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セラピストのかかりやすいバイアス


バイアスは直訳で「かたより」を意味します。
心理学用語としてのバイアスは、意思決定や認知の際に紛れ込む恣意的な傾向です。
つまりバイアスがあることで人は物事をゆがめてみています。

バイアスがない人はいませんが、バイアスが多ければ多いほど誤った判断につながるため、医療従事者は極力バイアスをとる作業が必要になります。

ちなみに自分がバイアスにかかってないと信じることも、バイアスの盲点(Bias blind spot)という一種のバイアスです。

ここではよくある医療従事者のかかりやすいバイアスを紹介します。

心理の錯誤効果

例えば、セラピストは筋血流量改善のためにマッサージを用いることがあります。

マッサージによる血流循環改善を批判する恐らく多くのセラピストがマッサージによって血流が促進されると信じています。 臨床においては「代謝を良くする」と表現されることもあります...

ではなぜセラピストがマッサージによって筋血流量が改善されると信じているかといえば、その理由のひとつは、何度も「マッサージによる血流改善」という言葉を聞くからです。

例えそれが間違った情報だとしても何回も聞いているうちに正しいと感じてしまうような心理現象を「心理の錯誤効果(Illusory
truth effect)」といいます。

心理の錯誤効果にかかっている間は新たな主張を聞いても、自身が持つ古い情報の方が正しいと感じる特性を持ちます。

セルメンヴェイス反射

セルメンヴェイス反射は、従来の通説に反する新事実を受け入れ難いことを指します。

例えば、体幹トレーニングが他のトレーニングよりも効果が高いといえないと分かったところで、セルメンヴェイス反射のある人は否定的になります。

体幹トレーニングに大した効果はない(the myth of core stability)以前PSB modelと呼ばれる、姿勢や構造、バイオメカニクスに基づいた骨格筋痛に対するアプローチから脱却しようという記事を書きました。...

例えば姿勢分析と骨格筋痛にほとんど意味がないと分かったところでセルメンヴェイス反射のある人はそれを受け入れません。

正しい姿勢?姿勢を矯正する意味はあるの?【論文】巷ではまだまだ姿勢矯正や骨格の歪みとかへのアプローチがやられています。姿勢以外にも構造に着目したアプローチは多いです。 痛みを取るため...

正常性バイアス

例えば、カイロプラクティックのアプライドキネシオロジーのように、その検査法に否定的な根拠を提示したとしても正常性バイアスにかかっている人には関係ありません。

【論文】アプライドキネシオロジーとは【怪しい?】カイロプラクティックは数多くの学派に分かれます。 大きく分けるのであれば、サブラクセーションなどの構造を中心に考えるのがストレートカイ...

そのような人は「私の経験では効果がある」や「私の聞いた情報では効果がある」「論文なんて当てにならない」というような主張します。

このように自分の信念に都合の悪い情報を過小評価してしまうことを「正常性バイアス(Normalcy bias)」といいます。

後知恵バイアス

例えば、ある定説に従って治療をしていたとします。その定説が覆されたとき、「やっぱりそうだったか」とか「そんな気がしてた」のように、後から自分を正当化するようなことを「後知恵バイアス(Hindsight bias)」といいます。

確証バイアス

自分に都合よく情報を取得することを「確証バイアス(confirmation bias)」といいます。

例えばある治療法の効果性ばかりの情報収集ばかりして、その治療法のデメリットやリスク、批判などの情報をあつめないのは確証バイアスです。

利用可能性ヒューリスティック

自分が頭の中から取り出しやすい情報を優先的に使用することを「利用可能性ヒューリスティック(Availability heuristic)」といいます。
人の脳は極力思考を単純化しようとします。

自分の使い慣れた治療理論や治療法を優先的に使ってしまう様子はよくみられます。

観察者期待効果

観察者が期待する効果ばかりに目をとられ、他の結果には意識がいかないことを「観察者期待効果または実験者バイアス(Observer-expectancy
effect)」といいます。
また観測者効果として、見られる側も、見られることで行動を変えてしまうことがあります。
実験で二重盲検法といって、観察者も患者も研究における治療法を隠して行われるのはこの観察者期待効果をなくすためです。

しかしながら個人の臨床経験でこの観測者期待効果をなくすことは不可能であるため、経験論による治療の効果性はしばしば過大評価されます。

以上は全てのバイアスの中のほんの数例でしかありません。
バイアスを避ける最も単純な方法はバイアスを知ることです。
無知の知という言葉があるとおり、知らないバイアスに関しては自身がそのバイアスにかかっていることを知ることができません。

しかしバイアスを避けようとしすぎることも一種のバイアスです。