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椎間板性腰痛を疑う条件


腰痛の多くは非特異的腰痛に分類され、その割合は8割と言われたり、反対に8割は診断可能と言われる事もあります。

非特異的腰痛はある特定の名前のついた状態に関連づけられない時にラベリングされます。

しかし腰痛は、特に慢性腰痛は多因子性であるという主張も存在し、

  • 1)痛みが実際に脊椎に由来することを確実に判断する方法
  • 2)組織固有を痛みの因子として検査する確実な方法

があるかどうかが診断の(コメディカルでいえば鑑別の)問題となります。

そのため、非特異的腰痛というラベルは、痛みが腰椎の何らかの構造に起因するように見えることを意味し、この痛みの原因を特定するために簡単に収集できる情報は他にないことを意味します。

臨床において椎間板性腰痛ではより顕著に、椎間板性腰痛か非特異的腰痛か判断に難儀する問題に当たります。

前述した腰痛の8割が原因として分かるという主張は椎間板性腰痛は屈曲時痛+神経ブロックという手段を用いていました。

もう一つよく用いられる検査方法は椎間板造影です。

しかしこれで腰痛の原因を椎間板と特定するに十分と言えるでしょうか?

椎間板は少なくとも外側1/3が神経支配されているため、非特異的腰痛と言われているものの中に椎間板性腰痛が含まれる可能性があると考えられています。

腰椎椎間板には5種類の神経終末があります。これらにはさまざまな形態があり、特に外側椎間板に集中するのは自由神経終末です。

椎間板性疼痛は椎間板から生じると考えられる疼痛です。

しかしながら、最初に挙げた問題である「組織固有を痛みの因子として検査する確実な方法」に欠けるため実証することの出来ないものです。

多くの論文、あるいは多くの医学書は椎間板変性が腰痛の原因であるという根拠のない声明を出しています。

しかし、椎間板変性と腰痛の関連性は弱く(多少はある)ため、椎間板変性は腰痛の診断(あるいは鑑別)として用いることが出来ないことがわかります。

椎間板の状態を変化させる要因は少なくとも5つあります。

  • (1)遺伝的要因
  • (2)栄養(椎間板マトリクスの酸素と栄養の散布)
  • (3)細胞機能調整(IL-1TNF-αTNF-βなど)
  • (4)老化
  • (5)機械的負荷

この中で遺伝的要因が占める割合がもっとも大きく、腰椎では29%から54%が関与しています(頸椎では80%)

喫煙も椎間板変性の原因として分かっています。これは栄養の不足が要因と考えられています。

よく椎間板変性は摩耗によって起こると主張されていますが、それは誤りであることは強調されるべきです。

椎間板性腰痛は画像所見のみでは判断出来ませんが、他の要素と組み合わせることで、偽陽性率を下げることが出来ます。

  • 手術以外の治療に反応しない
  • レッドフラグに該当しない
  • 神経障害性疼痛ではない
  • 心理社会的な問題を抱えていない
  • ディスク高さの25%以下の損失
  • 椎間板造影によるIDDの基準を満たす

この中で、画像検査はドクターのみ行うことができますが、椎間板造影を行うべきかの検査を織り混ぜることで、代替することができます。

  • 検査を行なっているうちに、関連痛が脊柱の中心に向かって減退する
  • 明らかな伸展可動域の喪失、
  • 棘突起の叩打痛。

しかし信頼度が高いとはいえないことに注意が必要となります。

痛みが局所領域に限局されるほど、局所構造に由来する可能性が高くなります。痛みが広範囲であるほど局所構造に由来しない可能性が高くなります。

すべてが非特異的腰痛ではないにしても、ほとんどの慢性腰痛は、筋骨格系の障害とは無関係に中枢神経系の機能障害によって引き起こされると仮定する考え方があります。

この考え方はエンゲルのBPS modelに由来し、現在強く支持されています。

BPS modelに基づいた場合、臨床においてより問題となるのは、患者の椎間板ヘルニアに対する認識の問題です。

患者はよく椎間板のヘルニアが手術しなければ永続的に存続し、同時に害を与えると認識しています。

そのため患者は「私昔椎間板ヘルニアと診断されたから腰が痛いんですよね」と口にするところを目にします。

しかし椎間板ヘルニアは永続化せず、椎間板ヘルニアと腰痛は常に関連するわけではありません。

 

おそらくこの誤った認識を強めている要因には以下のものがあります。

  • 椎間板ヘルニアに対する正しい説明の不足
  • 椎間板ヘルニア模型による誤ったイメージの認識
  • ゴミ箱診断としての存在する椎間板ヘルニア

 

特に多くの医療従事者が椎間板ヘルニアを言い訳に腰痛が改善しないことの逃げ道に用いているように思える場面をみかけます。

しかしBPS modelに基づけばこのような誤った説明が、患者の信念を変え、患者の痛みに対する考えを変え、破局的な思考を導き、そして破局的な思考は不動(キネシオフォビア:運動恐怖症)をつくり、非アクティブな日常は疼痛に対する感受性を増大させます。

これは恐怖回避モデル(The fear avoidance model)として古くから支持されています。

恐怖回避モデル自体は完全に痛みと行動の関係を説明しているわけではありません。

具体的にはこの恐怖回避モデルは矢印が一方向性ですが、実際は常に矢印は両方向性を持ちます。

それでも恐怖回避モデルの説明する現象をおろそかにすべきではありません。

医療従事者は頻繁に短期的なその場での効果性に着目し、患者もその場でどこまで症状が改善するかを良い治療かの指標にしますが、長期的にみればこの恐怖回避モデルのようなものに従う方がより良い予後をもたらす可能性があります。

 

そのために椎間板性腰痛が疑わしい場合、あるいは患者が椎間板性腰痛だという認識を持っている場合は椎間板性腰痛に関する正しい説明と、患者が現在椎間板の影響で腰痛がでていると認識しているか、予後はどうなるかと予想しているか、痛みに対してどう対処しているかが時として椎間板性腰痛かそうでないかを見極める事よりも臨床的に重要となることがあります。

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