ブログ

運動鍼は理にかなっているかもしれない【鍼灸】注意点も解説します。


鍼灸の痛みへの(プラセボ以上の)効果は現代科学では未だエビデンス不足の扱いを受けています。

ツボから連想されるように怪しいイメージもあるかもしれません。

その鍼の手技は多岐に渡ります。

熱した鍼を刺すもの(今はほぼやられてない)、電気を流すもの、刺さないもの。

その中でも現代科学に基づいて理にかなっていそうな運動鍼(Acupuncture-movement Therapy)について考察します。

運動鍼(Acupuncture-movement Therapy)

現代の痛みの定義(あるいは新しい定義の案)に基づけば、痛みは痛覚と同じではありません。

損傷がなくても痛みは引き起こされますし、損傷があっても引き起こされます。

また損傷の大きさと痛みの大きさは相関しません(圧迫骨折で無痛、ささくれ、幻肢痛など)。

BPS modelに基づけば、あるいは5Esに基づけば痛みはその人の文脈(context)によって決められます。

例えば痛めているであろうという信念は痛みを生み出し増加させます。

運動療法(exercise therapy)はその信念を覆し、その人の痛みの認知を適切なものに導いてくれます。

これをもとに運動鍼を考えます。

意識をそらす

運動鍼は患部またはそれ以外の部位に鍼を刺し、運動を行う方法です。

例としては、腰部に鍼を刺し、chaild poseを取ってもらい、前後に動く方法や、

腰の痛みに対し、SLR肢位で大腿後面の坐骨神経部に鍼を刺し、股関節を軽く屈曲する方法、肩の痛みに対し、下腿前面に鍼を刺し、屈曲運動をする方法など無限のバリエーションがあります。

Ruizhu Lin et al. 2016a randomized controlled clinical trialで急性腰痛に対する効果性も示されており、鍼に加えて運動することで効果が高まります。

この運動による鍼の効果性の高まりの機序が、何であるかが重要です。

もしこれが、

広汎性侵害抑制調節(DNIC: Diffuse Noxious Inhibitory Control)、つまり侵害刺激により閾値が上がり、疼痛抑制されている場合は、のちに感作(sensitization)を引き起こし、慢性疼痛化に至る可能性があるため、避ける必要があります。

Bannister K,Dickenson AH. The plasticity of descending controls in pain: translational probing. J Physiol. 2017;595(13):4159–4166. doi:10.1113/JP274165から引用

鍼は特に痛み刺激を感じやすく、運動によるさらなる侵害受容刺激でDNICが強く作用している可能性は否めません。

もう一つが、信念などの認知が新しく生成されることによる疼痛抑制です。

鍼の刺激(痛みではなく響き(あるいはdeqiあるいは得気と呼ばれる感覚)により、患部の痛みの意識が弱まり、患部の痛みが減少し、実際動けたことで、患者の損傷に対する恐怖や信念が薄まります。

もしこの作用機序が働いたのであれば、急性疼痛だけでなく、慢性疼痛にも効果がある可能性もあります。

実際はどちらの作用もあるのかもしれません。

運動鍼の注意点

運動鍼で最も起こしたくない現象は先程挙げたDNICです。

そのため、鍼は無痛である必要があり、さらに運動時も無痛である必要があります。

そう考えると現実的に使えないかも知れません。

代替案として、鍼を刺す必要はないのかも知れません。

痛みでない軽い刺激をどこか(できれば患部でないところ)に与え、患部を動かします。

症例でいえば、慢性疼痛で腰に手を触れ硬くない実感をすることで痛みが消えた例が似た作用機序です。

RELATED POST