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マッサージによる血流循環改善を批判する


恐らく多くのセラピストがマッサージによって血流が促進されると信じています。

臨床においては「代謝を良くする」と表現されることもあります。

実際、いくつかの専門書籍や論文でもマッサージによって血流が促進される(あるいは促進されると考えられている)と表記されています。

我々セラピストは習慣的にマッサージの血流促進を信じて来ました。

では、実際マッサージによって血流が促進されるのでしょうか?

本ブログのテーマの一つである「検証されずに確信されている事が多くないか?

の代表例が「マッサージによる血流改善効果」です。

実際これが否定されるのであれば、血流改善目的で行っているマッサージやマッサージに類似する行為の正当性が失われることになります。

結論からいえばマッサージで筋血流が促進される根拠はありません。

では実際詳しくみていきます。

尚、当記事はマッサージの効果を否定するものではなく、あくまでマッサージの血流改善効果のみに焦点を当てます

マッサージによる血流循環促進

生理学的にみれば、マッサージのような反復的な血管の圧迫が、血管拡張をもたらすことが示唆されています。

Clifford PS, Kluess HA, Hamann JJ, Buckwalter JB, Jasperse JL. Mechanical compression elicits vasodilatation in rat skeletal muscle feed arteries. J Physiol. 2006;572(Pt 2):561–567. doi:10.1113/jphysiol.2005.099507

しかしこの生理学的メカニズムがヒトにおいて血流増加をもたらし、それが臨床的意義を持つかは不明です。

マッサージの種類や筋肉量に関係なく、筋血流量を増加させないことを示唆する研究も存在します。

Shoemaker JK, Tiidus PM, Mader R. Failure of manual massage to alter limb blood flow: measures by Doppler ultrasound. Med Sci Sports Exerc. 1997;29(5):610–614. doi:10.1097/00005768-199705000-00004

さらに乳酸がマッサージによって除去されるか調べた研究によれば、マッサージによって乳酸の除去は阻害されることがわかり、そこからマッサージによって血流量が減少することが示唆されています。

Wiltshire EV, Poitras V, Pak M, Hong T, Rayner J, Tschakovsky ME. Massage impairs postexercise muscle blood flow and “lactic acid” removal. Med Sci Sports Exerc. 2010;42(6):1062–1071. doi:10.1249/MSS.0b013e3181c9214f

いずれも研究も確証を得るものでないため、明確な結論をだすことができませんが、マッサージによって血流量が増加することは疑うには十分です。

血管を水道につないだホースの様に考えれば、それを断続的、持続的に圧迫することで、血管循環が阻害されることは予想されます。

トリガーポイントの虚血圧迫でわかるように、圧迫後は皮膚が白くなり一時的な血流減少が見て取れます。

皮下血流量は増加する

マッサージをすると皮膚温が上昇することがわかっています。

Sefton JM, Yarar C, Berry JW, Pascoe DD. Therapeutic massage of the neck and shoulders produces changes in peripheral blood flow when assessed with dynamic infrared thermography. J Altern Complement Med. 2010;16(7):723–732. doi:10.1089/acm.2009.0441

Portillo-Soto A, Eberman LE, Demchak TJ, Peebles C. Comparison of blood flow changes with soft tissue mobilization and massage therapy. J Altern Complement Med. 2014;20(12):932–936. doi:10.1089/acm.2014.0160

Viravud Y, Apichartvorakit A, Mutirangura P, et al. The anatomical study of the major signal points of the court-type Thai traditional massage on legs and their effects on blood flow and skin temperature. J Integr Med. 2017;15(2):142–150. doi:10.1016/S2095-4964(17)60323-6

しかしこの上昇は表層に限定されています。
つまりマッサージは表層組織の循環血流量を上昇させます。

これは臨床上重要な意味を持つでしょうか?

マッサージにおける体表の血流の上昇レベルはお風呂に入ること、あるいは温めることで簡単に代用できます。

お風呂やシャワーによっておこる体表の循環血流量の上昇は日常的です。
もしマッサージによって引き起こされる体表の循環血流量の上昇が臨床的意義を持つとするのであれば、日常的なお風呂やシャワーによって改善されると考えられます。

またマッサージにおける循環血流量促進は軽い運動よりも効果がありません。

Shoemaker JK, Tiidus PM, Mader R. Failure of manual massage to alter limb blood flow: measures by Doppler ultrasound. Med Sci Sports Exerc. 1997;29(5):610–614. doi:10.1097/00005768-199705000-00004

結論

マッサージは表層の血流を一時的に上昇させますが、臨床的に重要であるとは考えにくく、深層の、つまり筋血流量をするかは怪しいです。

つまりマッサージによる筋血流増加を基礎とした施術メカニズムは理にかないません。

代謝改善も眉唾物です。

例えば組織修復のため、マッサージで筋血流量を増加させる論などは破綻します。

ただし、マッサージのこれまで示されてきた効果は否定されません。