。 ということで今回の主題はバイオメカニクス批判です。 バイオメカニクスってとりあえず勉強しとけば治療の役に立つって考えられていますよね? でもこれって事実か事実じゃないかに限らず思考停止的な考えだと思います。 明確な根拠があるわけじゃなくて「なんとなく正しいだろう」ですよね。 「なんとなく」正しい気がして 「なんとなく」勉強することで疼痛治療に詳しくなった気がして 「なんとなく」それが治療に影響する気がして 「なんとなく」意味があるように感じるんですよね。 なぜなら、バイオメカニクスの理屈って一見論理的だからです。 一見論理的だから正しく見えます。 私が普段よく言っているヴィトゲンシュタインの言葉を借りるのなら「検証されずに確信されていることが多くないか?」に当てはまります。 特にこのバイオメカニクスへの強いフォーカスを促しているのはその”難解さ”だと思います。 解剖学はどちらかというと考えるより覚えるようなものですが、バイオメカニクスは考えなければ理解できません。 人って難解なものを学ぶとそれが正しいと思いがちです。 しかしそれは難解さにゆえ、それの価値を正しく判断することがバイオメカニクスを学ぶ以上に難解になります。 ここでは「慢性腰痛とバイオメカニクス」という観点から批判していきます。 ここでの扱うテーマは慢性腰痛治療において ●バイオメカニクスを勉強することで治療成績は上がるか? ●バイオメカニクスを治療に取り入れる意味はあるのか? です。

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当サイトでは疼痛治療をより良いものにアップデートするためのツールをいくつか提供しています。 疼痛治療では「痛みとは何か」を理解する必要があります。 その理由は単純で疼痛治療の目的に「疼痛」が含まれるからです。 何をするか、どのようにするかは常に目的ではありません。 目的である疼痛が何かを理解しなければ治療は目的に向かうことが難しくなります。 もしかしたら、治療がうまくいかない時は目的を見失っているのかも知れません。 疼痛リテラシーアップデートは現在の疼痛科学に基づいた疼痛を解説します。 疼痛科学に基づいた運動療法は、理論ではなく実技中心です。 従来の運動療法は機能やバイオメカニクスに基づいたものが多く、しかし統計的にみてそれらの運動療法は大きな成果を挙げられませんでした。 疼痛科学に基づいた運動療法は、科学に基づいた運動療法です。 機能やバイオメカニクスという狭い視点から脱却し、運動療法をより良いものに変えたい方にお勧めです。 痛み情報を発信するマガジンです。月額制ではありません。