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カタパルト機構がパワーを生む【ストレッチショートニングサイクル(SSC)だけじゃない】


最初に以下の話はスポーツ分野だけの話ではないことを強調しておきます。

スポーツ分野ではよく「身体のバネ」という言葉が使われます。
この「バネ」はもちろん専門用語ではないので、バネについて調べようと思ったらバネというものの表現方法を知っておく必要があります。

そのひとつがストレッチショートニングサイクル(Stretch-Shortening Cycle:SSC)です。
ストレッチショートニングサイクルは筋のエキセントリックからコンセントリック収縮がパワーを生み出すというメカニズムです。

しかしながら、それだけで、人間のパワーを説明できるでしょうか?

例えばカンガルーは、脚の筋肉の収縮力で説明できるよりもはるかに遠くまでジャンプできる能力を持ち合わせています。
これはなぜでしょうか?

それにストレッチショートニングサイクルでは筋の伸張を必要とするため、等尺性収縮運動の反発力を説明できません。

これを説明するためのメカニズムがカタパルト機構(catapult mechanism
)です。

カタパルト機構(catapult mechanism)とは?

カタパルト機構を別の表現をするのであれば、弾性反跳です。

バイオテンセグリティの記事でも説明しましたが、脚を含めた全身の筋膜(fascia)は、弾性バンドのようにつねに張力を持っています。

スプリントやジャンプ、歩行時などに伸張負荷がかかると、筋の伸張がおこらなくても腱や筋膜が伸張し、その張力を高めます。
そして伸ばされた腱や筋膜がもとに戻ろうとすることで爆発的なパワーを生み出します。

筋繊維は、機械的出力にほとんど寄与しませんが、腱・筋膜は、かなりの量の機械的エネルギーを蓄積して返すことができます。

参考文献:Sawicki G.S., Lewis C.L., Ferris D.P. It pays to have a spring in your step. Exerc.
Sport Sci. Rev.. 2009;37(3):130–138

カタパルト機構では筋の伸張を必要としないため、ストレッチショートニングサイクルで説明できないところまで説明可能です。

このように蓄積されたエネルギーをつかったパワー発揮がカタパルト機構です。
カタパルト機構を使った動作は筋力をそこまで使いません。
我々はジャンプ動作、スプリントだけでなく、歩行においてもこのカタパルト機構を用いています。

参考文献:Sawicki
G.S., Lewis C.L., Ferris D.P. It pays to have a spring in your step. Exerc. Sport Sci. Rev.. 2009;37(3):130–138

最初にこの記事がスポーツの話だけではないと説明したのはこのためです。

効率的で低エネルギーな動作を保つにはこのカタパルト機構が健全である必要があります。

私は医療従事者として、痛みのある患者には運動習慣があるかといますが、それとはまた、異なり健康のために、跳ねる習慣があるかを問うことが多いです。

跳ねるとはジャンプでもよいですし、走る動作でも良いです。
低負荷ではウォーキングでも良いです。

水泳ではカタパルト機構のような働きが弱いので、水泳以外にも陸上の運動をしたほうが良いと勧めることがあります。

不動により弾性運動がなくなることで、筋膜の弾性機能が損なわれることを考えると、同時に歩行における(無駄な)エネルギーの増大も考えられます。

参考文献:Jarvinen T.A.,
Jozsa L., Kannus P., et al. Organization and distribution of intramuscular connective tissue in normal and immobilized skeletal muscles. An
immunohistochemical, polarization and scanning electron microscopic study. J. Muscle Res. Cell Motil..
2002;23(3):245–254.

 

高齢者でも弾性のある運動は必要です。

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